#8【鬼滅の刃(アニメ)】から、少年漫画の対立構造について考える。【正義VS正義】

(※この記事は2019年に執筆した過去の記事を一部編集したものです。)

最近やたら話題になり、書店でも「全巻売り切れ」と張り出されているほど人気沸騰中の「鬼滅の刃」を観ました。

ずっと気になってはいたのですが、
他に読みたい本や映画作品が溜まっていたので機会を失っていました。


そして、ちょうどこのタイミングで発熱。

「今しかない…」ということで丸々1クール全話見終えた後に思ったことを書きたいと思います。

少年漫画の対立構造「正義VS正義」

少年漫画、特にジャンプ作品には必ずといって現れる対立構造があります。

「正義VS正義」

正義、の敵は悪ではなく、
もう一つの正義である。

ということ。
私は少年時代に多くの漫画作品からこのことを学びました。
そこで今回「鬼滅の刃」を観て感じたのは、

正義を「主人公」たらしめ、
一方の正義を「敵」たらしめるものとは一体なんなのだろうか?

ということです。
私たちはなんとなく、暴力的で主人公と対立している方が「敵」であると考えてしまいがちですが、そこにはきっと理由があるはず。

逆に主人公にも、これこそ「主人公」であると考えられる根拠があるのではないか、と思ったわけです。

「主人公的正義」=他人へのベクトル

まずは主人公の方から考察します。
主人公の行動や言動から、多くの作品に共通している出来事を以下に書き出してみます。

「修行」「鍛錬」「家族」「守る」「努力」「仲間」「愛」「友情」…

パッと並べただけでも様々な単語が浮かんできますね。
これらの共通点を探してみると、なんとなくベクトルが他人へと向いているような気がします。

自分の不利益を顧みず、身の回りの人物や、関係のない街人、
時には「敵とされていた人物」をも助けたり、思いやることがある。

各漫画で具体例を出すなら、以下のような登場人物でしょうか?

鬼滅の刃▶︎炭治郎
NARUTO▶︎ナルト
僕のヒーローアカデミア▶︎デク、オールマイト
BLEACH▶︎黒崎一護

これはまさに主人公の主人公たる所以といっても過言ではありません。
大事な誰かを守ることが強くなる為のモチベーションとなっているのです。

「敵的正義」=自己へのベクトル

逆に敵っぽいと考えられるキャラクターには、
自分の私欲や利益への強いベクトルを感じる場面が多い印象があります。

「才能(能力)」「お金」「破壊」「憎しみ」「快楽」「利益」「孤独」…

同じ正義(社会が良くなる為)の行為であろうとも、
敵キャラには必ずどこかに「自分の為の」という願望が強く現れています。

鬼滅の刃▶︎累
NARUTO▶︎オビト、ペイン、飛弾、角都
僕のヒーローアカデミア▶︎死柄木弔
BLEACH▶︎藍染

勝って相手を打ち負かすこと、圧倒し思い通りに事を進ませること。
それらは過去の強いトラウマ体験と結びついていることも少なくありません。

他者を征服しようとすることが強くなる為のモチベーションになるのです。

”強くなる“とは?

「主人公的正義」と「敵的正義」はどちらも作中でパワー(強さ)を求めています。相手を圧倒するための力(=権力)といってもいいでしょう。

その使って大切な人を守ろうとする「主人公」と
その力で他者の征服を試みる「敵」。



それらはベクトルが違うだけで、双方が同じ物を望んでいることになります。
そして“強くなる”為の過程にも違いが現れています。

「主人公サイド」▶︎「稽古」「トレーニング」「他人からの気づき」
「敵サイド」▶︎「研究」「薬」「才能の譲渡」

主人公のトレーニングでは、よく呼吸法や禅問答、身体能力の向上の場面が多く見受けられますよね。どのような状況にも打ち負かされない、「強い“精神”と”肉体“、そして“自己コントロール”の能力」が鍛えられるモノばかり。

一方、敵サイドは全て「如何に手っ取り早く簡単に強くなるか」を考えている印象ですよね。

そして必ず、物語は主人公が勝利を勝ち取りエンディングを迎える。
「主人公的な長期的トレーニング」が「敵的な短期強化」を上回るわけですね。

これらのことからわかることは、
【強くなること=他者に対する想いを動機とした、長期的な自己鍛錬から力を得る】だということです。

つまり、冒頭で問題提起した、
「正義を主人公たらしめる理由とは…?」の回答は、ここにあると考えられます。

まとめと感想

例えば、とあるアーティストの曲が全部同じような聴き味に感じたことはありませんか?

ジャンプ作品は全部読み味が一緒だ、と感じた事はありませんか?

自己啓発書は全部同じことを言ってるだろう。

カレーはどこのカレーを食べても同じだ、と。


私は、それらは全て“一本の芯が通っているから”ではないかと思っています。
【アーティスト】は”感情“や”社会への不満“などを各々のアーティストなりに表現する。
【自己啓発書】はとにかく“行動“を促し、不安を感じた人の背中を押す。
【カレー】は“辛さ”や“カレーの味”が好きな人の為に味付けされている。
そして、【少年漫画】は“正義”という難解で解釈しがたいモノを、イラストと物語でわかりやすく説明してくれる。

その芯が、“らしさ”を作り上げていると感じます。

今回も鬼滅の刃を観ながら、どうしてこうも漫画の主人公は優しく、
自分の意思を曲げず、自己研鑽を怠らず、目的の為に頑張る人ばかりなのだろうか。主人公らしさとは何なのか?

その理由を考えながら、こうして文章を書いてみた結果、
少しだけその理由が理解できたような気がします。


最後まで読んでいただきありがとうございました!
少しでも面白いと思った頂けたら幸いです。


民奈涼介



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