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『ラブ・アクチュアリー』:2004、イギリス&アメリカ

 老齢のロック歌手のビリー・マックは、かつて『Love is all around』という曲をヒットさせたが、今では完全に落ち目だ。マネージャーのジョーが勧めたこともあり、彼は『Love is all around』の「ラブ」を「クリスマス」に変更して録音した。
 クリスマスの5週間前。作家のジェイミーは友人ピーターとジュリエットの結婚式に出席するため、具合が悪いという恋人を残して家を出る。妻を亡くしたダニエルは、親友のカレンに相談の電話を掛ける。カレンは小学生の娘のデイジーから、クリスマスの劇でロブスターの役に決まったと言われる。食品配達の仕事でデザイン会社を訪れたコリンは社員のミアを口説こうとするが、無視される。

 映画の撮影現場で濡れ場の吹き替えを担当するジョンは、同じ吹き替え役のジュディーに自己紹介する。教会では新郎のピーターと友人のマークが新婦のジュリエットの到着を待っている。英国の新首相となったデヴィッドは首相官邸に到着し、職員のアニーから紹介された新人のナタリーに好意を抱く。
 教会ではジェイミーや友人のサラたちが出席して結婚式が始まり、マークが用意した合唱隊が歌う。式が終わって帰宅したジェイミーは、恋人と弟のクリスの浮気現場に遭遇する。

 配達から戻ったコリンは友人のトニーに、モテるためにアメリカへ行くと言う。ジョンとジュディーは世間話に話を咲かせる。ダニエルは葬儀で「妻が葬儀にはクラウディア・シファーと参列してと言っていた」と軽く笑いながら語る。結婚式の2次会で、マークはサラからピーターが好きなのではないかと問われ、即座に否定した。
 出勤したサラは社長のハリーに呼ばれ、同僚のカールに惚れているのはバレバレだから行動を起こせと勧められる。ラジオ番組に出演したビリーは、自身の新曲を「クソだが、買ってくれると嬉しい」と皮肉めいた言い方で紹介する。

 クリスマスまで4週間、デヴィッドは近く訪問する米国大統領との会談で強硬に主張すべきだという閣僚に対し、穏便な対応をするつもりだと告げる。ダニエルはカレンに、妻の連れ子のサムが部屋で泣いていることがあると打ち明ける。
 ダニエルはサムが好きな同級生のジョアンナのことで悩んでいると知り、もっと深刻な悩みと思っていたのでホッとする。デヴィッドはナタリーに私的な質問を投げ掛け、彼女が「ダサい」と言われているワンズワースに両親と住んでいること、恋人に太目の体型のせいでフラれたことを知る。

 マークはハネムーンから戻ったジュリエットからの電話で、結婚式のビデオを見せて欲しいと言われるが、「たぶん消してしまった」と冷たく答えて切る。ハリーはミアから誘われるような態度を取られ、その気になる。
 フランスの別荘を訪れたジェイミーは、知人のエレノアからポルトガル人で言葉の通じない掃除人のオーレリアを紹介される。

 デヴィッドは米国大統領を迎えるが、席を外している間に彼がナタリーを誘惑する。それを知ったデヴィッドは、マスコミを前にした共同声明で「今後は言いたいことは強気に主張していく」と宣言し、米国大統領を驚かせる。
 カレンは兄のデヴィッドに電話を掛けた後、夫ハリーに聞かれてジョニ・ミッチェルの歌が好きだと告げる。官邸に戻ったデヴィッドは、ラジオのDJが「首相に贈ります」と告げて流した曲に合わせて踊る。

 ジェイミーが湖畔で仕事をしていると、オーレリアが不注意で原稿を飛ばしてしまった。オーレリアは服を脱ぎ、湖に入って原稿を拾い集めようとした。この出来事をきっかけに、ジェイミーはオーレリアのことを意識するようになった。
 マークが自分を避けていると考えたジュリエットはアポ無しで彼の家を訪れ、関係改善を図ろうとする。結婚式のビデオを見つけたジュリエットは、その場で再生する。自分ばかりがアップで写っているのを見たジュリエットは、マークの気持ちに気付いた。

 ダニエルはサムから、ジョアンナが故郷のアメリカに戻ることを聞かされる。ジェイミーはオーレリアを車で送り、キスをされる。ビリーのプロモを見ていたサムは、ミュージシャンになればモテると考え、ジョアンナが歌うクリスマスのコンサートで演奏するためにドラムの練習を開始する。
 パーティーに出席したカレンは、ハリーがミアと踊っているのが気になる。テレビ番組に出演したビリーは、新曲が一位になったらテレビで裸になって歌うと冗談めかして宣言する。

