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1992年冬 大戦略おしっこ事件

桃鉄をやるとケンカになる。
こんなに友達や家族とケンカをしたゲームはほかに無い。

しかし、ゲームが原因のケンカで、最もひどかったのは、スーファミの大戦略エキスパートでのケンカだ。友達の家を出入り禁止になった。小学5年の冬の出来事だ。

その当時スーファミをもっている友達(なおき君)の家に4人くらい集まって大戦略をやるのが習慣になっていたが、なおき君の弟も、ルールはあんまりよく知らないがやってみたいということで、参加することとなった。

なおき君の弟は、なぜか皆からさん付けで呼ばれていた。本名を出すと申し訳ないので、ここでは仮名で、もれぞうさんとしておく。しかしなぜ、くんではなくさんだったのか?誰にもわからない。

ターンが進むごとに各プレーヤーが戦車とか歩兵とかの部隊をちょこちょこと動かしていき、敵の部隊を蹴散らして都市を占領したら勝ちのゲームだ。他のプレイヤーの部隊がどこにいるのかは、偵察機を飛ばしたその周辺だけしか見えない。

全員同じ部屋にいると、どこに部隊を配置しているかまるわかりになっておもしろさが半減するので、一人がプレイしているときは、他の人は部屋から出て待っていることになった。

待つ間は庭でボールをぶつけあったり、ダッシュでお菓子を買いに行ったりしながら、自分のターンが来るのを待つ。

各自のターンがくると、戦略を練って部隊を前進させて、一通り動かし終わったら、自分のターンを終わらせて、次のプレーヤーを呼びに行く。という流れだったが、なぜか他のプレーヤーのターンを飛ばして、ひとりだけ2ターン連続で動かしているらしいことに気づく。どうやらもれぞうさんっぽい。

頭にきた別の友達が、仲間内のルールで、絶対使ったらダメにしていた核爆弾をもれぞうさんの部隊に打ち込んで、全てを破壊してしまった。
核爆弾は、広範囲を都市ごと全部壊してしまう、ゲームバランスを全部無視した兵器だ。

そこから惨劇がはじまる。
もれぞうさん、泣き叫んで暴れまわり、トイレへダッシュ。

便器ではなく床全体におしっこをまき散らしてきたらしい。
直後知らずにトイレに行った私は、おしっこを踏んで、びっくりしてそのまま廊下に出てしまい、濡れた足跡で廊下とゲーム部屋までびちょびちょにしてしまった。

拭き取る間もなくお母さんが出てきて、全員追い出され、靴下がおしっこまみれのまま、靴のかかとをつぶしながら急いで玄関を出た。寒さ厳しい氷点下の雪国だったので、家に帰るまで足元が凍りそうだったのをおぼえている。ぎりぎり凍傷にはならなかったが。
(塩水のほうが真水より凍りにくくなるらしい)

そして、その家で遊ぶのは永久に禁止となった。

お母さんはどうやら家庭内でのゲームも禁止にしたらしく、結果子供たち(なおき君ともれぞうさん)の成績はぐんぐん上がり、県内でトップの子が受験でいくような中学校に合格。ゲームをしていたころの友達は、全然そんな人間じゃなかったのに。お母さんにとっては大満足な結果となった。

ああなる前になんとかできなかったのか?と子供のころは何度も悩んだ。しかし、もれぞうさんがおしっこを撒く選択をしたおかげで、友達は受験を経て社会で活躍していくきっかけをつかんだのだから、あれでよかったんだと思う。

しかしあのときトイレの床全部おしっこで、スリッパのかかとの部分まで浸っていたが、一人の人間からあの量が出るのはおかしい。トイレの床が傾いていたのか、よほど我慢していたのだろう。

#あの選択をしたから


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