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未来の建設業を考える:建設論評「Proptechが創る未来」

不動産テクノロジーの略である「Proptech(不動産テック)」

 不動産テクノロジーの略である「Proptech(不動産テック)」、AI、ITを活用することがなかった不動産業界を大きく変える動きだ。特に、米ニューヨークはその聖地。不動産取引の分野において、3Dモデルを使ったシミュレーション技術、VR(仮想現実)、公開された賃料データ、不動産取引データを活用し、現地の状況を把握し、不動産取引が成立するようなシステム開発が盛んに実施されている。米国は公開される不動産データが多いのがその主な理由だが、確かにAI、ITは取引の透明性を向上させ、比較検証を容易に行うことができる。日本でも、早急なデータ公開が必要な分野だ。

テクノロジーによるオフィス環境の改善

 一方、テクノロジーによるオフィス環境の改善という意味では、①ワーカーの生産性を大きく向上させる物理環境の提供、②エネルギー効率の改善(省エネルギー化)が目玉だ。
 オフィスワーカーの生産性に大きく影響する要因は、米企業を対象とした最新アンケート調査でも確認されたことだが、「温度設定」、「空調コントロール」、「照度設定」が3要素であると言われている。米コーネル大の研究によれば、より暖かく感じる温度環境の方が、ワーカーの生産性が最も高かった、との研究成果もある。
 米ビル管理会社CBREでは、テナントの満足度に大きな影響を与える要因は、迅速な修繕修理、セキュリティの確保、個人に合致した空調環境の提供といった「ビル管理業務」にあることを見出し、CBRE360という、空調、温度、照度等といった物理環境を個々人がコントロールできるようなアプリを開発して、オフィス環境の機能改善を図り、ワーカーの生産性を向上させる試みを始めた。

エネルギーコスト削減に向けたAIツールの開発

 一方でエネルギーコスト削減に向けたAIツールの開発も、売れるソフトウエアとして重要な米不動産テックの一角を占めている。ある調査によれば、実に60%を超える米オーナーが今後5年で、グリーンビルディングの達成に不可欠なビルのエネルギー管理やエネルギー消費効率を最適化できる「ビルディング・オートメーション・システム」の導入を検討しており、特にエネルギーコストが高い米ニューヨークでは不動産オーナーの注目を集めている。

Proptechをより積極的に活用して、より良質なオフィス環境を

 ここに来て、日本の大手ゼネコンもAI、ITを用いて、オフィスのインテリジェント化に注力しはじめた。
 ITメーカーとの協業による設備の効率化や個々人のニーズにあったオフィス環境の提供のため、空調、照明、セキュリティなど、別々に管理されていたデータをクラウド上で統合し、デジタルプラットフォームの構築を始めるなど、オフィスのインテリジェント化が進み始めている。また、時代に合致したIoTセンサーの活用等によるエネルギー効率の最適化や省エネ化技術の導入など、既存ビルの効率化にも活用を広げている。これまで個々の発注者ではできなかったことを、ゼネコンが主導する形で、欧米並みの統合データ管理が可能になったことは画期的なことであろう。
 オフィスでは働く場の要素として、4つの「C」、Concentration(集中)、Convenience(利便性)、 Collaboration(協働)、Community(協調)を実現することが重要であると言われるが、Proptechをより積極的に活用して、より良質なオフィス環境をこの日本で実現したいものだ。

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