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名阪神の中核市をノルディックウォークしながら、大阪のフェスに参加するGW旅 " 旅先で『日常』を走る ~spin-off⑯~ "


2023年5月2日、時刻は午前6時。
東京駅から夜行バスに乗った私は、名古屋に到着した。

いつもならバスが到着した笹島ライブの停留所から名駅までの道すがら、名鉄レジャックビル1階にあるマクドナルドでブレックファーストを摂った後、6階にあるカプセルホテル『ウェルビー名駅』で汗を流すのが名古屋旅のルーティンであった。
ところが、リニア中央新幹線の開通に伴う名古屋駅周辺の再開発事業により、このビルが取り壊しになってしまったのだ。旅の楽しみがひとつ潰えてしまい残念だが、しかたがない。もうひとつのルーティンをこなすために、移動しよう。

名鉄百貨店の前に鎮座する『ナナちゃん人形』の正面にポジションを取り、そのいで立ちをカメラに収めるのだ。名古屋市内に住んでいた2005年からはじめて、かれこれ20枚近くのすべて違う装いのナナちゃんの姿を集めてきた

なんと、ナナちゃんはこの数日前に50歳の誕生日を迎えたとのことで、「ナナちゃんバースデーウィーク」が開催中だった。もちろん、その衣装も50歳を祝したスペシャルバージョンだ。バースデーケーキまであしらわれている。めでたい! ついでに告白すると、私もこの2週間ほど前に50歳の誕生日を迎えたばかりだ。重ねてめでたい!! 私とナナちゃんがおない年で、誕生月まで同じだったとは。
しばし感慨に耽ったところで、次は空腹を満たすミッションに移ろう。私は名駅まで移動し、JRの改札をくぐった。

では、今から名駅6番線ホームの『住よし』で、名古屋名物「きしめん」のブレックファーストを摂ることにする。

これまた名古屋名物の海老天をトッピングして、温泉卵も入ってなんと500円也! 

住よしは名駅構内で多くのホームに店舗を構えているが、この「ワンコインきしめん」は在来線ホーム限定メニューとのこと。いつもは新幹線ホームの店舗を利用することが多い私には貴重な体験となった。ラッキー!

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腹ごなしができたところで気づいたが、そういえばまだ今回の旅の目的を説明していなかったようだ。いまから説明しよう。

ここ5年ほどの私はひとり旅とランニングを趣味にしていて、これまでに47都道府県すべてに訪れて走るという自らに課したミッションを制覇した。しかし、意外にも中核市になっている地方都市にはあまり足を運んでいないことに、つい最近気づいたのだ。

 中核市は、拠点性が高い都市に対し政令指定都市に準じた事務配分を行なうべきという考えによって生まれた制度である。人口20万人以上を有することを要件とし、保健所が処理する事務や環境保全行政に関する事務などが都道府県から委譲される。現在、県庁所在地を中心に全国で62か所の自治体が中核市となっている。

そして、私が未踏破の中核市のほとんどが阪神間に集中している。

ちょうど、このタイミングで私が敬愛するFishmansが参加するフェス『 OTODAMA’23 〜音泉魂〜 』が開催されることになった。今回の旅では、大阪遠征の道すがらスタンプラリーのように中核市に立ち寄っていくスタイルを取ることにした。

街歩きのお供はもちろんノルディックポールだ。旅の荷物はリュックにまとめて、四足歩行のノルディックウォークで中核市を巡っていく。

" ノルディックウォーキングは、2本のポール(ストック)を使って歩行運動を補助し、運動効果をより増強するフィットネスエクササイズの一種である。もとは、クロスカントリーの選手が、夏季の体力維持・強化トレーニングとして、ストックと靴で積雪のない山野を歩き回ったのが始まりである。"

Wikipedia より

ということで、2泊3日の途中下車の旅、スタート!

