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サーカスナイト

夢から目が覚めると、そこはサーカスだった。

サーカスの観客席

周りの人たちは皆片手にカラフルな綿飴、
片手にポップコーンの入った箱を握りしめている

私は大きな歓声とともにサーカスの中央リングへと目をやる

空中ブランコで大きな技が決まったようだ。
その後も大技を繰り出す姿を見て
「空を舞うバレリーナのよう」、と小さくつぶやいた

しばらくするとパレードが始まった

おどけたピエロが私の方へ近づいてきて、
大きなバルーンをくれた。

キラキラのラメが散りばめられたバルーン。
おまけに手品もしてくれて、花束までもらった。

ピエロさん私に微笑んだ後、スッと姿を消した。

それでもパレードは続いていく。
これは夢なんだろうか
皆煌びやかな格好をして
素敵なお化粧をして
上手に歌を歌いながら

丸いサーカスのテントの中を行進してゆく


そしてやがて
夜は更けて
今日のパレードもおしまい

あの興奮が詰まった時間が終わると
人々は鼻息荒くサーカスのことを語りながら少しずつ散らばってゆく

私はどうしたものかと困りながらまだ席を立てないでいた

だって帰る場所がないんだもの
あるのはピエロさんからもらったバルーンと花束だけ

ふとバルーンを見上げると紐にリボンがかかっていた
バルーンにリボン?
不思議に思いながら解くと、

バルーンはグングンと空へ向かって浮かんでゆく
私は何が何だかわからずに必死に紐にしがみつく

一体どうなってるの?!

でも不思議と腕は疲れない
体が軽くなってる!

どこまでもどこまでも飛んでゆく

サーカスのテントを通り抜け

綿飴のような雲を通り抜け

お星さまの国を通り抜けてゆく

あ!流れ星!
と思ったらそれはお空にいるピエロさんがお星さまを回していた

まるで楽しい芸をしているように

そうして今度は深い霧の中を飛んでゆく

霧が晴れると、目の前には身覚えのある小さなおうちが。

あ!私のお家!
赤くて煙突のある小さなお家

2階のベッドにバルーンが連れていってくれる

私は一体どうやってあんなに遠い世界に行ったんだろう
それも寝ている間に。

バルーンは私をベッドへ連れていくと、
さっきまでの力づよさが嘘のように萎んでしまった

ピエロさんからもらった花束も枯れてしまった。

本当に違う世界に行ってたのね。
サーカスの賑やかさと混沌としたあの雰囲気はこれからもずっと覚えているだろう

思い出の品はないけれど、心にあの大冒険が刻まれている

あなたにも夢のような夢を見る日が来るかもしれない
その時は不思議な世界に身を任せること
ピエロさんからバルーンをもらうこと

私は静かにベッドに潜り込み
すやすやとまた夢の中へと・・



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