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2023年個人的観劇アワード

 ※「観劇アワード」としましたが、今年見た興行のなかで良かったものを選びました。アイスショーやコンサートなど、演劇ではない形式のものも入っています。

 ※作品名として挙げるのは今年初めて観た作品に限ろうと思います。そうすると、ノートルダムの鐘やハリーポッターと呪いの子、オペラ座の怪人などが除外されます。

※作品名を挙げた順番は順位ではありません。入賞作品をとくに理由なく並べました。

見た作品一覧👇

人に薦めたい作品部門

浅田真央アイスショー「BEYOND」


 日本中をなんども沸かせたあの浅田真央さんが、あの輝かしくドラマチックな選手生活に飽き足らず新たな境地を開拓している恐るべきアイスショー。ショーの内容から、会場の規模感、値段設定、公演回数、グッズなにもかもが完璧でした。テレビの中でメダルを掲げてはにかむかわいい"真央ちゃん"しか知らない人に、「妥協を許さない座長」「ファムファタール」「包容力溢れる日本中を明るくする代表選手」……といったさまざまな面を見せつけにきました。

Death Takes A Holiday


 現体制の月組初の、待望の海外ミュージカル。日本初演作品。DTAH出演者全員の歌唱力、パフォーマンス力が前作からぐんっと底上げされていて度肝を抜かれました。とくにトップ娘役の海乃美月さん、月組を支える男役の夢奈瑠音さん、若手娘役のディーヴァ白河りりさんが素晴らしかったです。現トップコンビが退団する前にこんな作品を見られて本当によかった。そして、初演が素晴らしかったからこそ宝塚以外でもやって欲しい!あの人にこの役をやって欲しい!とたくさん妄想しました。大好きな月組を人に見てもらう機会があったら、まずはこの作品をすすめたいと思いました。

Dream Girls


 曲と歌唱が今年No.1。テーマ、ストーリーも、ああよく今日本に持ってきてくださいました、という感じでした。骨太な群像劇で、ドリームズのメンバー以外の心情もガツンと描かれ、saraさんや内海啓貴さんといった若手の方のパフォーマンスも全く埋もれていなくて素晴らしかったです。また、この作品が上演されていた時期に行われたグラミー賞で、映画のディーナ役であるビヨンセがアルバム賞を逃した出来事もあり、いっそうこの時期に出会った作品として強烈に印象に残りました。「〇〇年代が舞台なのにいまに重なるところがあって……」という歴史物の醍醐味と、生で歌を浴びるミュージカルの醍醐味のマリアージュといった感じで、まさに人に勧めたい作品でした。

Moulin Rouge!

 劇場の前に着いた瞬間から劇場を出るまで、作品に浸りまくれる空間でした。チケットをとって劇場に行って物販見てトイレ行って席に座るまでの動きが作業にすらなってしまう観劇の日もあるのに、ムーランルージュの劇場での体験は1から10まで全部夢の世界のようでした。チケット代は高かったけど……。中高生の頃、洋画や洋楽や海外セレブにかぶれていた時期があるので、映画の記憶やケイティペリーやリアーナを聴いてた記憶がブワッと蘇ってきて、ミュージカル「ムーランルージュ」を見ているのか、それともショークラブのムーランルージュの客席に座っているのかわからない本物の没入感がありました。普段ミュージカルを見ない音楽ファン、映画ファンが1人でも多くこの作品に出会えますように……!映画ファンとしてはサティーンもクリスチャンもちょっとイメージとは違う点もあったのですが、ミュージカルのサティーンの包容力溢れる個性も素敵でした。映画のOne Day I'll Fly Awayも聴きたかったな……。ミュージカルでFireworkに該当するシーンの曲、ぜひミュージカルしか見てない方に聞いてほしいです。

WICKED

 ムーランルージュとは対極の、パフォーマンスを浴びるという意味ではなく物語に惹きつけられるという意味での没入感がある作品でした。「考えさせられる」という言葉は陳腐であまり好きではないのですが、まさに脳みそが回りっぱなしになる作品です。宝塚のショーやディズニーランドのショー、ムーランルージュやクレイジーフォーユーといったパフォーマンス重視の作品も好きなのですが、ウィキッドのような作品を見た時からしか感じられない満足感と少しの疲労感が心地よかったです。エンタメに含まれるメッセージ性に過剰に反応し、「純粋に楽しみたい」と言う人を見るとやるせない気持ちになることがよくあります。ウィキッドのような、楽しくて厳しい作品に衝撃を受けて、エンタメに含まれるメッセージ性を受け取るときの脳みそがビリビリする感じをいろんな人に味わってほしいです。

