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未来の建設業を考える:建設論評「いまこそCASE時代への対応を」(2021年12月8日)

モビリティ分野のCASE

 モビリティ分野において、CASEと称される「コネクテッド(Connected)」、「自動化(Autonomous)、「シェアリング&サービス(Shared&Service)」、「電動化(Electric)」が進む。100年に一度の「モビリティ革命」と言われる時代だ。
 事実、カーシェアリングの車両台数(交通エコロジー・モビリティ財団調べ(2019年))は、2011年の4千台から、2019年には10倍の約3.5万台に増加している。ライドシェアの市場規模も急速に拡大している。矢野経済研究所調べ(2018年)によれば、MaaSの市場規模は800億円(2018年)から、2030年には6兆円と100倍近く激増することを予測している。まさに、インフラを担う建設業としても無視できない数値だ。

「MaaS」

 「MaaS」とは、電車やバスだけでなく、カーシェア、サイクルシェアなどありとあらゆる交通機関を対象に、ITを活用して人々が効率よく、かつ便利に使えるようにするシステムのことだ。いまでもスマホのアプリを使えば、目的地までの交通機関は検索できるが、予約や支払いは別。MaaSになれば、ワンストップで可能だ。すでにフィンランドでは、「ウィム(Whim)」というMaaSアプリを使えば、定額でヘルシンキ市内の電車、バス、トラム、フェリーが乗り放題で利用できる。

モビリティハブ拠点の構築

 モビリティハブの発祥地とも言われるドイツのブレーメン市。鉄道駅に近接してカーシェアリングや自転車シェアリングの拠点を設け、自宅や目的地へのラストワンマイルの移動手段として大いに活用している。カナダのハノーバー市もMaaS先進都市。シェアサイクル置き場のように、同じタイプの自動車が市内を回遊するスカイトレインの駅前にあり、バスやタクシー利用と同じ感覚で簡単に使える。これに自動運転サービスが加え、まさに「ドア・ツー・ドア」が実現する予定だ。
 日本ではどうか。
 国土交通省が中心となり、「道の駅」を起点に、中山間地域を自動運転の車で結ぶ実験を進めている。全国の「道の駅」の数(2021年)は、約1200か所。道の駅が単に休憩所や特産品販売所としてだけでなく、まさにモビリティハブ拠点として機能する。
 さらに、道路と「道の駅」を結びつけることで、自動運転による物流・高齢者支援や地域回遊型の観光への応用も可能だ。
 そのためには、道路自体への投資も必要だ。電線の地中化や既存インフラの新たな環境整備だ。すでにドイツでは高速道路の一部区間をデジタル・テストフィールド・アウトバーン(DTA)と名付け、自動運転車が走行可能な区間を設置している。中国河南省では、「智慧島(インテリジェントアイランド)」と呼ばれる地区で、車両、道路、インターネットなどを一体化させ、5G通信を利用したビッグデータ活用により、自動運転バスの運行を開始した。

道路や建物のデジタルデータ

 これらが実現するためには道路や建物のデジタルデータや拠点整備が必須だ。
 CASE時代は、ITだけでなく、それに伴うインフラへのデジタル化投資が求められる。建設業としても、CASE対応へ新たな投資を呼び込む時代になったのではないか

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