5/2 名古屋 → 一宮 → 大津 → 京都 → 高槻 → 枚方 → 寝屋川 → 奈良 → 大阪


きしめんを食べ終えたところで、そのまま名古屋駅6番線ホームから東海道本線に飛び乗り、最初の目的地へ向かう。

① 愛知県一宮市
まずは、名鉄百貨店の撤退が先日報じられた一宮市へ。

" ウールの世界三大産地「尾州」の中心地で、「繊維の街」として著名。紡績・繊維産業の一大中心地として、繊維工場で女性従業員を多数雇用していたことから「女工の街」と呼ばれており、働く女性従業員は「織姫」の愛称で呼ばれている。現在も、元従業員が居住している関係で女性人口がやや多い。"

Wikipedia より

繊維産業で栄え、近年では名古屋市のベッドタウンとして37万人の人口を抱える、愛知県第四の都市となっている。また、愛知県ではおなじみの喫茶店モーニングの風習は、ここ一宮市が発祥の地とのことだ。
先ほどきしめんを食べたばかりだが、ここは喫茶店に入るしかない。今日食べられなければ、もう一生本場のモーニングにありつくことが叶わないかもしれないのだ。

私は心を決めて駅近の『喫茶浪漫さくら草』に入り、とりあえずブレンドコーヒーを注文した。

平日の8時前ということもあってか、店内には先客が一名のみ。新聞を読みながら、のんびりとくつろいでいる。

注文から5分もかからずに、モーニングセット一式が運ばれてきた。

サンドイッチにゆで玉子、ポテトサラダ付きで450円也。コメダ珈琲で提供されるような豆菓子はなかった。それでもお得感は満載のラインナップだ。空腹ではないので、この量で大満足。

では、先の予定がぎちぎちに詰まっているので、先を急ごう。

② 滋賀県大津市
尾張一宮駅から2時間電車に揺られ、滋賀県の県庁所在地大津市へ到着した頃には時刻は10:30をまわっていた。大津駅の改札を出て、周囲を一望する。駅周辺の規模感は、中央線沿線で例えると東小金井駅クラスだろうか。なかなかこじんまりとしている。

" 滋賀県の県庁所在地かつ最大の人口を抱える都市であるが、政令指定都市である京都市に隣接し京都駅までJRで10分ほどの距離にあることから、同市のベッドタウンとしても発展してきた。京都府・大阪府に通勤通学するいわゆる「滋賀府民」も多い。大企業の滋賀県における拠点は隣接する草津市に置かれることも多い。"

Wikipedia より

人口34万人が暮らす県庁所在地なのに、百貨店が撤退してしまったことも含めて一宮市と同じような扱いだ。ちなみに草津市には近鉄百貨店が現存する。そのうち県庁まで移動してしまうのではないか?
いらぬ心配は無用だ。先を急ごう。

もちろん琵琶湖に向かって歩みを進めていく。沿道には椰子の木が植えられ、想像以上に南国リゾート感を醸し出している。

平日午前中の琵琶湖はのどかな雰囲気を醸し出している。散歩する人の姿も目立つが、なにより釣り人でにぎわっている。

おだやかな湖面に日光が照りつけて、スパンコールを散りばめたようにキラキラと点滅を繰り返している。しばし歩みを止めて見とれてしまったが、まだ先は長い。次の目的地に向かおう。

そのまま琵琶湖沿いを進み、京阪電車のびわこ浜大津駅で電車に乗り込んだ。

◆ 京都府京都市(政令指定都市)
三条京阪駅で下車し、ここからはJR京都駅まで徒歩にて移動する。

京都へは仕事で一時期頻繁に通い詰めていたこともあり、足を踏み入れると行きつけの店の暖簾をくぐったかのような安心感を抱く。鴨川沿いでくつろぐ人たちの姿も三条や四条の繁華街を歩く人たちも、インバウンドの観光客が戻ってきたくらいでいつもと変わらない。ただ、観光客は中国系が減りインド系と思しき姿が増えているように感じた。