 サラはカールをデートに誘い、自宅に招いてベッドインしようとする。だが、いいところで弟のマイケルから携帯電話に連絡が入った。彼は精神病で入院しており、電話が掛かればどんな時でもサラは相手をするのだ。
 サラは「自分を好きなら出ないで」と頼むカールとの交際を諦める。デパートの宝石店でネックレスを購入しようとしたハリーだが、カレンに見つかり、慌てて誤魔化した。

 クリスマスまで1週間、コリンはトニーの元を訪れ、コンドームをリュックに詰めて渡米することを告げる。トニーが助監督を務める映画撮影現場では、ジョンがジュディーをデートに誘い、OKを貰う。カレンはハリーのコートのポケットにネックレスが入っているのを発見し、自分へのプレゼントだと思って喜ぶ。
 ジェイミーは語学教室に通い、ポルトガル語を学ぶ。渡米したコリンは3人の女性に口説かれ、彼女達の家でベッドインする。カレンはハリーからプレゼントを贈られるが、それはジョニ・ミッチェルのCDだった。

 クリスマス・イヴ。ビリーの新曲はチャートの一位を獲得した。サラはマイケルの元を訪れ、一緒にクリスマスを祝う。ジュリエットの元にはマークが訪れ、ピーターに知られないよう紙に書いたメッセージで「来年は恋人を作るつもりだけれど、僕には君が最高の人」と伝える。ジュリエットは立ち去るマークを追い掛け、口付けをして去った。

 エルトン・ジョンのパーティーを抜け出したビリーはジョーのアパートを訪れ、「クリスマスは一番大事な人と一緒に過ごすものだ」と告げる。ナタリーのメッセージ・カードを見たデヴィッドは、ワンズワースへ向かう。ナタリーの家へ行くと、彼女は家族や親戚と一緒に地区の学校合同のコンサートへ行くところだった。そのコンサートに、ナタリーの弟のキースもタコの着ぐるみ姿で出演するのだ。

 デヴィッドは、ナタリーたちを会場まで送ることにした。会場にはジョンとジュディー、ダニエルとサムも到着した。ナタリーと共に裏口から会場へ入ったデヴィッドはカレンと遭遇し、彼女の子供のバーニーとデイジーを見に来たのだと勘違いされる。
 舞台では出し物が続き、サムが出演する番となる。ジョアンナが見事な歌を披露し、サムはバックバンドの一員としてドラムを叩いた。幕の裏にいたデヴィッドはナタリーとキスをするが、幕が開いて観客席の皆に見られ、笑顔を浮かべて退場する。

 コンサート終了後、ハリーはカレンから浮気を指摘され、バカだったと悔やむ。ダニエルはクラウディア・シファーにそっくりなシングルマザーのキャロルと出会った。ダニエルはサムを連れて、帰国するため空港へ向かうジョアンナを追う。
 ジェイミーはオーレリアの実家を訪れて求婚しようとするが、彼女は仕事で不在だった。父親が案内すると言うが、親戚一同が付いてきた。

 空港に到着したダニエルとサムは空港へ到着するが、職員に止められて搭乗窓口から中に入れない。しかし宝石店の店員のルーファスが窓口で職員の目を引き付けている内に、サムは中に入った。サムは空港のテレビで、ビリーが裸で演奏する番組を目にする。サムはジョアンナに気持ちを伝え、キスを貰う。
 ダニエルはオーレリアが働くレストランへ親戚一同を連れて出向き、ポルトガル語で求婚する。すると、オーレリアは英語で「嬉しいわ、答えは簡単、もちろんイエスよ」と答えた。

 1ヶ月後、ヒースロー空港。ビリーは恋人のグレタを連れて戻り、ジョーの出迎えを受ける。ダニエルはオーレリアを連れて戻り、ピーター、ジュリエット、マークの出迎えを受ける。仕事で出掛けていたハリーは、家族の出迎えを受ける。アメリカから遊びに来たジョアンナをサムが出迎え、ダニエルはキャロルの彼の息子と共に見守る。
 ジョンとジュディーは、友人のトニーに指輪を見せて去る。コリンはアメリカ人の恋人ハリエットを連れて戻り、彼女の友人のカーラをトニーに紹介する。デヴィッドは政治記者が待ち受ける中へ戻り、飛びついてきたナタリーを抱えてキスを交わした…。

