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村上春樹から覗く現代

部屋の片付けをしていると、ふと積み上げれた本の一番上にレキシントンの幽霊という小説があった。


村上春樹の短編集のそれは、掃除中の私の手を止めるには充分すぎるほどの引力を持っていた。

まぁよくあるやつですよね。


パラパラとページをめくると、沈黙というタイトルが目に付いた。


題名から内容はまるで思い出せなかったが、一度読み出すと記憶のメロンの皮をスルスルと剥くように思い出していった。


かいつまんで内容を話すと、「僕」は、職場の先輩と思われる31歳の大沢と空港のレストランにいた。二人は天候不順で遅延している飛行機の運航再開を待ちつつ世間話に興じていたのだ。会話の中で僕は大沢がボクシング経験者と知り、大沢の普段のイメージとのギャップから「これまでに喧嘩をして誰かを殴ったことはありますか」と訊ねてみた。

大沢はしばらく沈黙した後、おもむろに語り始めた。中学二年生の時、一度だけ殴ってしまった同級生・青木との間で起きた中高時代の出来事やその後の人生について。そして本当に怖いのはどのような人間かについて。


この本当に怖い人間とは同級生・青木が扇動し、大沢を懐疑的な目で見る同級生や教師の事を書いているのですが、私はこれを読んでネットやニュースで右往左往する人間をふと思った。


もちろんそんな人間は今も昔もいますが、現代ほどそんな本当に怖い人間が多くなってる気がするんです。


自分自身でネットからニュースや情報を選択していると、あまりに偏向的になっていませんか?


私自身ももしかしたらそうかもしれません。


現代は本当に怖い人間が溢れて、彼らの声は魔女裁判の如く断罪を求め、被告人に罰を与えようとしてます。


村上春樹はそんな怖さを小説といツールを通して、掃除中の私に語りかけてきました。


#村上春樹 #短編集

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