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薬を処分するタイミング(使用期限その他)

はじめに

「(中略)古くなったお薬は今すぐ処分してください。もったいないお化けは出ません」

患者さんにとってのマイナンバーカード保険証の魅力についてより。もったいないお化けってなんですかね。

「古くなったお薬」の定義をすべきではないか、と自己批判するに至りました。記事を短くしようと思うばかりに定義を省略し、結果として4200字の長文になってしまい、意味が分かりません。

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今回は、お薬を処分するタイミングについて、処方箋を必要とする「処方薬」と、処方箋がなくてもドラッグストアで購入できる「処方薬以外の薬」に分けて書いていきます。

※以下、引用先では「有効期間、有効期限、使用期限」と表記ゆれが見られますが、ここではすべて「使用期限」と理解してくださって大丈夫です。


処方薬(医療用医薬品)

前回の記事では、院内・院外を問わず「処方薬」を念頭にしていました。「処方薬」は、使用期限は記載されていないのが基本です。

たとえば、解熱鎮痛剤として処方される「カロナール®錠」(一般名:アセトアミノフェン)。コロナ禍でさらに知名度も需要もアップしましたが、他の解熱鎮痛剤より副作用が少ないことから、年齢を問わず広く処方されます。ご自宅にあれば確認していただきたいのですが、使用期限の記載はやはりありません

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「処方薬」については、兵庫県薬剤師会の「薬に関するQ&A」が簡潔でかつ誤解も生じないと考えますので、以下に引用します。

病院でもらったお薬に有効期限はありますか?

医薬品には使用期限があり、製造されてからの期間を指しますが、病院で処方されたお薬、または薬局で調剤されたお薬には有効期限という考え方はありません。医師から指示された服用日数(使用日数)がそれに相当します。
 病院でもらうお薬は、その時のあなたの症状に合ったお薬です。したがって、以前のお薬が今の症状にあうとは限りません。以前に処方されたお薬を取っておいたり、飲み残したりして、別の時に自己判断で使用することはお勧めできません。残ったお薬は処分しましょう。
 いうまでもないことですが、残ったお薬を人にあげたり、また人からもらったりすることは絶対にやめましょう。

兵庫県薬剤師会HP薬に関するQ&Aより
「太字、改行、段落下げ」はすべて原文ママ

◆処方薬◆
「使用期限」=医師から指示された使用日数

定義①

以上は大原則です。

がんの治療など継続的に同じ薬剤が投与される場合、副作用の症状を抑えるお薬も基本的に同じ処方薬が出されます。外来の診察時、次のようなやり取りが展開される場合も多いと思われます。

主治医:あれから体調はどうですか?
患者さん前回同様、投与後2日間はムカムカと便秘が続いたので、処方していただいた制吐剤と下剤を服用しました。それ以降は今日まで特に問題はありません。あっ、冬で乾燥しているのとストーブも付けているせいか分かりませんが、肌がカサカサし始めました
主治医:分かりました。吐き気止めと下剤は、前回8日分出しましたが、まだ残っていますか。
患者さん:はい、6日分残っています
主治医:今日は追加のお薬もなくて大丈夫そうですね。…あー確かにカサカサしちゃってますね。では、保湿剤だけ5本出しますね。足りなければ再来週、また教えてください。

架空の外来診察室

前回の処方薬と残数もお薬手帳などで把握されているお手本のような患者さんです!このような患者さんだと主治医も安心できます。自宅で処方薬が足りなくなるといけませんが、十分足りているなら追加で処方する必要はありません。税金が投入されている医療費を抑えるという観点からも合理的です。

また、気になる自覚症状もきちんと伝えられる優秀な患者さんでもあります!保湿剤は処方箋がなくてもドラッグストアや薬局で購入できます。しかし、処方薬であれば3割負担で済みます。そして、主治医による診察なので適切なお薬です。さらに、調剤薬局で塗り方も教えてもらえるなど至れり尽くせりです。

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入院や通院のたびに、お薬の詰め合わせ一式を処方する病院もまた多いはずです。このケースでは、前回のお薬は処分しても良いと思われます。特に、症状が出たときに服用する頓服(とんぷく)のお薬と毎日服用するお薬の組み合わせの場合。取っておくと「あれ、飲み忘れたっけ?」と勘違いしてしまうかもしれません。

結局。
主治医に確認しちゃってください。確認することで、処方薬の出し方を変えてくれる場合もあります。特に、お薬の詰め合わせ一式がご自宅に複数ある方は、一度確認してくださいね

なお、がんの副作用の場合「こんな症状が出たらすぐに病院に電話ください」とご案内されているはずです。その際、お薬手帳も準備してください。「何月何日に処方されたお薬はありますか?もしあれば、服用して様子をみてください。」と指導されることもあります。

上記のような状況に備えて、このお薬だけは残しておきたいという見極めはなかなか難しいと思います。もっとも、「カロナール®錠」はキープしておきたいお薬のひとつです。他は、やはり主治医に相談してみてください。電子カルテとにらめっこしながら、取捨選択してくれるはずです!

万が一に備えるならやはり「かかりつけ医」(通院先が近いのでしたら主治医)に、という議論に帰結してしまいます。普段と違う症状が出て悩むような場合には、直接診てもらってくださいというお話です。その都度、診察のうえで適切な処方薬を出してもらえます。これに勝るものはありません。

いつもの議論です

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処方薬以外の薬(一般用医薬品)

東京都薬剤師会の「医薬品の有効期間について」は、18個のQ&Aで簡潔に説明されており、ひととおり読むことで規則性が分かってきます。具体的な期間なども明示されており、読むだけで「そういうものなんですね」と賢くなれます。人にも教えたくなるはずです。その結果「捨てちゃっていいんだっけ?」という本来の目的を忘れてしまうかもしれません。以下に、一部引用します。

Q: 購入した薬に使用期限のあるものとないものがありますが、ない場合どのくらいの期間使用できるのですか。

A: 薬の使用期限は法律で記載を義務づけられたものと、そうでないものがあります。しかし、義務はないが記載しているメーカーもあります。開封していない薬で、使用期限の記載のないものは、おおよそ3年を目安にするようにしてください。(湿気を避け、涼しい場所に保管するなど、保存条件がよい場合)

東京都薬剤師会HP「医薬品の有効期間について」より

Q: 使用期限の書いてない医薬品は、どのくらいの期間使用できるのですか。

A: 添付文書に書いてある条件で開封していなければ、3年を目安にしてください。ただし、いったん開封した場合は、剤型や保存の状態によりますが、6か月~1年と考えてください。

同上より

Q: 目薬(点眼液)の有効期間はどのくらいですか。

A: いったん開封した場合、有効期間内であっても、液が空気中の雑菌などで汚染されます。通常、しっかり栓をして、冷蔵庫などの冷暗所に保存して、開封後1か月くらいが使用に耐えられる期間と考えられます。

同上より

◆処方薬以外の薬◆
「使用期限」=外箱に記載された未開封での期限
      =開封の有無、保存状態、種類等に
       より大きく異なってくる期限

定義②

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あとがき

前の記事の補足を、次の記事で説明してしまう現象に名前を付けたいです。説明下手。

しばらくは、お薬シリーズを続けてみます。

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