自分が見れて良かったと思った部門

新作歌舞伎「刀剣乱舞」

 いつかは歌舞伎になるだろうと多くの人に思われて、期待されていたであろう刀剣乱舞が、最高の形で歌舞伎になりました。歌舞伎も刀剣乱舞も好きで良かったと心から思わせてくれた作品です。すでに多くの派生作品をもつIPが、強烈な個性と愛を与えられて新しく生まれてきた瞬間を目撃できて本当に嬉しかったです。どちらも人から人へ大切に伝えられてきた刀剣と歌舞伎の出会い。歌舞伎が数多あるエンタメの中で生き残っていけるよう込められた祈り。こんな素晴らしいものを初日に見られたなんて。三日月宗近が生まれる瞬間から始まるとは思わなかったよね……。全ての瞬間が絵巻のような美しさでした。

ライオンキング

 自分の誕生日とおなじ1998年12月に日本公演をスタートさせたライオンキングが25周年を迎えるタイミングで観劇しました。人間の体と人工の機構で表現される大自然。アイディア、音楽、作品そのものも素晴らしかったのですが、なによりも私と同世代の作品に込められたチャレンジングな姿勢が誇らしかったです。非西洋文化への探究心と舞台に立つ者の多様性へのたしかな一歩が女性の演出家によって表現された作品。最も有名で最も長命なミュージカルのひとつ、「ライオンキング」にはこんな一面もあるのだと知れて嬉しかったです。

新作歌舞伎「ファイナルファンタジーⅩ」

 歌舞伎役者という仕事の重さ、尊さ、厳しさを感じ、人間としての尾上菊之助さんのかっこよさに惚れ惚れしました。めちゃくちゃファンの多い「お父さんを殺す話」を、歌舞伎の超名門の御曹司がやっちゃうんですよ!?やばいでしょ!?刀剣乱舞とこの2作で、歌舞伎役者のさまざまな立場を知りました。後ろ盾のないなか努力を重ねた刀剣男士陣、お弟子さんと呼ばれる立場の役者に大役を任せる御曹司。こんな言い方も失礼かも知れませんが、これだけの名門の御曹司であれば、ぶっちゃけ与えられたものやこれまでみんながやってきたことを一定以上こなせばそこそこ不足なく生きていけるはずなのに、ファイナルファンタジーを持ってきてお弟子さんを連れてきて、後ろ指をさされる可能性が高いことをやってのけてしまうのです。これよりかっこいい人、いる!?!?!?しかも出演者陣もファンも楽しそうでしたよね公演期間……。楽しかったよわたしも……!

セトウツミ

 大好きな役者の確かな力量を感じた一作です。誤解してほしくないのですが、心から大好きで応援している役者ではあるけれど、最近グランドミュージカルを手がける会社が彼を使ってくれつつあるのは、"そこそこ歌を歌えてグッズが売れて使いやすいから"でもあるのかもと思っていました。一作前のキングダムで、同世代の役者が主演を固める中、華やかではない役で確かなチャーミングさ、愛嬌をもって舞台を引き締めていた彼の力量を、今作で確信しました。歌に頼らず、面白い作品を面白く作れる確かな力量。題材を彼ら自身が選び、大手興行主が実現させてくれたという事実。昨年くらいから、破竹の勢いで活躍の場を広げる推しを追いかけるのが楽しく、「彼ががんばっていることがわかるから私も頑張れる」という大変理想的で幸せな応援をしていたのですが、さらに嬉しい裏付けがついたような気持ちでした。ただ、セトウツミというあまりにも舞台向きなこの作品が、彼ら2人のファンばかりに見届けられていたことに少しもったいなさと歯痒さを感じました。この作品がいろんな二人組に演じ続けられていってほしいし、ストレートプレイの客席に原作ファンを連れてくる一作になってほしいと思いました。

