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『偶然手にした本がその後に及ぼすなにがしかの影響』

 初めて一人称小説の凄みを感じたのは、高校時代に読んだ東直己『探偵はバーにいる』だった。当時、映画化される気配すら無くサイン入りハードカバーが古本屋店頭3冊100円コーナーに無愛想に突き刺さっていた。だから隣にあった『バーにかかってきた電話』も買った。あと一冊何を買ったかは憶えていない。

 物語の舞台が、新宿でもL.A.でもなく、札幌ススキノ。著者近影は盛大な髭面で、略歴にアル中と書いてあったかと記憶している。全部ひっくるめてなんだかとても良かった。榊原/畝原モノは病人時代、長大な待ち時間を潰す為に病院の待合で読んだ。高田馬場の駅ナカで買った菓子パンを食べながら。

 だから、東直己の名を聞くと高校〜病人時代を一挙動に思い出す脳の仕組みになってしまっているらしい。この脳内記憶は、後に札幌に行った時分に〈ケラー・オオハタ〉を求めてススキノを彷徨った思い出も含めて完結する。

 …この後に、”R.I.P”とでも続けば収まりも良いのだが、ご本人はまだ御存命だ。

#エッセイ #本 #小説 #東直己 #探偵はバーにいる

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