歩きながら、半月後にランニング部のオフ会で使う予定の宿の場所を確認して回る。

参加人数が多すぎて一軒の宿では収容しきれず、町屋をリノベーションした宿を2軒貸切ることにしたのだ。

幸いにも、2軒の距離は徒歩で100歩もかからない至近距離であった。

一安心。

さらば京都。また半月後。ということで、次の目的地へと移動しよう。

③ 大阪府高槻市
続いては、新快速に乗り一駅先に進んで高槻駅へ。

" 京都市と大阪市との中間に位置し 、二大都市のベッドタウンとして発展している。市章も、大阪市と京都市の市章を融合させたデザインとなっている。平地では工業地帯が広がり、山間部では農業が盛んである。中心部の都会的な街並みと、原や樫田の農村風景を併せ持つ町として「とかいなか」を自称している。"

Wikipedia より

人口33万人のベッドタウン。いままで通ってきた中核市と同規模の市ではあるが、なんと駅前には松坂屋があるではないか。

大都会高槻! 私は感動のあまり店内に入り、地下の食品売り場で私の大好物『551蓬莱』の豚まんを購入してしまった。これを今日のランチとしよう。

高島屋を出た後、Googleマップとにらめっこしながらアーケードの商店街を抜けて進んでいく。

目的地はカーシェアのステーションだ。
じつはここから枚方市→寝屋川市とカーシェアを使って巡る段取りにしていたのだ。なぜならこのあたりは大阪のベッドタウンなので、ほぼすべての交通機関が大阪市に向かって放射線状に伸びており、市域をまたいだ移動の効率が悪いのだ。

ステーションに到着し、スマホアプリを使って車を開錠する。今日借りる車はTOYOTAのライズだ。想像していたより車体がデカい。ひとりしか乗らないので、もっとコンパクトサイズでもよかったのだが。

社内で豚まんのランチを摂り、ドライブ・シェア・カーをスタートさせる。

④ 大阪府枚方市
駐車場を出て、商店街の細っそい道を慎重に進んでいく。ちなみに、私の運転キャリアのほとんどは長野の山道とバイパスである。道路の至るところに歩行者がウジャウジャしている状況には慣れていないのだ。路上教習でもこんな道通らなかったし。

戸惑いながら、10分ほどかけて国道に出た。道が広い。快適だ。しばらく道なりに進み、片側3車線の交差点を右折して進んでいく。急に道幅が狭くなる。どういうこと? 自転車を引っ掛けないように注意を払い、進んでいく。

橋を渡った先を右に折れ、京阪電車の踏切を渡ると、右手にかの有名なテーマパーク『ひらかたパーク』が現れた。なにしろ、枚方市で思いつく場所がここしかなかったのだ。

" 京都府・奈良県との府県境に位置する。北河内地域及び京阪間の中核的なベッドタウンとして発展した。ひらかたパーク(通称:ひらパー)は現在まで続く、日本最古の遊園地である。平成の大合併の際に寝屋川市、交野市との合併が協議され、人口約70万人規模の京阪間の政令指定都市を模索した時期があった(「北河内市構想」)が、住民側の要望は無かった。"

Wikipedia より

人口39万人となかなかの規模間があるが、絵にかいたようなベッドタウンだ。ひらパーも住宅街のど真ん中に作られているほどだ。

運転中で写真を撮ることも困難だが、家族連れでにぎわう入口周辺をしばらく眺め、先に進んだ。次の目的地に進もう。

てきとうな駐車場に車を止め、カーナビにセットしてあった目的地を変更した。

⑤ 大阪府寝屋川市

" 市名および河川名の「寝屋」は当市東部の地名であり、古代生駒山麓の、牧人の寝屋が起こりと言われる。 現代では住宅・商業施設・町工場などが立ち並ぶ、大阪市郊外のベッドタウンである。"

Wikipedia より

人口22万人のベッドタウン。Wikiの記述も他に比べスッカスカ気味であり、どこを見どころに設定すればよいのか図りかねていた。というより、今まさに寝屋川市に向かっているこの時点でも、とりあえず香里園駅をナビに設定してみたものの、着地点は見えていない。

京阪電車の線路沿いを進んでいく。枚方市よりはやや標高が高くなった印象だ。駅をいくつか過ぎ、香里園駅に到達した。この先になにか意外な発見があるだろうか?自らの内心に問うてみる。否。じつはそんな賭けをしている場合ではない。この車は90分しか借りていないのだった。残り時間は40分ほど。そろそろ引き返さないと間に合わない。
引き返す口実が見つかり、私はホッと胸をなでおろした。

