詩 ソクラテスな老人

土曜日の雑踏
私は仕事で帰り道
1月下旬の東北の風
寒々空にはUFOか流れ星
片手に酒は詩人の作法
創作は奇人の仕事だと
大人になれば理解する
聖人になんてなれない
狂った冒険者になりたい
そのような妄想と幻想に
ただ虚しく溜め息をつく
そんな時は北の酒場に放浪する
席に着き熱燗を頼む
暫くすると隣の席から声が響く
そこには紳士な老人が若者に囲まれていた
スーツを着こなしキャスケットを被る
賢者のような眼光におおらかな空気を纏う
魂の振動数の高いオーラに息を飲んだ
その時私は思った
私は漢なのだ
強くありたいのだ
父のように戦士のように
革命家のようにモーセのように
妻を愛し情熱と理想を燃やす存在を
望んで挑みたいのだ
その紳士は優雅に酒を飲み
若者に語りかける
それはエロ爺ではなく
若造に議論をふるう
乙女は瞳を輝きのぞく
時に聡明な女性が議論をし
全てに答える姿はまるで
ソクラテスな老人だ
嗚呼老人よ希望を与えないでくれ
人は絶望の果てに死を受け入れる
そこには談笑があり成長がある
新しい時代は彼らが作っていくだろう
私はどうだろう
取り残されエロ爺になるのだろうか
いやならないなれない
孤独なる詩人は老人こそ相応しい
私は死人のように生きる
まるで光が当たらない場所で
しかし陰ながら賢者や勇敢な若者を応援しよう
エールをおくり静寂なる応援歌をうたおう
私だって理想はあるのだ
仕事の中で善行を積み
生活の狭間で知恵を育てよう
無視や罵倒は気にせず
助けを求める人に耳を傾けよう
凡人には時間が足りない
叱られながら前進するしかない
うつ病は働きながら治し
後輩の悩みはその日に聞こう
私は紳士なる老人に恋い焦がれながら
そう思ったのである


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