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憧れていた古民家暮らしに二の足を踏んだ理由【古民家に住むまで①】

半同棲するための物件を探していたら、築75年・平屋の古民家の賃貸物件を見つけた。

もともと探していた地域から少し距離はあるし、駅から徒歩圏内を条件にしていたのにバス利用は必須だし、家賃は想定していた額を超えていた。

それでも住めないほど不便な場所ではないし、家賃も断念するほど予算を超えているわけでもない。何より、日本文化や古い建物が好きな私は、その佇まいに惚れた。これは見に行かずにいられない。

彼氏に、想定の地域ではないしバス利用になるが内見だけでもしたい旨と物件のURLを送ったら、「興味はあるね」と返事が来たので、即不動産屋に問い合わせのメールをした。

実際に内見してみると、古民家は写真の通り、というか、写真以上に素敵だった。檜造り、畳の部屋が3部屋に納戸が1部屋。障子や襖も洒落ていた。「この家の一番の魅力はね、この一本木の梁」と縁側の梁について年配の大家さんが得意そうに話してくれる。小さな庭が見える広い縁側で、ここで月見ができたらいいねと彼と話した。水回りもリフォーム済みだし申し分なかった。

ただし、2軒しか見てない(もう一軒は内見してすぐに却下)ので、念のため少し検討することに。そして、ひと晩寝ると一つ不安なことが出てきた。防犯面だ。

彼と一緒に住むのだが諸事情により、彼は、私と同棲後も彼のもともとの家に週に何度か泊まる予定だ。と書くと、人に言えぬような関係かと疑われそうだけど、そうゆうわけではなく、もともとの家が成人した子供(彼はバツイチ)との共同生活の場兼仕事の事務所であることから、引き払うわけに行かず、子供の様子も気になるしごはんも作ってあげたいのだと。

ということで、私はあの古民家に週に何日かは一人で眠る。マンションのようなセキュリティもないし、当然一階だし、縁側をはじめ窓の類いはやたらと多いし、周辺には外灯が少なくて薄暗かった。一人でいるときに犯罪やらお化けやらに遭遇する可能性について考えずにいられなかった。そういえば、近くに寺があって確かお墓もあるし……と、考えれば考えるほど不安になった。憧れの古民家に住む可能性がやってくるなんてめったにない機会なのだけど、いざ住むとなると防犯面が気になり、二の足を踏んでしまったのだ。

Google mapで周辺情報をチェックしながら、悶々と考えるも答えは出ないまま。一方で、横浜市界隈で古民家などめったにないし、家賃も私の想定よりは高いが一軒家にしては安いし、都内への通勤圏内でもある好物件。もたもたしていると他の人に入居が決まってしまうかもしれいない、とそわそわする。

一人で考えていても埒があかず、「古民家を見つけてそこに住みたいんだ。今度内見に行くよ」と知らせていた友達に、近況報告がてら悩んでいることを話すと、事故物件サイトとか軽犯罪サイト見てみたら?と有力なアドバイスが返ってきた。

事故物件サイトとは、その名の通り、事故物件の情報がまとめられた地図が掲載されている情報サイト。さっそく古民家やその周辺をチェックしてみると特に事故物件はなくひと安心。もちろん、このサイトにすべての事故物件情報が掲載されているわけではないのだけど、×マークと一緒に「自殺」「火事」などの記載がやたらと密集しているエリアもあり、少なくともそのような曰くつきエリアではないわけで、それだけでも大きな安心材料となった。軽犯罪サイトに掲載されるような実績もなく、少しだけ、不安が減った。

しかしそれだけでは安心できず、一人で現地調査に行くことにした。夕暮れ時、古民家の最寄りバス停から歩き、周辺の様子をチェック。やっぱり、外灯が少ない。が、閑静な住宅地でもあり、特段あやしいもの(そんなものはめったにないと思うけど)はない。バス停から徒歩1分ほどの古民家だが、大家さんにも不動産屋にも連絡していないので、中へは入ることができないので、家の周りをチラ見。やっぱり窓が多い……。でも、よく見ると鉄格子か雨戸のどちらかは、どの窓にも必ず付いているので、その辺は古民家といえども通常の家と同様に気が遣われているようだった。前回はそのあたりのチェックをよくしていたなかったので、実際に目にして確認すると不安が減った。

古民家の先は小さな山になっていて、物件を通り過ぎて奥に進むと、緑が多くなり、とてもすがすがしい気持ちになった。行き止まりに、木工品のギャラリーのような店があり入ってみた。店員さんに話かけられたので、周辺で引っ越しを検討しており見に来たと話すと「治安もいいし、特別変な人がいたとこかも今までないですよ」なんて話をしてくれた。

ここにしようかな。

実は悩みすぎて占い師にでも相談しようかと思っていたのだが、心がかなり前向きになった。もう一つ、寺の墓が気になっていたがそれほどの近さではなく、家からは見えない。墓の数もごくわずかだった。

実はこの前日に、彼と物件について少し話をしていた。彼は、もともとできれば一軒家がいいと考えており、おまけに私と同じく古い建物が好きなこともあり、実は言い出しっぺの私以上に、古民家を気に入っているようだった。ただし私が納得しないと意味がないので、たぬ子が決めて、とのことだった。

彼が前向きな気持ちになっていることにも大いに後押しされた。「やっぱり、この家にしよう」と決心した。

それから、ドアの鍵やエアコンなどの設備を確認するために再度内見をしてから、申し込みしたい旨を伝え、諸々の手続きを踏んで無事に引っ越しを終えた。

内見2回、周辺調査1回、事故物件サイトチェック、軽犯罪サイトチェックもして防犯面の不安を払拭し、無事、憧れの古民家暮らしをスタートさせた。

続く


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