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当たり前だけど芸事は暗記と演技

講談会で


2024.3.8
先日「講談師 神田愛山芸歴50周年の会~AIZAN50~」に思わずチケットがとれたので行ってきました。
実は 神田伯山の講談が大好きですが、独演会のチケットはいつも取れず、神田伯山オフィシャルサイトを見て この会に申し込んだら運良くチケット取れた次第。
ですので、主役は古稀を迎えた神田愛山先生。主催は神田伯山。ゲストは同世代で仲のよい講談師  宝井琴調 と 落語家  瀧川鯉昇。  
開口一番は 伯山の3番弟子 神田若之丞さんでした。

講談は 寄席や「伯山ティービィー」というYoutubeで観たりしているぐらいで詳しくはないですが、やっぱり6代目神田伯山が現れてからは講談界が変わったのは確かだと思います。

落語も楽しくて江戸の風情が感じられて大好きですが、講談は歴史物なので(事実かどうかは別として)ハラハラドキドキのまた違った面白さがあります。

会場パネル

クライマックスの舞台は神田愛山の読み物ふたつ。
まず 狂歌師で有名な蜀山人(太田南畝)の話。
まくらでは 普通の庶民がつくった短歌やサラリーマン川柳、シルバー川柳を流れるように披露し大笑いを誘いながら蜀山人の話にもっていく。
その短歌や川柳が愛山先生の口からスラスラ出てくること出てること。
これには驚いた。まあ何度も話していれば記憶も定着して なんてことないのでしょうが、「よくこんなに憶えてるな~」が私の感想。
それにまた 話の間がうまい。もともと落語家志望であったそうで、いい間の取り方には納得でした。

最後は「真田の入城」という演目。
関ケ原の合戦で家康ににらまれた真田幸村が、気が違った振りをして欺き、大阪城に入城するまでの読み物。
長々とした武将の名が出てくるし、途中難しい言葉も出てくる。これを 抑揚をつけて勇ましく語る愛山先生。
確かに何百回と読まれただろう 読み物だろうが、すべての言葉を自分の中で消化して語るその記憶力は、途中で絶句できない講談師の意地のようなものも感じました。

繰り返し覚える修行

芸人、芸事はまずは覚えないと仕事にならないはずです。浪曲も歌舞伎も歌手も俳優もその他 お客様を前にして芸を披露する仕事は
まず暗記。そしてそれに自分の色をつけて
演技して自分の芸にしていく。

講談はさまざまな話のジャンルがありますが、軍記物と言ってまず教わるのが「三方ケ原軍記」だそうです。
「頃は元亀(げんき)三年壬申歳(みずのえさるどし)十月十四日……」と五七調で滔々と語られるもの。はっきり言ってよくわからない言葉がつらつらと出てきます。武将の人名がたくさん。
これは何度も何度も暗記するのでしょうね。

稽古や覚え方などは神田伯山が松之丞時代に書いた
「神田松之丞  講談入門  河出書房新社」に
詳しく書いてあります。また松之丞時代の
たくさんの持ネタの解説も載ってます。

暗記とは反復するのみ。自分なりの覚え方がだんだんと身に付いてくるのでしょう。

以前、「天才!成功する人々の法則
マルコム·グラッドウェル 著
勝間和代 訳   講談社」を読んだ時、
『10000時間の法則』 という言葉が心に残っています。才能に関係なく練習量を10000時間やると本物になる、という法則です。

毎日1時間やれば10000日 つまり27年。
3時間やれば9年  5時間やれば5年。
27年は気が遠くなるけど9年、5年なら
なんだかやれないこともないように思えてくるのが不思議です。

同じことばかり暗記するのではなく 、ネタを増やしていきながら確実に覚えていかなければならないプロの道。
お客を楽しませるのには、覚えて覚えてそれに自分の演技が加わり、そしてまた覚えて。

毎日毎日の繰り返しで10000時間はクリアしてるのではないか。歳を重ねるごとに覚えるコツも早くなるだろうし、演技と一体になり体が覚えるということもあるでしょう。

落語や講談の寄席では、その日のお客の様子を見て舞台に上がる直前に演目を決めることが普通ですから、自分のネタは全て頭に入っていなければならない。

私が 舞台に立つ人を見るたびに、素晴らしいと思ったり元気をもらったりするのは、本番のために地道に記憶を怠らず自身の芸をつくっていくその努力をひしひしと感じるからだと思います。

毎日地道に努力。10000時間の法則。
そんなことを感慨深く感じた 今回の講談の会でした。

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