駅の先でUターンし、来た道のりをそのまま戻って、無事に制限時間内にステーションにたどり着いた。
運転しながらなので、まともな写真を撮れなかったことが心残りだ……

⑥ 奈良県奈良市 *以前に来訪済み
気を取り直して、次の目的地へ。
高槻駅から京都駅に戻り、そこから近鉄に乗り越えて近鉄奈良駅に移動した。

さっそく鹿の出迎えを受けるが、すでに時刻は夕方で鹿と戯れる間もなく目的地へ急ぐ。天気がよいこともあってか、奈良公園周辺は家族連れやカップルを中心に賑わっている。

歴史的な街並みを有する奈良町に足を伸ばし、築110年ほどの建物が目的地だ。

ここは、無人書店『ふうせんかずら』。
日本初の無人&キャッシュレス書店であり、棚貸しも行っている。いわゆるサブリース方式だ。じつは私もここで去年の3月から棚をひとつ借りているのだ。

施錠されている入口ドアのテンキーに暗証番号を打ち込んで、店内に入る。さっそくリュックの最下部に詰め込んでおいた本を取り出し、棚に補充していく。

よし。それなりに恰好がついた陳列になった。

一仕事終えたところで、今日の宿泊地へ向かうことにしよう。

◆ 大阪府大阪市(政令指定都市)
JR奈良駅まで歩き、大和路快速に乗って天王寺駅に到着したのは18時過ぎ。

ゴールデンウィークのイベントでにぎわう天王寺公園を抜けて、新世界へ向かった。

去年の正月以来に訪れた新世界は、インバウンドが回復したせいもあってか射的場とか弓道場が増えていて、昭和のテーマパークとしての生き残りを意識している感が強い。

それでも映画館や演舞場などコアなスポットは健在で、安心した。
ジャンジャン横丁にある『八重勝』で串かつを食べようと思ったのだが長蛇の列にうろたえ踵を返し、近くにある開店して間もない串かつ屋でディナーを摂る。

腹も満たされたところで、西成の宿にチェックインするとしよう。

部屋はなかなかの狭さでトイレも共同だが、サウナ付きの大浴場があるので許すことにした。

5/3 大阪 → 堺 → 泉大津(OTODAMA'23~音泉魂~) → 大阪


旅行2日目の朝。宿には二泊するので荷物は置いたまま、10時過ぎに始動した。

◆ 大阪府堺市(政令指定都市)*今回が初来訪
天王寺駅から阪和線で三国ヶ丘駅に移動した。駅前はいかにも閑静な住宅街といった趣だ。じつは、政令指定都市である堺市に、私は生まれて初めて足を踏み入れたのだ。
これから向かおうとしている場所は、日本最大の古墳である仁徳天皇陵。内部への立ち入りは禁止されているが、周囲をぐるりと一周してその大きさを体感したい。ノルディックポールをセットして、いざ出陣。

駅前を線路沿いに進み、右手にある駐車場の隅に設えてある細い階段を上ると、国道に出た。そのまま道なりに坂道になっている国道を下っていく。すると、左手に仁徳天皇陵の敷地が現れた。

前方後円墳は円が後ろだから角ばってる方が正面よ、という義務教育で習った知識を思い出させる標識に目を奪われる。どうやら、このまま進んでいった方が正面に早く到達できるようだ。

国道から遊歩道にルートを移す。ランナーの姿もちらほら目につく。左手には緑あふれる天皇陵、右手には閑静な住宅街が連なっている。晴天で暖かな気候だがそよ風も吹いており、快適に進む。

橋を渡り小川を抜けると、遊歩道から緑地公園に風景が変化した。人の姿も先ほどより増えている。地域の方々の憩いの場となっているようだ。左右とも緑にあふれており、天然の日傘効果を発揮している。快適だ。

公園を突き抜けると、道幅がやけに広く交通量が少ない道が視界を横切ってくる。左に舵をきり、前方後円墳の正面に向かって進む。

あった!

