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いざ搭乗

 遠くの街へ出かける時に聴く音楽はいつもくるりの「ハイウェイ」。18歳の時に青春18きっぷを片手に米原行きの新快速に乗った時もこの曲を聴いていた。そして今回も。いつの時代も僕には旅に出る理由が大体100個くらいあるのである。
 さて、予定より少し遅れて到着した羽田空港は様々な国の人で溢れかえっており、まさに年末年始。保安検査場も人人人。やはり国際線の検査はより厳しいもので、「靴は脱いでください!はいもう一度!」「上着は脱いでください!」「トレーは下から取ってください!」。当たり前のことなのだが、なんだか叱られている気分になるのは僕だけだろうか。
 そんな厳しい検査も無事終え、僕は搭乗口へ向かう。フライトまであと一時間半。温かいおうどんでも食べて日本とのしばしのお別れを惜しもうか、なんて思っていたのだが各店ともすでに閉店時刻を過ぎていた。しまった。こういう細かいリサーチ不足への後悔がお腹をより空かせる。グゥーと腹が鳴った。
 仕方がない。搭乗口付近の自販機で何か買って空腹を満たそうと思ってたどり着いたゲート142。今度は付近に自販機がない。こりゃまたしまった!せっかくたどり着いたゲートに背を向け、僕は自販機を探しに歩き回った。やれやれ、極寒の地に行くというのに、すでに汗びっしょりである。
 フィンエアーの文字が美しく描かれた機体は既に僕らの搭乗を待っていた。無事おにぎりを手に入れた僕はこの瞬間を存分に噛み締めながら機体に乗り込んだ。

「Hello!」

 ニッコリと微笑みかけるCAさんに挨拶をして座席に着く。22:20。予定より少し遅れて僕は日本を出た。さぁ目指すはヘルシンキ。僕の原点の街である。

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