おおくぼ OokuboTact

50代男性。趣味で歴史研究をしています。 ツイッターは https://twitter…

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50代男性。趣味で歴史研究をしています。 ツイッターは https://twitter.com/OokuboTact  10年ほど前に小学校の掛け算の順序論争を知り、算数教育の歴史を調べています。 1980年代からニューアカの影響を強く受けて現代思想の本を乱読。

最近の記事

映画の感想 『オッペンハイマー』

『オッペンハイマー』は2時間超えで途中でトイレに行きたくなるかも、と思ったけれど最後のエンドロールまで我慢できた。 映像の美しさ、凄さとしては文句なし。 しかし歴史モノなので史実の描き方としては色々と気になるところがあった。 娯楽作品としては、とにかく贅沢過ぎる作品であり、映画館の大きなスクリーンで堪能できたことは良かった。 この映画の魅力は秘密の町を作って核爆弾を作るところにある。 最終的な実験は雷の鳴る豪雨の日だ。 実験する日を延長するかどうかで揉める。 しかし実験時間を

    • 小説の感想 『モーダルな事象』奥泉光:作

      「桑潟幸一のスタイリッシュな生活」シリーズの最初の作品である『モーダルな事象』 前回の感想の続き。 前回はスピンオフ作品である『准教授』について書いてけれど、今回は『モーダルな事象』の方を。 『モーダルな事象』はクワコーこと桑潟幸一は主役の1人であるけれど、もう1人の主役である北川アキとは別々に物語が進む。 クワコーは道化役であり、連続殺人事件に巻き込まれながら、事件を解決できない。 それに対して北川アキは自分から事件解決に向かって乱入してきた人物であり、北川アキが勘違い

      • 小説の感想 「桑潟幸一のスタイリッシュな生活」シリーズ 

        「桑潟幸一のスタイリッシュな生活」シリーズは2012年に放送されたTVドラマ『妄想捜査 『妄想捜査〜桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』(佐藤隆太&桜庭ななみ主演)で知った。 最近、アマプラで見れることがわかり、久しぶりに視聴して、原作を読みたくなり、原作の3冊を読み終えた。 笑えて軽い感じの短編集という印象。 千葉とかFランク大学や文学者をディスりまくりの小説だけど、読んでいて笑いが止まらない。 主人公の桑潟幸一は出世を諦めたダメダメ人間として描かれているけれど、生命力が

        • 日記 去年末に観た映画『首』の感想

          今年は正月から日本中で大変なことが起こっていて、アタマがついていけない。 ところで去年の11月〜12月に観た映画の感想を書いてみる。 『首』と『ゴジラ マイナス1・0』 同じ時期に映画館で観たけれど『ゴジラ』の方が圧倒的におもしろかった。 『首』はCGを全く使わない映画で、『ゴジラ』はCGをふんだんに使った映画なので対照的だ。 『首』は北野武監督が何十年も撮影をしたかった映画なのだけれど、CG嫌いが足を引っ張たんだと思う。 CG嫌いで大成功している監督としては、クリストファー

        映画の感想 『オッペンハイマー』

          算数教育の読書 覚書き 上垣渉:著『開拓者藤沢利喜太郎と改革者遠山啓 日本の数学教育をつくった二大巨人』

          上垣渉は多くの数学の啓蒙書を書いているベテラン数学者である。 遠山啓が始めた数学教育協会(通称 数教協(スウキョウキョウ))の古参メンバーでもある。 だから遠山について書くのは当然だと言う気もするが、上垣の年齢からすれば、お蔵出しという印象。 遠山啓は藤沢利喜太郎を「数え主義」として批判している。 遠山啓は戦前の算数教科書である「黒表紙教科書」と「緑教科書」を「数え主義」あるいは「量を無視している」として批判している。 上垣がスウキョウキョウのメンバーでもあるから当然、遠山