 監督&脚本はリチャード・カーティス、製作はダンカン・ケンワーシー&ティム・ビーヴァン、共同製作はデブラ・ヘイワード&ライザ・チェイシン、撮影はマイケル・コールター、編集はニック・ムーア、美術はジム・クレイ、衣装はジョアンナ・ジョンストン、音楽はクレイグ・アームストロング、音楽監修はニック・エンジェル。

 出演はアラン・リックマン、ビル・ナイ、コリン・ファース、エマ・トンプソン、ヒュー・グラント、ローラ・リニー、リーアム・ニーソン、マルティン・マカッチョン、ローワン・アトキンソン、アンドリュー・リンカーン、キウェテル・イジョフォー、グレゴール・フィッシャー、ハイケ・マカッシュ、キーラ・ナイトレイ、クリス・マーシャル、ルシア・モニス、マーティン・フリーマン、ロドリゴ・サントロ、トーマス・サングスター他。

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 『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』の脚本家、リチャード・カーティスの監督デビュー作。自ら脚本も担当している。
 オープニングで表記される主要キャストが19人。9つのエピソードが同時進行する構成。クリスマスの5週間前から話が始まり、クリスマス・イヴにクライマックスを迎える(その後にエピローグはある)。
 全てのエピソードは完全に別々というわけではなく、登場人物に関連性があったり、話が進行する中で交差したり一部が重なったりもする。映画はヒースロー空港から始まり、最後もヒースロー空港で終わる。

 主要キャスト19名は、ハリー役がアラン・リックマン、ビリーがビル・ナイ、ジェイミーがコリン・ファース、カレンがエマ・トンプソン、デヴィッドがヒュー・グラント、サラがローラ・リニー、ダニエルがリーアム・ニーソン、ナタリーがマルティン・マカッチョン、マークがアンドリュー・リンカーン、ピーターがキウェテル・イジョフォー。
 ジョーがグレゴール・フィッシャー、ミアがハイケ・マカトシュ、ジュリエットがキーラ・ナイトレイ、コリンがクリス・マーシャル、オーレリアがルシア・モニス、ジョンがマーティン・フリーマン、カールがロドリゴ・サントロ、サムがトーマス・サングスター、宝石売り場の店員のルーファスがローワン・アトキンソン。

 それ以外に、浮気するジェイミーの恋人役でシエンナ・ギロリー、ジュディー役でジョアンナ・ペイジ、トニー役でアブドゥル・サリス、サムの祖父役でエドワード・ハードウィック、米国大統領役でビリー・ボブ・ソーントン。
 コリンを米国で誘う3人組の役でイワナ・ミルセヴィッチとジャニュアリー・ジョーンズとエリシャ・カスバート、キャロル役でクラウディア・シファー、ハリエット役でシャノン・エリザベス、カーラ役でデニース・リチャーズが出演している。

 「実のところ、愛はどこにでもある(Love actually is all around)」というのが本作品のテーマだ。
 とてもスウィートで楽観的な話だが、クリスマス・ムービーとして作られているのだから、「話が甘すぎる、安易すぎる」という文句の付け方は間違っている。
 クリスマス・ムーーではステキな奇跡が起きてハッピーになるというのが、暗黙のルールである。

 これは紛れも無いクリスマス・ムービーだ。見終わった後に穏やかな気持ち、優しい気持ち、幸せな気持ちにさせてくれる映画であり、それでクリスマス・ムービーとしてのハードルはクリアしている。
 同時に、これはオールスター映画でもある。イギリス映画界を代表するトップ俳優たち、ピンで主演を張れる面々が揃って出演している。

 昔は日本でも、似たような類の映画が毎年必ず作られていた。ただし日本なので、クリスマスではなくお正月映画としてだ。
 各映画会社のスター役者が揃って登場し、「スターが共演する」ということによって観客の御機嫌を伺うタイプの映画が作られていた。そして観客は、その「スターが揃う」ということに満足するのだ。いわゆる「お祭り気分のお楽しみ映画」とでも言ったらいいのかな。
 これがシリアスな内容だったらナメとんかと批判したかもしれないが、あったかコミカルなハッピー・ストーリーなので良し。

 1つ1つのエピソードは薄くて、まるで粗筋を映像化したみたいになっているが、「もっと主要キャストを絞り込んで1つ1つの物語を厚くしろ」というのは間違っている。なぜなら、これは「オールスターが登場して美味しいトコだけ見せて御機嫌を伺う」という作りの映画だからだ。クリスマス・ムービーなので、それはそれでOKなのだ。
 主要キャラクターの描き分けは、「演じているのが有名スターだ」という部分に頼っている部分も大きいが、有名スター勢揃いゆえに成立している映画なので、それもOK。