とはいえ、前方後円墳の本体は見えずじまいだった。残念だが仕方ない。ここは想像力を膨らませて、緑の木々の先に屹立しているお墓に思いを馳せながら手を合わせた。

さあ、ここから次の目的地というかこの旅の目的地に向かおう。

国道を2km以上進み、南海堺駅に到着した。

◆ 大阪府泉大津市 *この旅の目的地。初来訪
堺駅から泉大津駅に移動し、5分ほど歩いた先にシャトルバス乗り場があった。ここから『 OTODAMA’23 〜音泉魂〜 』の会場である泉大津フェニックスに向かうのだ。

14:00ちょうどに発車したシャトルバスは、10分ほどで会場近くの駐車場に到着した。

出演ミュージシャンたちの幟がはためいている。私のお目当てはもちろん、今日のヘッドライナーであるFISHMANSだ。

入場を済ませた後、ひとまずタコライスとビールを補給しつつ、メインステージで演奏中のハナレグミを聴く。

その後、スカパラ→奥田民生→FISHMANS の順でフェスは進む。最高の流れだ。

かれこれ34年ほど愛聴しているFISHMANSのパフォーマンスをリアルタイムで享受できる喜びは他には替えられない特権である。

最高の一日であった。

5/4 大阪 → 八尾 → 東大阪 → 尼崎 → 西宮 → 明石 → 淡路 → 神戸


旅行最終日の今日。
この旅の目的を果たし、私は心地よい達成感を噛みしめている。しかし、もう一つのミッションはまだ達成されていない。

大量の人で賑わっている新世界から天王寺に出て、大和路快速で目的地に向かうことにした。

その前に、開店前から行列ができている数々の串かつ屋を尻目にブレックファーストを摂る店に向かった。

『お食事処 あずま』でブレックファーストを摂る。

本当は謎メニューである『シチューうどん』をオーダーしたかったのだが、注文に慣れず普通のシチューを頼んでしまった。残念……

肝心のシチューは、余計な味付けがされていおらずに出汁の淡麗な旨みが味わえる最高のメニューだった。

⑦ 大阪府八尾市
天王寺駅から快速に乗って6分進み、八尾市の久宝寺駅に到着した。

" 戦国時代から江戸時代初期にかけて、この一帯は、たびたび合戦が繰り広げられる場所であった。初期に久宝寺や萱振で寺院を中心に寺内町・環濠集落が形成され、時の権力に対抗する勢力の拠点となった。江戸時代初期には浄土真宗の宗派対立を発端とし、八尾寺内町が創設され、現在の八尾市発展の基となった。"

Wikipedia より

人口は26万人。なかなか複雑な歴史的背景があるようだが、近年では大阪市のベッドタウンとして、また工業地帯として発展している。駅前の駐輪場は巨大で、自転車の往来が激しい。

住宅と工場・倉庫などが混在する街の中を10分ほど歩き、久宝寺寺内町に着いた。かつては町全体が堀と土塁に囲まれていた一画を巡っていく。

まずは堀と土塁が保全されている遊歩道を抜けていく。

予備知識がなければただの小川沿いの道だと思ってやり過ごしてしまいそうな、ごくありふれた道だ。お母さんと幼児が木の傍にしゃがみこんで、なにか話している。

遊歩道を抜けて道なりに進んでいくと、立派な門構えのお寺が正面に現れた。久宝寺だ。

このあたりになると路面も独特の舗装がなされ、歴史ある寺町の雰囲気が一気に立ち上ってくる。境内に足を踏み入れる時間的な余裕はなく、参拝は断念して先に進んでいく。

周辺には狭い路地が入り組んでおり、一軒家が建ち並んでいる。そういえば駅前からここに至る間、中層以上の高さの建物をほとんど見かけなかった。

民家のすぐ前に水路が通っている光景も垣間見えた。

なんだか天然の巨大迷路を巡っている感覚に陥り、冒険心をくすぐられた。

そのまま近鉄の久宝寺口駅まで進み、次の目的地へ移動する。

布施駅で乗り換えをする移動中、ホームに無人コンビニを発見した。


⑧ 大阪府東大阪市
次の目的地は、東大阪市だ。
東花園駅を降りると、先日終了した朝ドラの幟が林立していた。!