          算数教育の読書 覚書き 上垣渉:著『開拓者藤沢利喜太郎と改革者遠山啓 日本の数学教育をつくった二大巨人』

          山口謠司:著 『漢字はすごい!』(講談社現代新書 2013年)は間違いが多い

          専門家の書いたウンチク本でおもしろい本だからといって、事実に基づいているわけでははない場合がある。 山口謠司の『漢字はすごい!』がそういう本である。 山口は日本語学でもいろいろ批判されているけれど、その分野は私はほとんど知らないので、「漢字と漢文の歴史」ついて書いてある箇所だけ指摘したい。 まずは甲骨文字について19ページから20ページに「漢方薬から発見」というタイトルで甲骨文字の最初の研究者の2人を紹介している。 この漢方薬から発見というエピソードは有名な話ではあるけれど

          山口謠司:著 『漢字はすごい!』(講談社現代新書 2013年)は間違いが多い

          映画の感想 『ザリガニの鳴くところ』

          アマプラで『ザリガニの鳴くところ』を視聴。 原作を読んでないので、ほとんど予備知識はない。 ベストセラー小説の推理ものの映画というぐらいしか知識はなかった。 映像は綺麗で登場人物たちも良かった。 子供たちが死体を発見するシーンは「『スタンド・バイ・ミー』か?」・・と思った。 しかし『スタンド・バイ・ミー』は推理ものではないけれど、少年達の回想記で、『ザリガニ』も主人公の回想記なので、共通点ではある。 「水辺の死体」が回想するための引き金というのは、プルーストの砂糖菓子の味で回

          映画の感想 『ザリガニの鳴くところ』

          「般若心経」のわけのわからなさ

          「般若心経」がどうして日本人に人気があるのか昔から不思議だった。 「短いから」というのもあるけれど、何を言っているのかよくわからない文章をありがたがるというのは不思議だ。 「般若心経」はお経というよりは詩に近い。 詩だとしても意味がよくわからないけれど、「言葉の響きが良いから好き」というのはある。 だから「般若心経」を書いた人は詩のつもりで書いたんだと思う。 仏教の単語とそこから出てくる連想だけを並べたんだと思う。 「般若心経」の作者の言いたいことは、「自分の感覚(視覚、聴

          「般若心経」のわけのわからなさ

          SNSで話題のトンデモ算数 「正方形が長方形であることをあえて教えない」

          小学校の算数を調べると、トンデモな教育がかなり見つかる。 有名なのは掛け算の順序だけど、足し算の順序もある。 他には図形の仲間分け。 正方形が長方形であることをあえて教えない。 正三角形が二等辺三角形であることをあえて教えない。 平行四辺形が台形であることをあえて教えない。 ベン図を小学生に見せれば、四角形の仲間分けは簡単に理解できるのに、ベン図を掲載している教科書は5社の中で2社だけ。 算数教育の大手の東京書籍と啓林館は載せていない。 この2社の教科書だけで90%を占める

          SNSで話題のトンデモ算数 「正方形が長方形であることをあえて教えない」

          『シン・仮面ライダー』と『仮面ライダー THE FIRST』を比べてみた

          チョー久しぶりに『仮面ライダー THE FIRST』を視聴した。 『THE FIRST』は2005年上映なので、18年くらい前の映画。 造形デザインに『シン・仮面ライダー』と同じく出渕裕氏が参加している。 出渕裕氏は『シン仮面ライダー』のインタビューで、仮面ライダーやクモオーグのデザインが『シン仮面ライダー』と似ていることを語っている。 注 『週刊文春エンタ+ 特集 10倍楽しむ!『シン・仮面ライダー』 (文春ムック)、『ニュータイプ 5月号』 『THE FIRST』は

          『シン・仮面ライダー』と『仮面ライダー THE FIRST』を比べてみた

          9条は誰が発案したのか

          「日本国憲法の第九条は誰が発案したのか?」というテーマは今までも多くの人が議論されてきました。 1人に絞る必要はないのですが、あえて1人の名前を出せば誰か? そして日本人は9条の発案したのか? 発案したのが日本人か外国人がどちらであっても、大事なのは優れているかどうかだと思うのですが・・・。 車やテレビやスマホなど、身近に溢れている商品をどこの国の人が発明したのかは、商品の優劣に比べたらどうでも良いことです。 法律に関しても同じだと思うのですが・・・ しかし占領下の日本統

