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抗酸化物質の最前線―酸化を予防して老化に抗おうー~腸活ラボマガジンVol.12~


はじめに

こんにちは、やまだです。今回は、抗酸化物質、ひいては抗酸化防御ネットワークについて取り上げたいと思います。老化とはつまり、酸化のことです。酸素を使っている以上、酸化は避けられません。なぜなら取り込んだ酸素の一部から活性酸素種が発生し、体のいたるところを酸化させてしまうからです。しかし、僕たちの体の中では、日々抗酸化物質が作られ、食事からも抗酸化物質を取り入れることができます。それにより、酸化によって起きる様々な炎症や疾患を予防することができ、健康に生きることができるはずです。今回は、それらのメカニズムと具体的にどんなことを生活の中で取り入れていけばいいかについてお話しします。参考になった方はぜひスキしていただけると励みになります!

活性酸素の仕組みと意外な役割

活性酸素種(ROS)には、いくつか種類がありますが、体内では抗酸化防御ネットワークによってバランスが保たれており、ROSレベルを調節して、特定の役割に用いている一方、病気の発症に寄与する可能性のある酸化的損傷を最小限に抑えるように機能します。
ROSの種類としては、以下のように2種類あります。
1.フリーラジカル:一つ以上の不対電子をもっている分子や原子。一酸化窒素、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカルなど
2.非ラジカル:不対電子をもたないもの。一重項酸素や過酸化水素など。

また、発生の機構も複数あります。一つは、自動酸化反応やミトコンドリアの電子伝達系からの電子漏洩など偶然に生成されるもので、もう一つは、病原体に対する防御やシグナル伝達などの重要な生理学的イベントのために意図的に作られるもので、過酸化水素や一酸化窒素が代表的です。具体的にどのようなイベントに関与しているかというと、精子の機能や、受精、胎盤形成、胚の発育や組織の再構築、出産などヒトが正しく成長する際に重要な役割を果たしているわけです。

ROSの生体内での反応

二つのフリーラジカルが出会うと、不対電子が結合して共有結合を形成します。具体例をいくつかみてみましょう。一つは、NO・です。これは、いくつかのアミノ酸由来のラジカルと結合し、NO・とO2・-の反応でペルオキシ亜硝酸塩が形成されます。これは体に悪影響を与えます。
もう一つは、ヒドロキシラジカル(OH・)です。これは、反応性が高く、連鎖反応を引き起こすことがよくあります。 重要な連鎖反応の 1 つは脂質過酸化であり、1 分子の ROS が膜およびリポタンパク質の多価不飽和脂肪酸 (PUFA) 側鎖の複数分子の酸化を引き起こします。
これによって、生じた過酸化物は、細胞膜の構造を不安定にして、断片化し、そこからさらにラジカルや4-ヒドロキノネナールなどの細胞にとって毒性を示すアルデヒド(アルコールをとったらアルデヒドが生じますが、そのアルデヒドです。発がん性物質)を生成します。

少し脱線しますが、多価不飽和脂肪酸は、オメガ3系とオメガ6系がありますが、不足しがちなのは、オメガ3系です(図1)。青魚やアマニ油、えごま油に含まれるのでしっかり補っていきましょう。そして、これらの多価不飽和脂肪酸は、油として利用される場合は、酸化に弱いので開栓したらなるべく早く使い切る、遮光するなどの工夫をして酸化を防ぎましょう。

図1 脂肪酸の分類

ROSによって、引き起こされる酸化ダメージは、多くの疾患に関与しています。例えば、がん、心血管疾患、眼の疾患、神経変性疾患などです。いくつかの ROS (OH・、IO2、HOCl、ONOOH、および特定のペルオキシルラジカル) は、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物および脂質を攻撃する可能性があります(ref1, 2)。

活性酸素と抗酸化物質のバランス

抗酸化防御ネットワークは、酸化的損傷を最小限に抑えながら有用な役割を継続できるように、活性酸素主のレベルを分刻み (あるいはおそらくは秒単位) で調節しています(ref3,4)(図2)。抗酸化防御のレベルと構成は、個人、組織、細胞の種類、特定の組織内の同じ種類の細胞、細胞外と細胞内で異なります。また、性差によっても異なります。 たとえば、ヒトを含めて哺乳類のメスは、オスよりも特定の内因性抗酸化物質のレベルが高いです。 実際、鉄の酸化促進性の性質を考慮すると、オスよりもメスの寿命が長いことは、抗酸化酵素レベルの増加と下半身の鉄貯蔵量に関連していることが示唆されています(ref5)。
そして、活性酸素種と抗酸化物質のバランスは絶妙なレベルで保たれていますが、生体内でも活用されているものもあるので常に活性酸素種側に少しバランスが寄っています。

図2 生体内での活性酸素主(ROS)と抗酸化物質のバランス

抗酸化物質の種類とメカニズム

抗酸化物質は、図2に示したように抗酸化作用の発揮の仕方でいくつかの分類に分けることができます。

  1. スーパーオキシドジスムターゼなどROSを触媒的に除去する酵素。

  2. 酸化損傷を引き起こす触媒になる鉄や銅イオン、ヘムおよびヘム含有タンパク質などの酸化促進剤を非酸化還元活性形態で結合または保存することにより、その利用可能性を最小限に抑えるタンパク質。

  3. ROS と優先的に反応し、ROS がより重要な生体分子を攻撃するのを阻止する「犠牲剤」(スカベンジャー)。例としては、グルタチオン(GSH)、コエンザイムQ10、ユビキノール、α-トコフェロール(ビタミンE)、カロテノイド(一重項酸素などのROSを除去)、ビタミンC、アルブミン。これらの犠牲になって酸化されたスカベンジャーは、ほかの抗酸化物質によって還元されてもとに戻るか、破壊されて再合成されるか、食事から新たに置き換えられます。

  4. 食事由来の抗酸化物質

以下では、食事由来の抗酸化物質についてみていきたいと思います。

抗酸化作用をもつ食べ物

抗酸化作用のある物質はビタミンE(4つのトコフェノールと4つのトコトリエノール)(ref6)、ビタミンC(ref7)、カロテノイド(ref8)、フラボノイドなどのポリフェノール(ref9)などがあります。そして、これらの血中濃度が高いと、心血管疾患、糖尿病、神経変性、眼疾患(白内障、黄斑変性)など、酸化的損傷が発症の原因となる疾患の発症リスクの低下につながることがわかっています。
特に重要なビタミンCの1日の推奨量(成人)が100mg(2020年版食事摂取基準)で耐用上限量は定められていません。ビタミンEは、1日当たりのビタミンEの摂取の目安量は1日に5.0~7.0mg、耐容上限量は1日650~900mgです。
それぞれの摂取量が推奨量を下回る場合、酸化的損傷レベルを高めてしまう可能性があります
では、抗酸化作用のある食べ物を食べると体の中で何が起きるのでしょうか?

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