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改めて知る 「信楽タヌキ」って何? 【第1回  そもそも「信楽タヌキ」って?】

全国のタヌキファンとタヌキの皆様、おまたせしました。

前回に続く本シリーズは、身近にあるけれど意外と知られていない「信楽タヌキ」の特徴や歴史について、あらためて紹介していこうという趣旨のものである。

一連の投稿を最後まで読み終えた者は一人残らず、

「嗚呼! タヌキになりたい!」

と叫ぶこと必死。私としても、ぜひタヌキを目指してもらいたい所存。


今回はその第1回目ということで、タヌキの基本情報について紹介していきたい。

章立ては以下の通りである。

1.「信楽タヌキ」って?
2.名前
3.役割
4.売り物としてのタヌキ

1.「信楽タヌキ」って?

等身が低く、可愛らしい表情のものが近年一般的

「信楽タヌキ」とは、上記の写真のような陶製のタヌキの事を言う。

成立は一般的に1900年代初頭といわれ、意外にも歴史は浅い。
最初の制作者としては、藤原銕造(初代狸庵)といわれることが多い。

現在はそのほとんどが滋賀県甲賀市の信楽町で作られている。
前回も軽く触れたが、信楽町には溢れんばかりのタヌキが置かれている。まぶたの裏にタヌキを焼き付けたい方はさあ信楽町へ。

基本的な特徴としては、笠、徳利、通帳、陰嚢が挙げられ(大きなお腹を含めて5つとすることも)、「酒飲みのおやじ」や「酒を買う子ども」のように見られることも少なくない。

実際、かつては「酒買い小僧タヌキ」などと呼ばれていた時代もあったようで、「信楽タヌキ」と酒や笠とは強い結びつきがあるとみえる。

ちなみに、上記の写真のタヌキを見て何か気づくことはないだろうか。

写真のタヌキには、キンタマがないのである。

そう、メスの「信楽タヌキ」も存在するのである。
大半のタヌキはオスであるが、バリエーションとして確かに存在する。多くのメスタヌキは代わりに股間を葉っぱで隠している。

ただし胸は隠さない

そんなメスタヌキを例とするように、現在の「信楽タヌキ」はバリエーションも豊富である。

なぜそのようにタヌキの姿が多様化していったのかについては、次回以降、「タヌキの歴史」についてお話する際に紹介していきたい。


2.名前について

タヌキの背中には穴が空いていることが多い。

ところで、本ブログでは前回からこのタヌキをカギカッコつきで「信楽タヌキ」と呼称している。

これは文中で名前を目立たせたいとか、その方が格好いいからだとかいった理由ではない。

「信楽タヌキ」には決まった名称が存在しないのだ

例えば書籍や論文。例えばwebサイト、そしてお店の看板や商品名など。

このタヌキについて書かれているのを見かけた際は、その呼称のされ方に注目していただきたい。

・信楽焼きのタヌキ(信楽焼タヌキ)
・信楽タヌキ
・タヌキの置物
・(ただ単に)タヌキ

など、呼ばれ方は様々である。「タヌキ」が「たぬき」や「狸」と表記されることもあり、この「信楽タヌキ」には統一された呼び名が存在しないと言える。

その理由については推測の域を出ないが、本ブログにおいては「信楽タヌキ」と呼称することに決めている。

このタヌキの置物はかつて信楽町以外の様々な焼き物産地、備前や常滑、清水でも焼かれていた。

現在も他の産地のタヌキが売られていたり、飾られていたりする事例も少なくない。(ほとんどは信楽焼であるが)

そのため、主に信楽町で作られているタヌキとして、あえて信楽焼とは呼ばず便宜上「信楽タヌキ」と呼称することとした。


ちなみに、「信楽タヌキ」と口にしてみると意外にも語感が良い。
日々新たなフレーズを探求するラッパーの皆様には、ぜひ「信楽タヌキ」を使っていただきたい。


3.役割

かわいい


「信楽タヌキ」について話をする際、よく尋ねられる質問がある。

なんで、お店にタヌキが置いてあるの?

