見出し画像

【詩】犬たちのとまどい


犬たちがとまどっている
同じような音声を発する
動物を見るが
その姿形すがたかたちはまるで違う
それぞれが異なる図体ずうたい 異なる体毛の色
異なる足の長さや尾の長さで
各々おのおのが鳴いてみて
通じるのか
その声には反応する

こんなに違っているのに
同じ「犬」と呼ばれ
こんなに違った人生なのに
散歩の途中なのだ

どんな風にぎ合えば
知り合えるのか
いぶかしげに振る舞うすべ
しかし真実とは程遠い
容赦ない姿だ
姿形すがたかたちがどれほど違っても
呼び合ってしまえば
閉ざされたひとつの円環のように
生臭なまぐさい息をぎ合える

無意味に走り回るものもいる
命じられた動作に
意義はなくとも
陽の光の中で
戯れる犬たち 人たち

自ら選んだ素顔ではない
そのままえさを分け合う人々よ
自らの姿におびえるがいい
知ってか知らずか
それこそが思想であり
哲学であり
それこそが反思想を生み
反哲学を生み出す 
とまどうままに吠え合えば
反連帯が反々連帯となりうるのだ

そして ありがとうありがとう
などと言い合って
すれ違うあからさまな恥辱
尻の匂いをぎ合うほどにも
確かではないはずだ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?