楽曲部門

 ※作品部門に入れた作品以外からの曲を選びました。作品部門にいれた作品の曲だと、One Night Only、Step into the Bad Side、Crazy Rolling、Only Girl (in a Material World)、For Good……と選べなくなりました。

My Petersburg 「アナスタシア」by海宝直人さん、相葉裕樹さん、内海啓貴さん

 最初に海宝ディマの圧倒的なMy Petersburgを聴いてしまったので、これよりすごいものって見れるのかな?と正直思ってしまいました。見れたんですよね、それが。3人のディマはそれぞれのディマだったんです。等身大の海宝ディマ、少女漫画のような相葉ディマ、反骨心が最も見える内海ディマ。この曲に個性がすごくよく出ていました。歌の話から少しずれますが、わたしは内海×木下のトランクキスが1番好きです。役者さん自身の歳もちかく、等身大にぶつかり合いながらも、気品を失わないプリンセスと光り輝くプリンセスを心から慕う甲斐甲斐しいディマの構図をスッと見せてくれる感じがすごく良かったです。ふたりのトランクキスは、エリザベス1世が海賊ドレークを叙勲する有名な絵画のように見えて本当に素敵でした。

時が来た 「ジキルとハイド」by石丸幹二さん、柿澤勇人さん

 このふたりのジキル/ハイドも、全然個性が違って本当に楽しく、両方見られてよかった……と思いました。個人的には柿澤ジキル/ハイドの青臭く自信過剰で身を滅ぼしてしまうような猪突猛進さが好きでした。エマの父の気持ちになってヤキモキしてしまうような個性がありました。どちらの時が来たも、今年1番耳が幸せで、ああ、音楽としても芝居としても楽しめる曲というのはこういうことか……と思いました。石丸ジキル/ハイドに間に合って本当に良かったです。石丸さんは、時が来たも素晴らしかったですが、Aliveもとっても好きでした。長い音を譜割を少し無視して長く伸ばし、そのあと勢いをつけて早く歌ったり、というアレンジが素晴らしく、歯止めの効かないハイドそのものでした。

World Burn 「ミーンガールズ」by石田ニコルさん

 パーティーや教室で個性的な高校生が比較的大人数舞台にいる中で歌われる曲が多い本編の中で異色の一曲です。踊らず、舞台の中心に立ち、ピンクも赤もない白と黒の中で1人歌い始める曲。舞台が女王・レジーナだけのものになります。石田ニコルさんの圧倒的な迫力に引き込まれました。石田さんはファントムのカルロッタも圧倒的だったのですが、初めて石田さんのソロ歌唱に鳥肌がたったこの曲をこちらに入れたいと思います。

歓喜の歌 「フリューゲル〜君がくれた翼〜」by夢奈瑠音さんほか月組の皆さん

 フリューゲル/万華鏡百景色を「見て良かった作品部門」に入れようと思ったのですが、あの時期はあまりに宝塚歌劇団の状況に心を支配された状態で見たので、作品を良いと思ったのか何なのかよく分からず、あちらに入れることができませんでした。ですが、歓喜の歌のシーンが素晴らしかったことは確かだと感じているのでここに含めます。組子のほとんどが舞台に上がる中、誰もが知っている歴史的事件のきっかけを、誰もが知っている曲のアカペラで歌い始める夢奈瑠音さんの迫力。そこから続く、「ああ、盆って、東西の壁崩壊を両面から見せるためにあったのか」とまで思わせるほど圧巻のパフォーマンス。本当に素晴らしい公演でした。ショーも素晴らしかったですし、芝居の演出家からショーの演出家や組子ひとりひとりに向けられたやさしい期待も素晴らしかったです。改めて、宝塚歌劇団の公演数が減ったり、チケット代が上がっても構わないので、組子一人一人が健康に持続可能な形で芸事に邁進できる環境を整えてほしいです。

You'll Be in My Heart ディズニーブロードウェイヒッツ by Josh Strickland

 コンサートで聴いた曲なので他のミュージカルナンバーと一緒にここに含めるか迷ったのですが、とにかくジョシュ・ストリックランドの甘い美しい歌声の虜になり、コンサート以降なんどもこの曲を聴きました。いつか必ずターザンのミュージカルをブロードウェイで見ようと思いました。