 全体的にホンワカした雰囲気の中で、ダニエルのエピソードだけが「妻を亡くして連れ子が塞ぎ込んでいる」ということで、大きくかけ離れたテイストの始まり方になっている。
 しかし、すぐにサムの秘めている悩みが好きな女の子のことだと分かり、ハッピーテイストになる。まあ、亡くなったばかりの妻に対するダニエルの気持ちをメインにしないのは、どうなのかとも思うけどさ。
 ただ、そこをメインでエピソードを作ると、ホンワカの空気で描くのは難しいだろうなあ。

 印象に残ったシーンを羅列してみよう。
 まずは序盤のピーターとジュリエットの結婚式のシーン。
 マークが用意したサプライズが2階から現われた聖歌隊だけかと思ったら、教会の席に座っていた複数名が楽器を持って立ち上がり、ザ・ビートルズの『愛こそはすべて』の演奏に加わる。ジョンとジュディーは裸になって激しい絡みの撮影をしながら、純情チックな恋の会話を交わす。

 デヴィッドはラジオのDJが「首相に贈ります」と言って流したガールズ・アラウドの『ジャンプ』(オリジナルはポインター・シスターズ)に合わせ、首相官邸でノリノリで踊る。
 サラがカールを自宅に招くシーン。一度は帰ろうとしたカールが「本当は帰らなくてもいいんだ」と言うと、サラは「ちょっと待ってて」と告げて玄関から去る。掃除でもするのかと思ったら、見えない場所に隠れて全身で大喜びを表現し、また玄関に戻って「もういいわ」と告げる。

 ダニエルは妻の葬儀で「彼女が好きだった曲を別れの挨拶の代わりに」と言い、ベイ・シティ・ローラーズの『バイ・バイ・ベイビー』を流すと、後ろに生前の彼女の姿がスライドで映し出される。
 ダニエルは妻の葬儀で「彼女はクラウディア・シファーと一緒に参列してねと言っていましたが」と冗談として語る。それは、その場だけの冗談でなく伏線として使用されており、終盤に彼はクラウディア・シファー本人が演じるキャロルと運命的な出会いを果たす。

 サムが搭乗窓口で止められるシーン、ルーファスがモタモタするのは、ハリーがネックレスを購入する時と同じなので性格的なものかと思っていたら、立ち去る時にダニエルに意味ありげな表情を送り、「サムを行かせるために時間稼ぎをした」ことを示唆する。
 ローワン・アトキンソンは恋愛劇にも友情劇にも関わらない2シーンだけの登場だが、美味しい出演の形だなあ。

 終盤のコンサートのシーン、ジョアンナが歌うマライア・キャリーの『恋人たちのクリスマス』はベラボーに上手いし、バックバンドとコーラスも子供と保護者なのにプロの域。
 非現実的ではあるけど、そこは主要キャストが一堂に会する大きな盛り上がりの場所だということを考えれば、そこを現実的に稚拙な演奏&歌唱にするよりは「魅せるパフォーマンス」にした方がいいに決まっている。
 そのコンサートのシーンまで、ジョアンナを登場させないのも正解だ。

 クリスマス1ヶ月後のエピローグは別にして、クリスマス・イヴの最後はデヴィッドで締め括るのだろうと勝手に思い込んでいたので、ジェイミーをラストに持って来たのは意外だった。
 ただし、実際に見てみると、ああいう恋愛劇の収め方なら、そりゃあラストにするわな。デヴィッドの方はキスで締め括りだけど、ジェィミーの方はプロポーズだし。

 全く不満が無いわけではない。
 サラのエピソードは、カールとの関係をメインに扱ってしまうと、弟を選んだことはハッピーエンドにならないんじゃないかと思うし、それなら弟のことも考えて付き合ってくれる男性との新たな恋の予感を匂わせてほしい。
 コリンのエピソードは愛じゃなくてセックスだけじゃねえのかとか思うし、ピーターにも新たな恋の予感を用意してほしいと思う。
 ただ、まあ全体的に粋なノリが心地良いし、繰り返しだがオールスター出演のクリスマス・ムービーとしては、充分に楽しめるんじゃないかな。
 というか、ワシ、この映画、好きだなあ。

(観賞日:2007年1月15日)

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