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これ、どんな状況ですかね

そう。私は元気だった。
幸運なことに後遺症はてんかんの症状をのぞいて、何一つ残らなかった。
可能性として挙げられていた左手脚の痺れや麻痺が残ることもなく、左目の目立った視野の欠損もなかった。言語聴覚士、作業療法士による術後の簡単な脳機能チェックでは、むしろ脳の働きが術前よりも良くなっていると言われた。ほんまかいな。
看護師からは、担当医が「本当になんの症状もないんだよなぁ・・・」と溢していたよとの報告を受けた。

でも、これどういう状況なの。

だって、私の病気は完治したわけではない。
私の病状はMRI検査による画像でしか判断ができない。なんの数値化もされることなく、治療によってこれだけの悪性細胞が破壊されたとか判ることもなく、ただただ画像によってこんな現状だよという確認をする。
そう、現状確認だけ。視覚による「今」の確認だけ。

放射線科の先生からは、先ばかりを見ると苦しくなるから、そうした時には今を見るといいよとアドバイスをいただいた。その通りだ。苦しくなったら頑張って元気な今を見る努力をする。

でも、私は先が欲しい。
だから手術をして治療を受けて、そして今も治療を続けている。
未来があるのが当たり前だった日々にはもう戻れないという事実。それは私を打ちのめした。

明日何が起こるかわからない、それは万人に共通することであり、その認識は私にもあった。でも、だからといって毎日明日死ぬかもしれないから・・・と思いながら生きてはいなかった。そんなこと毎日考えていたら、それこそ精神を病んでしまう。

でも、私は大丈夫、と高を括ってはいなかったと思う。
だけども、脳腫瘍は考えなかった。
それは考えなかったよ。

やっぱり病気になると思うものですね。使い古された言い回し。

でも、なんでわたしなの と。

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