見出し画像

招待状デザインの「か・かた・かたち」

招待状。一見、単なる情報伝達手段に過ぎないかもしれません。しかし、その紙一枚、またはデジタルフォーマットには、数々の意味や期待、文化や感情が込められています。招待状は、ある人々を特定の場に招き入れるための「扉」であり、その扉の設計には多くの工夫が求められます。

そこでこの記事では、招待状作成において考慮すべき三つの次元「か・かた・かたち」に焦点を当てます。このフレームワークは、建築家・菊竹清訓が提唱した建築の概念ですが、招待状の設計にも応用可能な概念になります。

「か」は、招待状の「本質的な段階」を指します。招待状が一体何のために存在するのか、どういった心情やメッセージを伝えたいのかという、根源的な考え方がここに含まれます。
「かた」は、「実体論的段階」とも言えるレイヤーで、具体的な機能や情報配置、言い換えれば招待状の「構造」に関する問題を扱います。
最後に「かたち」は、「現象的段階」を指し、これが最も外部に向けて明らかな部分です。つまり、デザインやレイアウト、紙質など、受け手の感覚に直接訴えかける要素がここで考慮されます。

招待状をこれらの三つの視点で捉えることで、ただ情報を伝えるだけの手段から一歩進んで、受け手に感動や興味を与える、印象に残る招待状を作成することが可能になります。この記事を通して、「か・かた・かたち」の各要素が如何に重要で、それぞれがどのように招待状の質を高めるのかを詳細に解説します。

1:「か」 本質的な段階

1.1 思考や原理

招待状の「か」、すなわち本質的な段階において最も重要なのは、その招待状が何のために存在するのか、という根本的な問いです。結婚式、誕生日パーティー、ビジネスイベントと、招待状には多くの種類があり、その一枚一枚が持つ目的は異なります。

例えば、結婚式の招待状では、新郎新婦の結びつきやその喜びを共有するためのメッセージが不可欠です。一方で、ビジネスイベントの招待状では、専門的な内容と参加者同士のネットワーキングを強調することが多いでしょう。

このように、招待状が何を目的としているのかを最初に明確にすることで、その後の設計過程がスムーズになります。

1.2 生活や使用者の文化

招待状の本質的な段階で考慮すべきもう一つの側面は、その招待状が送られる文化的背景です。日本の結婚式では、古来より続く格式やマナーが重視されることが多いですが、西洋のウェディングではカジュアルな招待状も一般的です。

ケーススタディとして、日本とフランスの結婚式招待状を比較すると、日本は場所や時間に至るまで詳細に記載される傾向があり、フランスではよりカジュアルな言葉遣いとデザインが用いられます。このように文化や使用者の生活背景によって、招待状の「か」、すなわちその本質が大きく影響を受けるのです。


2:「かた」 実体論的段階

2.1 理解と法則性

招待状の「かた」、すなわち実体論的な段階では、招待状の構造と機能が中心になります。ここで大切なのは、招待状が持つ「情報の階層」です。日時、場所、服装コードなど、どの情報を最も目立たせるべきか、どの情報をサブテキストとするべきかなど、視覚的にも理解しやすい形で整理する必要があります。

2.2 技術的側面

さらに、招待状の製造過程や使用される材料もこの段階で考慮されます。例えば、紙の質感、インクの種類、デジタル招待状であればウェブページのUI/UX等が該当します。これらの選択は、受け手に与える印象や招待状の耐久性、そして環境への影響まで考慮するべき多面的な要素です。

2.3 機能の問題

最後に、招待状が果たすべき具体的な「機能」について考慮する点もこの「かた」の範疇に含まれます。地図や交通手段の記載など、参加者がイベントにスムーズに参加できるようにする機能は、非常に重要です。

3:「かたち」 現象的段階

3.1 感覚と形態

「かたち」、すなわち現象的な段階では、招待状が受け手の感覚に訴えかける部分がクローズアップされます。これは主にデザイン要素――色、形、テクスチャ――といった、目で見たり手で触れたりする印象に関わる要素です。

たとえば、高級感を出したい場合はゴールドの箔押しや厚手の紙を使用することで、その「かたち」が感覚に訴えかけます。逆に、カジュアルでフレンドリーな印象を与えたい場合は、明るい色合いとシンプルなデザインが有効でしょう。

3.2 建築空間の問題

特に結婚式などの場合、招待状はその後に繰り広げられるイベント空間と一体となる存在です。したがって、イベントスペースのデザインや装飾と招待状の「かたち」を一致させることが、一貫性のある体験を提供する鍵となります。

3.3 統一性とブランディング

商業的なイベントやビジネス会議では、招待状の「かたち」は会社やブランドのイメージに直結します。ロゴ、カラースキーム、タイポグラフィなど、すべてがブランディングに貢献する要素となりえます。

まとめ:招待状の多次元的な考察

本記事を通じて、「か・かた・かたち」の3つの側面から招待状を分析してきました。招待状は単なる紙切れやデジタルメッセージに過ぎないように思えますが、その背後には深い意味と多層的な機能が備わっています。

最高の招待状を作成するためには、これらの3つの要素を総合的に考慮する必要があります。本質的なメッセージ(「か」)、機能性と実用性(「かた」)、そして視覚や感触に訴えかけるデザイン(「かたち」)が調和すれば、招待状は確実にその目的を果たします。

招待状は、結婚式やビジネスイベントなど、様々な場面で人々を一堂に呼び寄せる重要な役割を果たします。そのため、これから招待状を作る全ての人にとって、「か・かた・かたち」の概念は、効果的な招待状をデザインする際の貴重なガイドラインとなるのではないでしょうか。

これから招待状を手作りされる方は、是非表層上のデザインだけを見るのではなく、「か」「かた」「かたち」で検討してみてください。

たくさんのリサーチやインスピレーションによって、きっと素敵な招待状が出来上がるはずです。




Twitterアカウント開設しました!
デザインインスピレーション、招待状販売状況、その他活動ののお知らせなどを発信しています。是非フォローをお願いします。

https://twitter.com/tanuki_san_ai



この記事が参加している募集

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?