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響きを感じる楽しみ、奏でる楽しみ

生まれてからこの方、ギターというものに縁がなかった。周りを見てみると中学・高校あたりで始めた人が多い印象だが、変に斜に構えていた私は完全に乗り遅れ、ここまで生きてきた。
でもやはりどこかでギターを弾くことに対する憧れというのはあって、アーティストのライブなどでギターを弾きながら歌っているのを目にすると、「格好いいなぁ」という素朴な気持ちを抱いていた。かといって、音楽教室に通う気にもなかなかならず、宙ぶらりん。

そんなことを職場の先輩に話したら、「じゃあ今度ギター教えてあげるよ」とのありがたいお言葉。仲間同士で音楽を奏でるという経験がなかった私は、その言葉だけで舞い上がってしまった。さながら、「遅れてやって来た青春時代」だ。
そして今日、先輩の家と私の家の中間地点あたりにある公民館的なところの音楽室を借りて、第一回目のレッスンを受けてきた。

ギターを弾ける方からすれば「こいつは何を言っているんだ」となろうが、自分で音を作るというのはこんなにも難しく、でもまたこんなにも楽しいことなのか、というのが正直な感想。私は一般的な成人男性よりかなり手が小さく、場合によっては女性よりも小さいことがあるくらいなので、そもそも弦を押さえるのに四苦八苦。それで「ジャーン」と鳴らしてみて、明らかな不協和音が聴こえてくると、一本ずつ鳴らして調整してみたり。そんな作業も新鮮で面白い。
なんだか少し、外国語学習の初期段階に似ている気もした。先生の真似をして発音してみるのだが、明らかに先生とは違う音が出ている。「何が違うのかなぁ」と家に帰ってあれこれと口の中を調整しているうちに、「あ、なんかこんな音かも」に行き着く。音の響きを感じて、自分でもその音を奏でてみることは、やはり私の心を喜ばせる。
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さて、数時間の練習の後、先方には予定があるというのでそのままお開きに。実は練習をした地は東京都北区の王子というところで、この土地自体が初めて訪れるところ。初めて尽くしでなんだかウキウキした私は、いつもと違うことがしたくなって、最近ほとんど立ち入っていなかったマクドナルドへ。ハンバーガーとポテトとコーヒーを注文して、気ままに頬張る。うん、懐かしい味。昔とは多少は違っているのだろうが、がさつな私の舌では悲しいかな、昔との違いは分からない。ある意味おめでたい。

その足で楽器店に向かったのだが、さすがにギターの衝動買いには至らず。むしろ、ポータブルキーボードが意外と安いことを知り、中古のギターと新品のポータブルキーボードを手に入れるのも悪くないかな…と思ってしまった。

こうしている今でも左手の薬指の先に心地よい痛みが残っており、不思議とそんなことで生きている実感がわいたり。我ながら、変わった人間である。

30歳の夏は、かくも楽しい。

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