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歩いて歩いて歩いて

1997年9月6日(土) ひるね
道を渡るところ。酷い気分。救われない。疲労。左手にフォーク、右手にナイフ。食事の途中で出てきたか?
周囲は真っ黒で、辛うじて輪郭がわかる。家々からは一筋の明かりももれていない。街灯もない。これでは懐中電灯か提灯でも持たねばならない。
角。もう少し先へいこうかな。疲れすぎた。行ったきり帰れなくなるやも知れぬ。
歩くのが困難で頭はふらふら。
右手のナイフの感触に変化が。ザラザラする。見ると、フォークとナイフが錆び錆びになっていた。
焼けたんだろうか? 火事? 戦争? 火事。そうだ。わたしのこころの中では火事が起こっている。だから持ってるだけでこんなになってしまっても不思議じゃない。

工事中の道。
土手へ向かう坂をのぼった。キュッと止まり、キュッと曲がってスピードを出し坂を下りてくる自動車がわたしにぶつかる勢い。運転してるおやじ、平気な顔。ムカつく。
歩くのが本当に辛い。なぜこうも歩きづらいのか?
自動販売機で缶のお茶を買ったようだ。
ようやく坂をのぼりきったところに警備員がいて、歩きづらいことを詫び、労をねぎらってくれた。
全然、あなたのせいで苦しんでいるのではないのだが。声をかけてもらってとてもうれしかった。
お茶をのんだ。よく冷えていてありがたかった。
薄明かるくなっていた。土手の上から川を見ると白い花々が身を潜めるようにさいていた。
歩いていく先を見た。もうここまで工事が来たんだな。

この川で何度泳いだだろう・・・。あの時、あの時と思い出した。おどろおどろしい天気の日が多かった。もう川へは下りていかれないんだろうか。

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