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【詩】無題

眼の見えない聴衆がいる
耳の聞こえない見物人がいる
遥か近くの彼方を見るために
何かになろうとする

何一つ備わっていない私は
つまらない人間となる

生まれて生きていることが
存在の傷であるように
言葉が去ってゆく

何故、常識的に過ごそうとしてしまうのか
そうじゃないほうが楽しいに決まってるのに
今に近い時間から始めて
死に近づきやすいように

言葉はいつも
死と共にあって
私から去ってゆくばかり

だから捉えようとする
生きること

それはあなたであったり
君であったり

はかなくも確実で
望むものは曖昧でも
息をととのえ
目を見張り
耳を澄まして
すべての震えを感じるように

例えばそれは
一日という積み木を
重ねてみることとか
たっぷりと水を含んだスポンジを
握りつぶし激情のように絞り出す

訳あって生きてはいるが
ごくごくありきたりのこと
見えないものは見えない
聞こえないものは聞こえない

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