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1997年4月14日(月)
そこは会社のような場だった。社長のような男の人がいた。
わたしは役に立つからそこにいるのではなく、そこの人たちのご厚意で、使ってもらう、という立場。
社長のような人は簡単な説明ののち「あとは・・・に」と言ってどこかへ。
代わって、わたしの教育係として女の人が出てきた。
その女の人が、わたしを不快に感じながらも愛想よくしようとしているのがわかった。
わたしはなぜ不快がられているのかわからない、というよりそこまで考えが及ばなかったが、この人に嫌われたくない!とは思って、緊張した。
はっきりしない春の空のような色の綿のコートをわたしは着ていたが、暑くなったので脱いだ。それを白い机に置いたとき、「そこに掛なさいよ」と女の人が険のある声で言った。
見ると、いろんな服が掛かっている中に、Mの服があった。
あ、ここにいるんだ。会いたいな。

「なによそれ、透けてるじゃない」
女の人の声で、少しゆるみかけていたわたしの心は一瞬で固まった。不快が露になった女の人の視線を受けて自分の下のほうを見た。
着ていたのは白い綿のブラウス。汗?で張り付いて、からだがまだらに透けてしまっていた。不思議なことに臍まで見えていた。
お腹の色は、日焼けしているように濃かったが、不健康な感じだった。血液が滞っているようだった。臍は、わたしの臍とは違っていた。だいたい胴が、あれは新生児の胴ではなかったのか?
赤地に黒のチェック、プリーツスカートを履いていた。
あのスカート、恐ろしい。どす黒い血がオーバーラップする。
恐ろしいのはこれで終わらず、スカートの裾の先に見えるはずの、脚も足もなかった。
理解できない自分の姿に不安を覚え、加えて、女の人の嫌悪の情が刺さって辛かった、ただただ辛かった。

社長のような人が「どうです、慣れましたか?」などわたしを気遣う場面があり、急展開。
「わたしが非道いみたいなこと言ったんでしょう! わたしが非道いみたいな・・・わたしがあんたに非道いことしたみたいにあの人に言ったね! あの人にわたしを悪く思わせようとして!
どおしてえ! どおしてえ!」
迫り責める女の人。
恐いし、訳がわからなかった。怒りは感じなかった。「誤解です」とかなんとか、変な思いこみを直してもらおうと説明したのだが、女の人は、狂った汚物でも見るような目でわたしを見て、怯え、小さく首を左右に振って後ずさった。

わたしは社長のような人に、緊張していることと、難しく感じているとか話しただけだ。女の人の悪口なんて言ってない。女の人には好かれたいと思って、女の人の気持ちを少しでも察して嫌がられないようにと思っていた。
それなのに女の人は、「あんたはなんて奴なの! わたしを悪く言って、あの人に取り入る気?!」
恐ろしい思い違いで、残酷なことを言っておきながら、被害者よ、被害者よ、わたしは被害者なの!とからだを震わせ、あふれさせていた。
辛くてならなかった。泣きたかった。悪意など、いだいていないのに、悪意があると決めつけられた。その思いこみの激しさは凄まじく、どう考えればよいのかわたしには手がかりさえなかった。
刃の上に立たされたような恐怖を感じた。目の前の人は怯えて後ずさっているのに、わたしは「違います。なぜわかってくれないんですか?」と問わずにはいられなかったから。狂人のように思われる──女の人はいまにも「きちがい!」と叫びそうだった。

社長のような人が来た。助けてもらえる!と思ったら、その人は白いドアの向こうに消えて、水を流す音が聞こえてきた。
ああ、聞きたくないんだ。
わたしを助けてはくれないんだ。

*夢は偉い、お見事。







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