思い出の曲の舞台はイスラエル─普通の会社員がパレスチナ問題に関する署名をするまで
思い出の曲の舞台はイスラエル
ディヴィッド・R・ホルジンガ作曲「春になって、王たちが戦いに出るに及んで」という曲があります。
おそらく吹奏楽に無縁の方には全く馴染みのない曲名だと思います。高校時代、吹奏楽コンクールの自由曲としてひと夏向き合った大変思い入れの深い曲のひとつです。コンクールで他校が演奏しているのを聞いたことがある元吹奏楽部員のかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
楽譜の販売サイトに書いてある商品情報を下記に引用します。この曲は、イスラエルのダビデ王の物語が描かれているのです。
↓こんな曲です。
2023年10月7日、ハマスがイスラエルを奇襲し、報復としてイスラエルの大規模な空爆が始まった日。私は学生時代以来めっきり減った楽器を演奏する機会に恵まれ、久しぶりの合奏を楽しんでいました。「ときどきこうやって楽器を吹くのは楽しいな!またやりたい!」と思いました。しかし、翌日以降目に飛び込んできたのは、あの思い出の曲の舞台と同じ名前を名乗る国によるジェノサイドのニュースでした。
私が「楽器楽しい!また演奏したい!」と思ったのと同じ瞬間、パレスチナで「おいしい!またこれ食べたい!」とか、「楽しい!またこの人と会いたい!」と思った人が、もう二度とその思いをかなえることができなくなったかもしれない。そう思うと、10/7の演奏会の思い出が場違いで残酷なもののように思えてしまいました。
何か悲惨なことが起こったとき、たまたま安全な場所にいた人は、自分が安全な場所にいることを恥じたり申し訳なく思うのではなく、周りの人から偽善だとか意識高いだとか揶揄されても勇気をもって自分にできることを探す方がいいだろうと思い直し、改めて「春になって、王たちが戦いに出るに及んで」という曲について調べ直してみました。
この曲は、デヴィッド・ホルジンガという作曲家によって1986年に作曲されました。ホルジンガは1945年生まれのアメリカ人です。ミズーリ州出身で、教会の専属作曲家をしていたこともあるそうです。
ここからはあくまで、私の感じたことであって事実と異なる可能性もあるのですが、ホロコーストが終わった年に生まれ、Davidと名付けられて、イスラエル建国から4度の中東戦争を若いころにアメリカ側から見た方なんだな……とちょっと見方が変わりました。私たちが演奏したのは、思っていた以上にイスラエルがヒロイックに描かれたプロパガンダっぽい曲だったのかもしれないな……と心がざわつきました。
好きな曲の題材になった物語(あえて物語と書きます。ダヴィデ王とイスラエル王国は、あくまで旧約聖書で存在したとされているからです。)を掲げた国が虐殺をしているのはなんだか「戦争はしてはいけない」「虐殺などもってのほか」的一般論を飛び越えて本当に嫌だと感じました。そこから、イスラエルが一刻も早く虐殺をやめるよう、調べものやちょっとした行動をしてみることにしました。
まずは本を読んでみた
まずは、あまりパレスチナの歴史に自信がなかったのであらためて1冊(にするつもりでしたが一気に2冊買ってしまい…)本を読むことにしました。
ユダヤ教徒の男の子とパレスチナに住むムスリムの男の子、そしてねこが会話しながらパレスチナ問題について教えてくれます。1巻目は旧約聖書~9.11まで、2巻目はイスラム国の台頭まで開設されます。2人の少年とねこにもちょっとした物語があり、パレスチナ問題を考えるのに素晴らしい構図になっています。「民族」という概念の脆弱さ、「民族」をもとにした隔離や差別の無意味さが際立つストーリーです。2人の少年は、「まんが 現代史」という作品にも登場するようなのですが、売っている場所が見つけられず入手できていません。
また、こちら↓も買って読み進めています。いまのところ、聖書の記述と発掘調査などで確実視されている事柄の区別がつくように念押ししながら話を進めてくれる感じが大変ありがたいです。
署名もやってみた
本でパレスチナ問題の概要を掴んだところで、いろいろ自分にできることを調べてみました。特に参考にさせていただいたのがこちらです。日本からできる行動をまとめてくださっています。
署名をふたつ、してみました。上記スプレッドシートから見つけたものです。このふたつ以外はほとんどchange.orgというサイトかGoogleフォーム、もしくは海外のサイトでした。Googleフォームは言わずもがな、change.orgも結構簡単にだれでも署名を立ち上げられるようです。ちょっとまだchange.orgや各署名の主催者が安全なものか自分で調べ切れておらず……とりあえずアムネスティのふたつを選んでみました。
3月28日、UNRWAの事務局長が来日、上川外相と会談し、現在支援再開に向けた調整が進んでいます。あとひと押し、ふたつ目に載せたリンク先で署名をしていただくと力になるかもしれません。
4/2追記:上川外相が、UNRWAへの資金拠出再開を発表しました!なので、ひとつ目の岸田首相に即時停戦をもとめる署名がおすすめです!