言われてみれば不思議である。無論、私も気になっていた。

例えば居酒屋。あるいは蕎麦屋や旅館で間抜けな表情をして突っ立っている「信楽タヌキ」を見かけたことがあると思う。

これは意味もなく置かれているわけでない。
現在、「信楽タヌキ」は主に縁起物として扱われているのである。

最も多い宣伝文句としては、「他を抜く」という言葉遊びと掛けて商売繁盛の縁起物として扱われることが挙げられるだろう。

そのため、招き猫と同様に、飲食店や旅館に置かれることが多いのだ。

加えて、「信楽タヌキ」の特徴が縁起の良さと結び付けられることもある。
これを「信楽タヌキ」の八相縁起という。陰嚢は金運、通帳は信用を表すといった具合である。気になる方はぜひ八相縁起で検索してみよう。

また、魔除けとして置かれることもあったという。玄関の前に置いていたら、泥棒が驚いて逃げ出したから、という話からくるらしい。


なお、現在は縁起物の定義が広くなっているようで、結婚祝い、引っ越し祝いに贈られることもあるらしい。

時代に合わせて自分の売り込み方を変えていく商売の天才。それが「信楽タヌキ」なのかもしれない。

ちなみに前後の内容とはまるで関係がないが、私は今年の3月に引っ越したばかりである。関係はないが、私は引っ越したばかりである。


4.売り物としてのタヌキ

高いタヌキは笑ってしまうほど高いぞ


言わずもがな、タヌキは工芸品であると共に売り物である。

タヌキの値段は200円から200万円であると言う。

値段の差異には、タヌキのサイズ(10cm~2m。最大で5mのものも)が大きな要因となる。

加えて、成立から現在までの間に変化・発展した製法の差異によるところも大きい。

現在「信楽タヌキ」は鋳込製法という、大量生産に適した製法で作られたものがほとんどである。

この製法で作られるタヌキが最も安く、10cm程度のものであれば1000円未満で購入することが出来る。30cm程度のものでも、3000円~5000円で買えてしまう。

一方で、かつて主流であった型押しや手びねり成型のタヌキは値段が跳ね上がる。特に手びねりタヌキは同じサイズの鋳込成型タヌキと比べ、値段が一桁変わることもある。

また、鋳込のタヌキでも1m前後にもなると数十万円するものが少なくない。型押し、手びねりであれば百万も軽く超えてしまうだろう。


ちなみに、上記の写真のタヌキは信楽町の狸庵というタヌキ専門店で作られるタヌキである。

現在、「信楽タヌキ」制作者で名を名乗る者はほとんどいない。その中で狸庵は100年前から続く屋号であり、現在も制作したタヌキの背中にその名を刻んでいる。

本投稿の冒頭で紹介したが、「信楽タヌキ」の生みの親は一般に藤原銕造、つまり初代狸庵であるという。

その狸庵が自身の名そのままの店を開き、現在はそこで三代目の狸庵がタヌキを制作しているのだ。この狸庵のタヌキが現在最も高価である。



今回はここまで。

この記事を読んでいただけた後、町で「信楽タヌキ」を見かけることがあれば、今までとは違った目線でタヌキを見ることができるのではないだろうか。

お店の前で見かけた際は、タヌキの置かれる理由、見た目の特徴、大きさから想像できる値段等を考えてみるのも面白いかもしれない。

そんなことを考えるようになったら、あなたは立派な「信楽タヌキ」研究者である。ようこそ、慶應タヌキ研究会へ!


そして次回は「信楽タヌキ」の歴史について紹介したい。
その後は、タヌキのバリエーションや置かれている場所について紹介する予定。

もし、タヌキについてこんなことが知りたい! という要望があれば、気軽にコメントしていただけると嬉しい限りである。


毎年1体はタヌキを購入する敬虔なタヌキ愛者の運営するアカウント、慶應タヌキ研究会のtwitterはこちら


参考・引用文献
冨増純一 2001 「信楽焼古たぬきのやきもの図録」 信楽狸学会
冨増純一 2013 「やきもの たぬきのルーツ図録」 信楽陶器卸商業協同組合
中村禎里 1990『狸とその世界』 朝日選書

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