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「エモい」の正体

最近「エモい」というワード(スラング?)をよく見るようになりました。

こんな記事がたくさん出るてくということは、世間的にも「エモい」が認知されつつあるということでしょうか。(私の周りで使っている人はあまりいませんが)

この「エモい」っていう感覚(感情?)は一体何だろうと考えてみたところ、「あ、ひょっとしてエモいってこういうこと?」と思ったことがあったので書き散らします。

「エモい」ってそもそもなに?

そもそも「エモい」は一般的にどう定義されているのでしょうか。Wikipediaにはこのように書かれています。

英語の「emotional」を由来とした、「感情が動かされた状態」、「感情が高まって強く訴えかける心の動き」などを意味する日本語の形容詞。感情が揺さぶられたときや、気持ちをストレートに表現できないとき、「哀愁を帯びた様」などに用いられる

emotionalという英語が元になっているだけあって、「感情」がキーワードのようです。つまり感情が動かされるとエモいっていうんですかね。

こんな解説もありました。

「エモいとは何か?」の定義はサイトによって多少違いがあるものの、概ね「うまく言葉にできないけど、感情が動かされたときにとりあえず出す言葉」みたいな感じでした。

つまり「エモい」のポイントは

・感情を揺り動かされること
・その動かされた感情をうまく言葉で表現できないこと

なんだろうと思います。

ちなみにメディアアーティストの落合陽一さんは「エモい」を『古文において「とても趣がある」と訳される「いとをかし」と類似するもの』と表現しているそうです。(「いとをかし」ってン十年ぶりに聞いた気が。。。

でも、そうなると「エモい」に近い使われ方をする「ヤバい」といったい何が違うんでしょう?

「ヤバい」ってどういうこと?

Weblio辞書によれば、「ヤバい」は以下のように定義されています。

①身に危険が迫るさま。あぶない。 「やばいぞ,逃げろ」
②不都合が予想される。 「この成績ではやばいな」
③若者言葉で,すごい。自身の心情が,ひどく揺さぶられている様子についていう。 「この曲,やばいよ」 〔若者言葉では「格好良い」を意味する肯定的な文脈から,「困った」を意味する否定的文脈まで,広く感動詞的に用いられる〕

「ヤバい」は元々盗賊や泥棒が使う隠語で、危険や不都合な状態を表現するネガティブな言葉だったのが、「凄い」から転じて「カッコイイ」要素まで含んだ万能な感情表現用語になったわけです。今回のテーマである「エモい」に近いのは③ですね。英語で言うと「COOL!」に置き換えられる使い方です。まさに

・感情を揺り動かされること
・その動かされた感情をうまく言葉で表現できないこと

が重なったときに使うのが③の意味での「ヤバい」であり、「ヤバい」と「エモい」は何が違うんだろう?というのが本ポストの主旨です。

ヤバいとエモいの違い

「ヤバい」と「エモい」、どちらも「自分は感情を動かされた」という事実を表現する手段であり、平たく言えば「共感・共鳴」を表す言葉です。

だとすると、

・「ヤバい」は客観的事実に基づく共感・共鳴を表す言葉
・「エモい」は主観的事実に基づく共感・共鳴を表す言葉

ではないか、というのが私の持論です。

ヤバい=客観的事実に基づく共感・共鳴

「客観的事実に基づく」というのは、それを見た人の感情を動かす要素が可視化されている(目に見えている)ということです。

例えば、サッカーの試合観戦に行ったら、素人目から見てもわかるような超絶プレーを見たとき、あるいは、超絶技巧の伝統工芸品を間近で見たとき。

「ヤバイなこれ!」「すげーなコレ!」

という感想が自然と出てくるのではないでしょうか。誰が見てもCOOL!と思えてしまう、感情を動かされるのが「客観的事実に基づく共感・共鳴」ということです。

エモい=主観的事実に基づく共感・共鳴

一方、「主観的事実に基づく」というのは、それを見た人の感情を動かす要素が不可視(外からは見えない)ということです。

例えば上のサッカー観戦の例で言えば、超絶プレーを見せた選手の両親や地元の友人は、そのプレーを見たとき「ヤバい」という表現にはなりませんよね。両親や友人など、その選手に近しい人達しか知り得ない、その選手にまつわる過去の文脈に基づいた共感だからです。
(選手の母親がそれを「エモい」と自分で表現するとは思えませんが笑)

この感動的なエピソードを客観的に(テレビ等で)知った人が、エピソードを聞いて感情が動いたのだとしたら、それこそ「ヤバい」と表現せずに「エモい」と表現するのではないでしょうか。なぜなら、そのエピソードを聞いて心に思い浮かぶイメージは、その人自身の生い立ちや過去の記憶・経験に置き換えて構成されるはずだからです。まさに主観的事実に基づく共感・共鳴であり、「エモい」という表現が出てくるわけです。

「エモい」を言い換えると

「エモい」とは要するに「自分の文脈(自分ゴト)に置き換えて共感・共鳴できること」でした。それを踏まえて…

「ヤバい」を言い換えると → 「かっけー!」「すげー!」「COOL!」

「エモい」を言い換えると → 「わかる~」「そうだよなぁ」

でしょうか。

おしまい。


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