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ショート 小説 余震と君と揺れるぼく

時に想いは共鳴する。またそれをシンクロニティと呼んだりする。

君は福島からやってきた。そう震災から逃れる為、また新しい可能性の為に。
そして不幸なことに熊本でも震災にあった。
それは君には不幸なことでも僕には幸福なことだった。それは君に出会えたからだ。

彼女は福島でソフトボールやバスケットが好きなスポーティーな女の子だった。
なんにでも興味の強い子で、常に笑顔も絶えなかった。
その笑顔には影もあった。それは片親の母の存在と一緒に暮らしたお祖母さんのこと。
金銭面で苦労をして、学校に通いながらアルバイトに更ける日々。

その苦労の最中、福島地震に津波、メルトダウンが起こった。彼女は一時、東京に避難した。
そこで、あるスポーツのインストラクターに出逢う。
熊本出身のヨガインストラクターだ。その日の出会いから彼女は熊本にやってきた。スポーツジムでトレーニング指導とヨガインストラクターをしてきた。

僕との出会いは、他愛もないきっかけだった。
本震後、僕の自宅隣のアパートに君がいた。当然君は地元でなく頼りもなかった。
僕は君を見つけると、大丈夫ですか?と声をかけた。
君は、大丈夫です!でも避難した方がいいみたいですね!と落ち着いた口調で返答した。それから、僕たちは一緒に行動することになった。

最初の避難生活は、小学校の体育館で非指定避難所だった。だから食料も配給が遅れるので、若い男女で指定配給所までとりに行った。
そしてその大量の食材を使って、気の遠くなる食事を作った。そして君と色々な事を話した。福島のことや、生い立ちや、好きな食べ物、音楽、スポーツのこと。そしてくだらないジョークを言いあった。
そして不思議なことに僕たちの趣味嗜好や価値観はとても似ていた。
まるでこうなることを暗示されていたように僕たちは惹かれあい、僕たちの魂は共鳴していった。

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