" 大阪市および堺市の両政令指定都市に次いで大阪府第3位の人口を擁する。大阪市の衛星都市・ベッドタウンである一方、大阪都市圏の中心都市に属する。ラグビーの聖地である東大阪市花園ラグビー場を擁する「ラグビーのまち」として、また技術力の高い中小企業が多数立地するものづくりのまちとして全国に知られる。"

Wikipedia より 

人口50万人。もの作りの町だけあって町工場の存在が目立っている。

Googleマップの指示通りに進んでいく。やたらと右に左に振り回された挙句、裏口から入ることになった。ここは高校ラグビーの聖地、『花園ラグビー場』。

今日は試合やイベントなどは開かれていないようで、場内にも入れない。しかし周囲は運動公園として整備されており、地域住民で賑わっていた。駐輪場も、ほぼ満車状態だ。

私も高校時代にラグビーを少しだけかじったことがあるので、ここにいるだけで心がゾワゾワと波打つ感覚を覚える。

ちょっと持ち時間がタイトになってきたので、駅へ戻ることにする。正面の出入り口を出てまっすぐ目抜き通りを進んでいくと、駅のすぐ近くにでた。一体、さっきの道案内はなんだったのだ?

東花園駅に戻り、近鉄から阪神に乗り入れる電車で次の目的地に移動していく。

⑨ 兵庫県尼崎市
電車に揺られること小一時間。いよいよ兵庫県に上陸し、阪神尼崎駅に到着した。

" 兵庫県の南東端に位置する市。兵庫県の自治体のうち人口密度が最も高い。大阪府の自治体を除いて大阪市に隣接する唯一の自治体で、市外局番も大阪市と同じ「06」である。尼崎藩の城下町を中心に、阪神工業地帯の工業都市へと発展した。ただし、大阪市への通勤率は20.9%にとどまり、昼間人口率は96.3%と阪神間の自治体の中では最も高くなっていて、大阪のベッドタウンと工業都市の両面の性格をあわせ持つ。"

Wikipedia より

阪神のほかにJRの尼崎駅もあるのだが、地方都市あるあるで距離がけっこう離れている。昔からの繁華街はこちらの方であるとのことだ。なにしろ駅近くにお城があるのだから。

ということで、天守閣が最近再建された尼崎城に近づいてみる。

「なんかショボいな…」 遠目から眺めた正直な印象である。最近取り壊された尾道城くらいの規模感ではないのか。しかし、近づいてみるとその印象は一変した。

腰掛けるのにちょうど良いサイズの階段、そして広場一面に天然芝が敷き詰められている。家族連れでにぎわい、子どもの声が響き渡っている。寝そべっているおっちゃんやサラリーマンの姿も散見される。
天守閣の存在に必然性があるのかはよくわからないが、街中のオアシスとして機能している素晴らしい空間だった。

では、阪神電車で次の目的地に。

⑩ 兵庫県西宮市
続いては、西宮市の阪神甲子園駅に到着。

" 阪神間モダニズム文化圏の中央に位置し、隣接する芦屋市とともに、市内には阪急神戸線などの山手側を中心に高級住宅街とされる街区が多い。阪神・淡路大震災では大きな被害が出たが、中南部の阪急の西宮北口駅周辺など市内各地で復興事業・再開発事業が進み、震災前後で大きく景観が変わった。「宮水(西宮の水)」と呼ばれる酒造りに適した硬水が市内で湧水する。"

Wikipedia より

人口48万人。神戸・姫路に次ぐ兵庫県第三の都市だ。とはいえ、関東民の私にとって西宮といえばここ甲子園球場の印象しかない。

球場では、ちょうどタイガースの試合が行われていた。

応援の声や歌舞音曲がうっすら聴こえてくる。

ひとまず球場の周囲をぐるりと回ってみる。

甲子園球場100周年を祝う広告物が数多く掲示されている。ドカベンやキャプテン・タッチなど、80年代の漫画やアニメを中心にしたプロモーションが掛けられている。
そういえば、最近は野球を題材とした作品が少ないね。娯楽の多様化による野球人気の低迷なのか? それでも球場の観客動員は昭和の昔に比べるとかなり増えているとのこと。Jリーグなどの影響を受けて地域密着が進んでいる結果なのだろう。