          9条は誰が発案したのか

          マッカーサーと昭和天皇

          占領期から朝鮮戦争までのマッカーサーと昭和天皇に関する本を読んでみた。 「マッカーサーの陰謀」みたいな怪しくも魅力的な本もいろいろあるけれど、ここは手堅い岩波書店の本を中心に調べてみた。 『日本国憲法の誕生 増補改訂版』(岩波現代文庫) 『「平和国家」日本の再検討』(岩波現代文庫) 共に古関彰一 『昭和天皇・マッカーサー会見 (岩波現代文庫)』 『昭和天皇の戦後日本』 共に豊下楢彦 あと岩波書店ではないけれど、中公新書の『マッカーサー』(増田弘)も良書だと思う。 しか

          マッカーサーと昭和天皇

          家康がどうして息子・信康を自害させたのかについて、しつこく考えてみた

          『どうする家康』で、築山殿と信康が死ぬ回はまだまだ先だと思いますが・・・。 信康が自害することになった理由をまた考えてみました。 結論は、実母である築山殿を守ろうとして父・家康と対立したから・・・です。 前の記事 https://note.com/tasty_otter388/n/n5a484af81648 だから「妻・五徳との不仲は関係ない」という説をとりたい。 もちろん、築山殿が処分されるきっかけは、五徳が父・織田信長に送った手紙が原因です。 「信康の家臣達が武

          家康がどうして息子・信康を自害させたのかについて、しつこく考えてみた

          「金ヶ崎の戦い」は諸説が多いけれど、決定的な資料が無いので、よくわかっていない

          『どうする家康』第15回では、金ヶ崎の戦いの激戦が描かれると期待してたら、 いきなり数日後になり、 家康が1人いる部屋に秀吉が入ってきて、そこに信長が入ってきて、光秀が入ってきた。 『どうする家康』では、この4人をどう描くかに興味がある。 『麒麟が来る』の明智光秀とは全く違うのが良い。 秀吉のクズっぷりも良い。 ジャニーズの2人がかっこよすぎる。 信長が家康の耳を噛むシーンに腐女子が歓声をあげているらしい。 しかしNHKの大河ドラマでは男色を描くことは自粛されている。 「金

          「金ヶ崎の戦い」は諸説が多いけれど、決定的な資料が無いので、よくわかっていない

          家康の長男・信康はどうして殺されたのか?

          『どうする家康』は金ヶ崎の戦いまで来た(先週までの話)。 徳川家康の長男・信康はまだ12歳ぐらい。 すでに織田信長の娘・五徳と結婚して岡崎城に住んでいます。 そして岡崎城の城主。 しかし約10年後には信康は自害をさせられます。 従来の説では織田信長の娘・五徳と不仲となり、織田信長の命令で自害するよう家康に命令がくだったというものでした。 最近でた黒田基樹さんの『徳川家康の最新研究 伝説化された「天下人」の虚構をはぎ取る 』(朝日新書) を読んで思ったのは 「やっぱり信康は

          家康の長男・信康はどうして殺されたのか?

          感想 『どうする家康』 家康と瀬名の関係

          『どうする家康』に限らないけれど、戦国大名の結婚を恋愛結婚として演出するというのはNHKの大河ドラマの伝統。 あと男色を描かないのもNHKの大河ドラマ。 LGBTを推進するNHKなので、大河ドラマもこれから変わるかもしれない。 しかし家康のラブ・ストーリーを描く時に、好きでもない女性とむりやり結婚させられて、嫁や嫁の父親には頭は上がらず、息子はマザコンだった・・・という演出はシリアスな演出路線だとできないのがNHKの大河ドラマ。 三谷幸喜さんのコメディ演出路線なら許されるんだ

          感想 『どうする家康』 家康と瀬名の関係