わたしは今日上川外相宛に投函しようと思っていたハガキを慌てて書き直しました。
周りの人とパレスチナについて話すために
募金もしたいな、と思っていろいろ調べてみたところ、売り上げの一部を寄付に回してくれる素敵な商品をいくつか見つけたので買いました。身につけるものを買えば、より多くの人とパレスチナについて話すきっかけになるかもしれないと思ったからです。
最初に買ったのは、小泉さよさんによる猫柄の缶バッジ。いろいろなところで売っていました。原価を除く売上のすべてが、UNRWA(国際パレスチナ難民救済事業機関)の緊急支援に寄付されます。このリンクを貼り付けた段階で、↓のサイトでは在庫がありました。
私は前述した「まんが パレスチナ問題」と一緒に、下記サイトで買いました。とっても発送が早くありがたかったです。今はないみたい……ネコちゃんの写真がたくさんの素敵なサイトです。こちらのサイトは売上の10%を猫の保護活動に寄付しているんだとか。
いまは毎日使う通勤リュックにつけています。プライベートで出かけるときにトートバッグに付け替えたりもしています。
それから、アクセサリーも買いました。↓は日月堂さんというところのハンドメイドアクセサリー。
チェコビーズで、パレスチナの花ギルボア・アイリスをイメージして作られています。私は音楽やミュージカルが好きなので、スメタナの交響詩「我が祖国」やミュージカル「エリザベート」から、チェコにはハプスブルク帝国下で自分たちの言葉を守ろうとしたイメージをもっています。いま同じように自分たちが住んでいた土地を無理やり奪われて苦しんでいるパレスチナの人々のことを私自身が思い起こすのにいいなと思い買いました。
(※絵画、音楽、物語などを歴史と混同するのはよくないことです。あくまで、私自身が見聞きしたことのあるものの引き出しの中にある「アイデンティティを奪われ安心な暮らしが脅かされる人」の存在を思い出すためにスメタナやエリザベートを挙げています。)
(※実際のヨーロッパ各国は、パレスチナ問題の対応について、批判されて然るべき点がとても多いです。過去の反ユダヤ主義からイスラエルの虐殺を批判できないなど、本来の意味での反省とは到底思えない行動もみられます。ヨーロッパ各国の対応も注視していきたいと思います)
購入代金のうち800円を【パレスチナ緊急支援 「天井のない監獄」にいるガザ地区の人々のために】(特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン)に寄付してくださり、Yahoo募金の寄付完了ページのプリントアウトも一緒に送ってくださいました。能登地震など、ほかのチャリティも熱心にされているようでした。
また、こちらも購入しました。スイカと鍵というパレスチナのモチーフです。会話のきっかけにとても良さそうです。材料などの経費を除いた50%を日本国際ボランティアセンター(JVC)へ寄付してもらえます。
こちらは、イヤリングと一緒に岸田首相や上川外相宛のハガキが同封されていました。もちろん、即時停戦を求める内容です。責任を持って投函しようと思います。また、パレスチナの状況を簡単にまとめたメモも同封してくださっていました。ハガキとメモはこちらのもののようです。
https://x.com/asadoriq/status/1774450466174472414?s=46&t=aTJef_T_7XrQSzTH9B9SnA
これらの内容は、全て高校時代の友だちともつながっているInstagramにも載せてみました。吹奏楽部で一緒にダヴィデ王の曲を演奏した人たちに知ってほしいなと思いました。これからも、実際に会った友達や知り合いと繋がっているSNSでもこういう話をしていこうと思います。
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