本の紹介⑦瀬尾まいこ

瀬尾まいこ「その扉をたたく音」
発行2023年11月25日

自分の心を揺さぶる出来事や、人生を大きく変える出来事は意外と身近にあるのかもしれない。

見えているはずなのに、見ようとしていない。
逃げてしまっている。

そんなモノや、出来事が、実は自分を目覚めさせるきっかけをくれるかもしれない。

その扉はどこにあるのか、

実はいつも目の前にあるのかもしれない扉は、いつ見えてくるのだろうか。

いつその存在に気づけるのだろうか。

いつまでも無邪気ではいられない。いつまでもしたいことだけをする人生ではいられない。

現在、大人になってからできた夢(先生になる!)に向かっている最中の私には刺さるものがありました。

主人公である宮路は「ぼんくら」と呼ばれ、周りには、音楽をしているともはっきりといえない29歳。

宮路は30歳を迎えるまでは、
【まだ猶予はある。】(本文引用)と意地を張っている。

【みんながほしいとよく言う自分の時間が、俺には嫌になる程目の前にある。そう悪い毎日じゃないはずだ。】(本文引用)そんなことを自分に言い聞かせながら。

また、いつまでも、高校の時の思い出を懐かしく想い、今でもその時に戻れると思いながら。

そして、【どきどきしてはがっかりして、苦しくなっては心が弾んで。緊張に期待に絶望に希望。俺の中の感情は、めまぐるしく動いていた。あの時は毎日が楽しくてしかたがなかった。】(本文引用)そんな思い出に浸りながら。

でも、分かってはいる。そんな生活を送っていても、未来には、
【空っぽな自分が見えるだけだ。】(本文引用)ということが。

30歳というタイムリミットまでズルズルと何をするわけでもなく過ごしていく。

そんな宮路の姿を見ていると、

私の人生は、しっかりと起きているのか、目覚めて動き出しているのか。

そんなことを考えさせられます。

【緊張や不安は厄介だけど、それが一つもない毎日は空虚だ。】(本文引用)
何も頑張れることがない、夢中になれることがない、目標がない、そんな毎日が辛いことなんて分かっていながら
宮路は老人ホームで様々な人と接していく。

そんな中で、やっと答えが見えてくる。


【俺が何年もの間あきらめきれずにしがみついてきたものは、ギターを弾くことや歌うことではなかったのかもしれない。ずっと手にしたかったもの。きっも、それは音楽ではない。】(本文引用)


友達を作りたいから、と高校生の時に始めた音楽が、自分の全てだと信じ、後に引けない、と頑なになってい宮路が、

音楽が全てではないということに気づくシーンがとても印象的です。

夢を諦めきれない人、次の一歩を踏み出せない人、


そんな人におすすめの作品です。

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