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忘れられない初恋〜客席に君がいるライブ〜

芸歴は2年目になっていた。
デビューし、ライブを重ねるごとに、感覚も掴んできて、ライブの出番も少し増えていた。
その中で、2年目から5年目までの選抜された若手が出られる新ネタライブに選ばれた。

とにかく嬉しかった。
普段ではご一緒できないような、劇場で人気や実力がある先輩たちと同じ舞台に立てる。
養成所時代、中の下くらいに位置にいた僕らからすれば快挙だった。
相変わらずバイト三昧ではあったけど。

嬉しさがさらに加速する。
ともみちゃんがその新ネタライブに来てくれることになった。

深夜のネタ見せを終え、始発で家に帰り、睡眠時間3時間にも満たない中、向かえるライブ当日。
アドレナリン出まくりで眠くもなんともなかった。
好きな人が観にくる緊張よりも嬉しさ方が勝って、ほどよい緊張感でライブに望めた。

出囃子がなり、センターマイクへ向かいながら、ともみちゃんをさがす。
さすがに見つけられなくて、ネタ中にさがす余裕もなかった。
それでも、客席からともみちゃんが観てくれる中、夢に向かって好きな漫才ができている。
幸せな3分間だった。

ライブ後、ともみちゃんは一緒に来てくれていたマッキーと外で待ってくれていたけど、新ネタライブでダメ出しをもらうのに、1番若手の僕らは最後まで待たなきゃ行けないから、すぐには外に出れなかった。

「今日は帰るね。ネタ面白かった。また来るよ。」
ともみちゃんからLINEが届く。

会えないのは、残念だったけど、面白いと言ってくれるのはやっぱり嬉しい。

ともみちゃんのLINEのアイコンが同じ出番だったニューヨークさんとの出待ちの写真に変わっていて、思わずいじる僕。

いつかまた、ライブに来てもらって、次こそは出待ちしてもらえるように、頑張らなきゃと思う僕。

好きなこと頑張れば、好きな子に会えるんだから。

でも、ライブに来てくれたのは、この一回きりだった。

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