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ガハハ先生ー生態系サービスの見せる化#3/4

〇生態系サービスの枠組を活用する効果は

ガハハ:デモネさんが紹介してくれた投資や、なるほど君が報告してくれた補助金は、広い意味では、いずれもPES(Payment for Ecosystem Services(生態系サービスへの支払い))に該当するんだ。私は、官民を越えてシームレスな形でデータの見せる化が進むようになった転機は、農業・農村分野に生態系サービスの枠組が本格的に持ち込まれた20年ほど前にさかのぼると考えているんだ。ところで、なるほど君、生態系サービスって、どんな概念だったかな。

なるほど:2005年に発表された「ミレニアム生態系評価」での定義では、「生態系から人間が受け取る便益」とされています。定義については、今も国際的に議論が続いてますが、この時には4種類のサービスから構成されていました。「供給サービス」は、食料、繊維、燃料などの供給。「調整サービス」は、大気、水の調節、土壌浸食の抑制など。「文化的サービス」は、精神的・宗教的価値、教育的価値、観光・リクリエーションなど。「基盤サービス」は、土壌生成、光合成などほかの生態系サービスの供給を支えるもの、といった感じです。

デモネ:もともと農業・農村に限ったものではなく、生態系全般に関する概念なので、農業が環境に負荷をかけていることや、持続性確保のために農業・農村が提供する価値を総合的に評価・分析して「上手く折り合いをつける」必要があることなどについて、説明しやすいコンセプトですよね。昔のアメリカ農業の例は、供給サービスと調整サービス・基盤サービスのトレードオフの事例と解釈できます。2005年以降、自然科学、社会科学それぞれの分野で国際的に調査研究が進んで成果の蓄積があったことも、価値の評価・分析を具体化させていく上でアドバンテージになったのかしら。

ガハハ:そのとおり。生態系サービスの枠組を使って、農業・農村の提供する価値を見せることで、自然科学・社会科学の研究成果である様々な技術を用いた評価・分析が可能になり、ビジネス面や政策面でも農業・農村の持続性を高めるアプローチが発展して来たと言えるだろう。ところで、二人は、この生態系サービスの見せる化の現状について何か気になることはないかい。昔は、見せる化が難しくて、市場で評価されず、結果として毀損されがちだった価値が、部分的とは言え、評価されるようになっている。また、測定・評価の技術が進化して、科学的なアプローチで持続性の高い農業技術もどんどん実装している。万々歳というところかな。

【#4に続く】

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