見出し画像

SF小説-民営自衛隊㈱ #10:新たな出発(たびだち)

Chapter10:新たな出発(たびだち)


 20XZ年8月15日、民営自衛隊㈱発足。
 8月15日は数年前から「平和祈念日」として祝日となっている。大泉総理は、あえてこの日を発足日と定め、東京ドームでのJDA東日本株式会社創立セレモニーに来賓として参加した。

 収容人数5万人の東京ドームは、JDA東の社員代表(といっても1万人以上)、都道県知事、市町村長、国会議員、地方公共団体議員など政界関係者、民間産業界からも大手取引先企業各社、海外からは米国副大統領、米軍太平洋地域総司令官、国連安保理メンバー国特使などが来場し、ごったがえしている。政界は青・産業界は緑・海外は黄・マスコミは白・社員は赤、といった具合に胸にリボンをつけて整理しているが、全員が入場し終わるまでに5時間はかかった。
 正午より、「平和祈念日」行事として総理挨拶、黙祷などを行い、午後1時から引き続きJDA東日本創立セレモニーという段取りである。夕方から、VIPクラス関係者は旧自衛隊市谷駐屯地を再開発した市ヶ谷パークス内にあるプリンスパークホテルで祝賀パーティーに出席。尚(当然のことながら)、すべての周辺警備はJDA東日本が受け持っている。

 一方、JDA西日本株式会社の創立式典は同日、名古屋本社(小牧)特設会場で行われた。小牧空港滑走路脇の大型輸送機格納庫が、その会場である。冷房がないので暑苦しい。来賓は愛知県知事など自治体関係者(大阪府知事は所要のため欠席)と一部取引先企業に限られていた。
 JDA東は初代社長に、元防衛庁長官であり総理経験者の大曽根氏が就任したが、JDA西の社長はカンバン方式とカイゼンで世界一となった、トヨトミ自動車の前副社長である。同じJDAといっても、最初から企業風土に差が出ている。式典参加者には「紅白ういろう(税込300円)」が配られた。

 さて、ここで発足時のJDA各社の概要を見ておこう。
 自民調(『自衛隊の民営化に関する調査委員会』)での基本案は、JDA東西2社及び海外業務にあたるJDAW=JDAワールドワイドの3社体制を想定していたが、最終的には上部組織『JDAホールディングス』を置くことにした。民営化移行作業を行う中で、数多くの関連会社を立ち上げた結果、その取りまとめも含めて、やはり統括会社が必要となったのだ。(下図参照)

JDAグループのロゴと組織図


 ◎JDAホールディングス(統括会社)
  本社:東京市ヶ谷パークスタワー(市谷駐屯地再開発ビル)
  支社:東京(横田・JDA東日本内)、名古屋(小牧・JDA西日本内)
  主な業務:JDAすべてのグループ企業の統括事務及び関連会社統括
  社員数:約1,000人

 ◎JDA東日本(北海道・東北・関東・沖縄管轄)
  本社:東京(横田)
  支社:那覇
  営業所:千歳・大湊・仙台・横須賀
  社員数:約75,000人

 ◎JDA西日本(中部・関西・中四国・九州管轄)
  本社:名古屋(小牧)
  支社:大阪(伊丹・梅田)
  営業所:小松・舞鶴・呉・福岡・佐世保
  社員数:約60,000人

 ◎JDAワールドワイド(海外業務)
  本社:東京市ヶ谷パークスタワー
  支社:ワシントンDC(米国)
  派遣業務センター:横田・伊丹・横須賀・那覇
  社員数:約15,000人(ほぼ全員がJDA東西からの出向)
  
 以上がグループ中核社。他にJDAホールディングス傘下の関連会社(完全子会社)がある。主なものを上げる。

 ◎JDAロジスティックス
    施設・装備管理及び輸送・補給業務全般
 ◎JDAメンテナンスサービス
    特務装備・車両・船舶・航空機等の整備
 ◎JDAフーズ&サプライ
    食料品及び消耗品類(弾薬含む)の一括購入
 ◎JDAメディカルセンター
    社員医療業務
 ◎JDAインシュアランスサポート
    生保・損保取り扱い代理業務
 ◎JDAエステート
    不動産管理、とくに市ヶ谷再開発地域(市ヶ谷パークス)の運営
 ◎JDAエンタテイメント
    ロケーションサービス、イベントなど広報PR業務全般
 ◎JDAカレッジ
    元・防衛大学(法人化で名称変更)

 尚、関連企業社員数は全部で約10,000人であり、JDAグループ全体で約16万人の規模となる。2004年当時の自衛隊員数は、海上自衛隊 44,390人 陸上自衛隊 145,960人 航空自衛隊 45,459人 合計 235,809人なので、約30%の人員削減となった。
 今後はとくに陸上業務での装備ハイテク化を推進し、さらに人員合理化を進めることになるだろう。

>>第11話(次回最終話です)へつづく
<<第9話に戻る
<<第1話からお読みになりたい方はこちらへ

※この記事は2005年5月21日にブログ『tanpopost』に掲載したものです。
内容はフィクション(SF)であり、実在の団体・人物等とはまったく関係ありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?