その夜の侍

#その夜の侍 を観る。
Twitterへの投稿を転載。

冒頭、コンビニ袋から突き出た包丁。静かに穏やかに流れる音楽が不穏さを際立たせる。主人公の中村は部屋に残る亡き妻の衣服を抱きしめ、留守電に残された5年前の死者の声を繰り返し聞く。プリンを食べながら。(1/6)

(2/6)お見合いの席で妻のカレーの思い出を話す中村(堺雅人)の、やり場のない感情を宿した目が狂気。ポケットから取り出されるブラジャー。日常から逸脱した男の孤独。スナックには、そんな壊れてしまった男が二人、後に残される。

(3/6)全ての責任を他人になすりつける山田孝之演じる木島。人を轢き、人を殴り、人にガソリンを撒き、人を生き埋めにしようとする。口癖は「飽きた」
中村の妻をはねたトラックに貼られた「安全運転中」のステッカーが皮肉だ。

(4/6)久保(高橋努)みたいな同僚がいたら楽しいだろうなと想像する。安藤サクラ演じる嬢の歌声と存在感。日常からはみ出た男が夜の日常的な風景を歩く。そんな中で中村が出会う、道端で”志”集を売る男は現実なのか幻想なのか。

(5/6)8月10日。運命の日。台風の夜。中村はカレーを食べてからやってくる。包丁を手に、中村なりの覚悟を持って。泥に塗れて転げ回る二人のラストシーン。雨が止んだ後の中村の独白。全てが終わった帰り道、ラーメンに引っ張られるように中村は日常に戻ってくる。そしてそれは留守電の削除と共に終わる。

(6/6)要約すると、プリン・カレー・ラーメンの話。堺雅人の怪演はロバートデニーロを彷彿とさせる。プリンを顔に塗りたくるシーンなんかは特に。
「お前を殺して、俺は死ぬ。決行まで、あと○○日」という紙は時節柄、「100日後に死ぬワニ」を連想してしまった。両者間に何の関係もないけれど。

#映画 #エッセイ #その夜の侍

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