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渋谷の谷を埋める建物 渋谷サクラステージ訪問録1

2023年11月に暫定オープンした渋谷サクラステージに行ってきた。

渋谷は名前の通り”谷”の街である。渋谷駅から、センター街を通りパルコに向かおうとも、Bunkamuraや閉店した東急本店に向かおうとも、西口を出て宮益坂をのぼり青山のほうに抜けようとも、いずれも坂を上ることになる。しんどいのは、JR渋谷駅を利用した場合である。地上2・3階に相当するプラットホームから一度地上に降りたうえで、目的地に向かって再度坂を上らないといけないところである。これは全くの位置エネルギーの無駄遣いである。

そんな地形の渋谷なものだから、昔から渋谷の谷を埋めるように、渋谷を訪れる老若男女が無駄にエネルギーを消費しないように、そのエネルギーをできたら自分のところの商業施設で発散して消費してもらうように、工夫が凝らされてきた。

おそらくそれに類する最初の取り組みは、1952年の渋谷の線路を横断したロープウェイであろう。これは子供用の12人乗りのロープウェイを渋谷駅の西側の東横百貨店と東側の玉電ビルを往復するものであったという。渋谷の谷地の地形を活用し、自社の商業施設に人を誘引しようとする装置の先駆けであったのではないか。なお、残念ながらロープウェイは2年で廃止されたらしい。

出所:シブテナ https://shibutena.com/local_information/12711/

この谷地を埋めるような動線をもつ建物としては、2000年に開業したマークシティや2012年のヒカリエがあげられる。マークシティ内を通ることで、道玄坂は神泉駅あたりまで抜けられるし、銀座線渋谷駅の移設とヒカリエの開業により東口も三竹通りの宮益坂上の交差点付近まで高低差少なく(またはエスカレーターを利用して)移動することができるのである。そのため、マークシティ↔渋谷駅↔ヒカリエを通ることで、渋谷の谷地に下りずとも、長距離を東西に横断することができる。

渋谷の地図 
出所:Yahooマップブログ https://map.yahoo.co.jp/blog/archives/20220817_map_shibuyast.html

前置きが長くなったが、渋谷サクラステージもこの文脈に位置づき、渋谷の谷を埋めんとする再開発の1つであった。サクラステージが立地する桜丘地区はアップダウンという点では、六本木通りの横断歩道のせいで、これまで紹介した道元坂や宮増坂より酷い状況が長く続いていた。つまり、例えば、JRの渋谷駅から渋谷文化総合センター(そういえば渋谷にプラネタリウムあるってどのくらいの人が知っているのだろう…?)や東急のセルリアンタワーまで向かおうとすると、JR駅のプラットフォームを降りる、六本木通りの横断歩道を上り、また降りる、そして桜丘を上るという苦行を強いられる。このようなハイキングコースが、このサクラステージの誕生と、渋谷駅の南側の新改札の誕生により、サクラステージを通り少しだけ坂を登れば桜丘の頂上でプラネタリウムが見られるようになったのだ!

筆者撮影 サクラステージから桜丘地区を望む

さらに、同じ渋谷駅とは思えないJR埼京線の新南口からも、跨線橋からのサクラステージ経由することで、渋谷の南側における東西の移動をアップダウン少なく確保している。なお、サクラステージ内では、新しく開通した都補助18号(概ね渋谷から恵比寿方面に山手線の西側をはしる道路)を広場で跨ぎ、ここでも無用なアップダウンが解消されている。

筆者撮影:新南口の跨線橋からの撮影。左側がサクラステージ

それにしても、都市の中の移動をシームレスにして利便性を高め、建物だけではなく周辺の地区の魅力の向上までを目的とした再開発が民間に任されているのが日本の・特に東京の面白いところだと思う。海外でもそういう風な都市開発があったかな、なんていうのはまた次のnoteにしましょうか。

出所:
1:サクラステージオフィシャルHP https://www.shibuya-sakura-stage.com/
2:シブテナ https://shibutena.com/local_information/12711/

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