ところで、阪神間の地域は私が暮らしている京浜間と雰囲気が近いので、旅に来ている感じが薄れてくる。工業地帯独特の乾いた感じを言葉にするのは難しいが。

旅の残り時間も、いよいよわずかになってきた。次へ向かおう。

⑪ 兵庫県明石市
甲子園駅から、阪神電車・神戸高速鉄道・山陽電車を一気に乗り通す特急に乗り、山陽明石駅に到着した。

" 古代から阪神と播磨を結ぶ陸上交通、本州から淡路島を経て四国に通じる海上交通の重要な拠点になっており、明石海峡大橋開通前は明石フェリーが玄関口であった。源氏物語の舞台地である。近年は神戸市や大阪市、阪神間のベッドタウンとして住宅が造成された。日本標準時を決める東経135度線が通る市として知られる。"

Wikipedia より

人口は30万人。源氏物語の舞台とは知らなんだが、ここは言わずと知れた日本標準時の子午線が走っている地である。さっそく東経135度に急ごう。

駅前にある明石城址を一瞥して、右の道を進んでいく。

1㎞ほど進んだところで左に舵を切り、丘を上っていく。

丘の頂にある神社に向かう階段脇に「トンボの標識」というモニュメントを見つけた。

地味だ。ひたすらに地味だ。周囲に人影もない。明石市唯一(偏見)といってもよい観光資源なのに……

気を取り直して先に進み、坂を下っていくと『明石市立天文科学館』が現れた。

少しは観光資源っぽい扱いになってきたぞ、よし。

そのまま坂を下り、道なりに海に向かって進んでいと、今度は「大日本中央標準時子午線通過地識標」に至った。

これまた地味な標柱である。イルミネーションでピカピカにしろとはいわないが、「時」に関する展示とか古今東西の時計の博物館とかを期待していたので肩透かし間が否めない。

ところで、今日は移動に夢中になりすぎてランチを摂っていないことに今気づいた。時刻は17時前。そろそろなにかお腹に入れたいところだ。
明石焼きはどうも美味そうに見えないのでパスするとして、

フェリーで淡路島に渡ることにした。

乗船後、3分で淡路島に到着した。早い。運賃は片道600円也。

◆ 兵庫県淡路市 *初来訪
岩屋港ターミナルビルの2階に上がり、食堂でディナーを摂ることにした。店内は満席で並んで待つことになったが、他の待ち客は家族連れが多かったのでカウンター席が空くとすぐに席に通された。

生しらす入りの海鮮丼と瓶ビールを注文する。

5分ほどで料理は到着した。

瀬戸内海にはあまり漁業のイメージは持っていなかったが、丼に載っている魚が新鮮で驚いた。

無事に食事を終え、滞在一時間強で明石に戻る。レンタサイクルなども充実していたし、島内観光にもかなり力が入っているようだ。次回はゆっくりと来よう。そう決意しながら、私は帰りの船に乗り込んだ。

行きの船はガラガラだったが、帰りは日帰り観光客の帰宅ラッシュとぶつかって大混雑していた。海上から眺める瀬戸内海の夕陽が一番のお目当てだっだのだが、曇天で拝めず残念……

◆ 兵庫県神戸市(政令指定都市)

JR明石駅から新快速に乗り、15分ほどで三宮駅に到着した。ここから22時発の夜行バスに乗り、東京に戻ることにする。

2泊3日に渡る中核市巡りも、これで無事終了だ。私が未踏破の中核市は、残すところあと2か所だけになった。残るは北海道旭川市と長崎県佐世保市だ。なかなか行きにくい場所ではあるが、年内にはどちらも制覇する予定だ。

しかし、安心するにはまだ早かった。

今後中核市移行を検討している都市が12か所もあり、そのうち4か所が未踏破の地であった。中核市制覇への道は果てしなく続く……


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