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結論犬を飼え・ヒトは〈家畜化〉して進化した

動物としての人間が他の類人猿と違って何故生き残れたのか、「家畜化」という観点から現存する家畜のメカニズムに基づき考察する人類史的な本。前半は専門領域のため、「自己家畜化」という仮説を検証していく様が面白い。「家畜化」って隷属とかネガティヴな態度ではなく、「友好的」みたいなニュアンスで捉えている。

後半はそんな友愛の精神を育んでいるはずの人間がこんなにも分断しているのは何故か?という問題を社会学的なアプローチで攻めてくる。こちらは専門外であろうが、大量の文献を基に理論構成しているし、あとがきで「書き直した」と言っているぐらいトランプ政権下のアメリカがスーパー未曾有大分断になっていることを踏まえてた上でのパートチェンジ感。

そして結論、「犬を飼え」で締める様はロジカル的な手法で帰結していくが、ちょっと笑ってしまった。北方謙三の「ソープへ行け」ぐらいの捩じ込み感。しかし、欧米の大学は色んな検証やテストをやりまくっているなあと興味深い。こういう人種や地域、思想によって分かれるサンプリングを全員に施してるんじゃないかと思うぐらい全ての仮説にアンケートが存在している。

家畜化すなわち、人間に対して友好的な種だけキツネを交配させる実験の話は面白かった。友好的なやつらだけで何世代も続けていくと、環境的な要因に関わらず先天的に友好的な種になっていき、身体的特徴や骨格、脳状態がそうでない種と比べて変化していくらしい。

そして、オオカミからイヌへ何故変化(家畜化)していったのかは、自己家畜化というプロセスが古のオオカミの中にに備わっていた奴らが居たという結果である。人間の食べ残しなどを漁るヒトにビビらないオオカミたちが自然淘汰の中で、自己的に無自覚で家畜化していったそうな。即ち、人間と友達になれるオオカミこそが今日のワンちゃんである。

そんな自己家畜化のプロセスがホモサピエンスにも適用されるのではないかとこっから主題に入っていく。所謂友達多いから生き残ってきた理論みたいな感じで、他の生物よりここまで知的に発展できたのは、「集団内の見知らぬ人」に対しても友好的感情を持てるようになったからであると述べる。まあここら辺の記述は近い種類であるチンパンジーやボノボとの比較で教えてくれるので分かりやすい。

あと「白目がある」を基準にして人間かそれ以外に分類しているらしい。他のホモ族は自滅したのか殺されたのかサピエンスと同化したのかどうなんでしょうと気になるテーマがふと浮かぶ。

そしてそんな友好的精神の持ち主なのになんでこんなにも殺し合い、ヘイトを撒き散らすかと言うと、人間には根本的にそういった対象を「非人間化」して捉える性質が備わっているという。国家や人種や宗教や性質に関して、特定のものをレッテルばり、自分とは違う種類の劣った生物とみなす精神性(猿化)によってそう言った分断はもたらされるそうな。そしてその根源には「相手が俺らを非人間化している」という思い込みから始まるというのも面白い。

とりあえず上記を解消する手段としては過激暴力化するのではなく、ちゃんと喋って一緒に飯食って交流しろ!というのが最良であると結論づける。そして、イヌを(家族的に)飼う人はそう言った友好的な人間が多いというデータ出てますで見事な締め。そして筆者の飼い犬の写真で収まるさまはやっぱ強引だけど面白かった。

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