出演者部門

田村芽実さん
ミーンガールズ、ダ・ポンテ、赤と黒

 田村さんを本格的に追いかけ始めて見た3作品、あまりにもタイプが違いすぎました。いきなりこんなに振り幅を見せてくれるなんて。田村さんの芝居からは、役を演じるために芝居を作っているのではなく、もっと根本的なところに田村さんがやりたいことや言いたいことがあるように感じられます。本当に田村さんが持っている怒りや悲しみや幸せを勝手に見せてもらったような気になります。心の動かされ方が違うと感じる時があります。

尾上丑之助さん
遠山桜天保日記、新作歌舞伎FFⅩ、連獅子、マハーバーラタ戦記

 9歳にして原作ファンの多いゲームの肝となるキャラクター二役を背負い、歌舞伎の代表的な舞踊を背負い……。そのすべてが子役の芝居の範疇を超えたものでした。大人顔負けの責任感と芝居心を感じて末恐ろしいです。「歌舞伎のお家に生まれたから」を超えて、いろいろな好きなもの面白いものに出会った上で紡がれる丑之助さんの芝居を見てみたいと、おこがましくも思ってしまいます。

真彩希帆さん
ジキルとハイド、ファントム、LUPIN

 宝塚時代を生で見たことがないのですが、だいきほ時代の人気から、歌の人だと思っていました。歌だけの人ではないんですね……。ルーシーの、年端も行かないうちに人気娼婦になってしまった、なるしかなかった芝居が細かくてつらかったです。ベラドーヴァの芝居も胸に迫るものがありました。ルパンの冒頭の太い声で語られる枝の伝説も一気に引き込まれました。ただ、これだけの歌唱力と表現力を、ぜひThe娘役らしい役以外でもっと見たいです。ちょっと白いワンピースが似合うプリンセス的な役が多すぎないか……

中村莟玉さん
傾城反魂香、連獅子、大杯觴酒戦強者、お祭り、寿曽我対面、達陀、新作歌舞伎刀剣乱舞、夏祭浪花鑑

 すっきりとした若武者、可憐な姫、町娘……。歌舞伎の基本的なプレゼンテーションのような役を今年莟玉さんにたくさん見せていただきました。歌舞伎のおもしろさ、歌舞伎役者の多彩さを教えてくれました。歌舞伎にこんなにハマったのは彼のおかげです。すごくすごく楽しかったです。

牧島輝さん
キングダム

 一瞬の芝居が最も強烈だった方です。秦王として、成きょうとの戦いに向かう仲間を鼓舞する瞬間、舞台の真ん中の高いところで、笑っていらっしゃったんですよね……。すごくないですか?初めて中華を統一した王としての芝居、そうきた!?じつは前世マジの始皇帝!?ってくらいの迫力でした。

中村太郎さん
魔法使いの約束 祝祭シリーズPart2

 過去3作を見て、そこそこ役者の個性が出ていて2.5次元としての再現度がまばらなまほステの中でも、どちらかというと再現度が高い方だなと思って好感を持っていました。声と表情がとても素敵な方です。実はまほステのチケットが取りにくく、チケット欲しさにSUIファンクラブに入会したのですが、そこで中村さんの地声と素のキャラを知りました。え……!?声全然違うじゃん……!?あの芝居、思ってたよりめちゃくちゃ"作られてた"んだな!?衝撃でした。これからもっと注目したいと思います!

舞空瞳さん、有沙瞳さん
ディミトリ/ジャガービート、1789

 おふたり、選べませんでした。ルスダンの少女時代〜壮年期の芝居が圧倒的で、エリザベートできるじゃん!!という感じだった舞空さんと、自分の寂しさを埋めるためのギャンブルや恋愛に夢中な様子〜民が共和国に向けて動き始めた国の君主として覚悟を決めた様子の芝居が素晴らしかったおふたり。おふたりが同じ組で、同じ舞台で、並んでいたからこそ生まれていた素晴らしさでもあるんじゃないかと思いました。私が見たのはたった4作ではありますが、おふたりが並ぶ星組を見られて良かったです。



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