この時期の海外への研究留学を諦めて欲しくない

留学したいと思えば、それができる時代の中で、今禍が齎した不自由さは計り知れません。

前回の記事中でもお伝えしましたが(下記参照)

そもそもアメリカに限らず海外への留学は受け入れ機関の承諾なしにはできません。企業、大学、大学も研究員として医師として学生として行く場合にそれぞれ異なると思いますが、アメリカの大学に博士研究員として留学する場合に必要な手順を以下に示します。今後変わっていく可能性はあります。現段階、というか、自分がJ1 VISAを取得した当時(2018年上半期)の情報になります。

1. 所属したい研究室にコンタクトを取る
 自分の場合は公募に応募しました。人によっては学会で知り合ったり、持参金を持っていくから席を空けてほしいと頼んだり(言い方w)という感じになると思います。

2. インタビューを重ねる
 人によると思います。自分は2回。1回目は普通に軽く話す程度、2回目はインタビューというよりプレゼンでした。当時、学位審査があったので、それと全く同じスライドで同じ日の早朝にやった記憶が…

3. PhD証明の作成依頼
 日本の大学で発行される学位(博士号)が特に欧米で利用されているPhDに相当するかどうかの証明書発行をアメリカの第三者機関に委託する必要があります。学位審査直後で在学証明書と成績証明書が発行されていないことを受け入れ機関側に訴えるのが面倒でした。日本の事務手続きの煩雑さをアメリカは理解してくれません。

その間に日本では珍しい雇用前の大学からの非公式の契約書が届きました。
日本では有給職に就いたことが無かったので何とも言えませんが、日本では雇用開始日に契約書が発行されると聞いたことが…

4. DS2019の発行
 実はVISA(旅券)はアメリカへの入国に必要なものであり、VISAを発行するために必要な書類というのがあります。いわゆる公的な契約文書です。J1 VISA発行のためにはDS2019が必要です。アメリカに入国するためにはJ1 VISAの提示以外にもDS2019の提示が義務付けられています。もちろん期限内のVISAが無ければDS2019だけを持っていてもアメリカへの入国はできませんが、有効なDS2019さえ持っていればJ1 VISAを発行することが可能です。
 DS2019には、契約者(自分)の名前、性別、生年月日、出生地(アメリカは出生地主義です)、国籍、給料(固定給表示ですが年々上がります)、受け入れ研究機関名称、職種、契約期間、発行番号(順不同)などが記されています。今、書きながら、自分のポジションがUniversity teaching staff including R(多分Research)だと知りました(遅い

DS2019を持ち、アメリカ国外へ行って戻ってくる場合にはトラベルバリデーションに受け入れ機関側の(基本的に国際本部の担当者の)サインが必要です。フルタイム職員の場合は1年有効のサインなのでDS2019は2年の有効期限が多いと思います(2回しかサインできる場所がない)

5. 在日アメリカ大使館(もしくは領事館)に連絡する
 DS2019が手元に届いたら、すぐに大使館にVISA発行手続きのための予約をします。様々な記事やブログを見てもよく分からなかったので、結局直接大使館に電話した記憶があります。ちゃんと日本人のオペレータにつながるので安心してください。

正直、よく覚えていないのですが、申請書を作成するのがだいぶ面倒くさかったので早め早めにやりましょう。

6. VISA発行手続きのために大使館に行く
 これも様々なブログ・記事・知恵袋にまでも書かれていますが、人によって大使館職員の対応は様々です。対応するのも同じ人間と思って諦めましょう。自分からのアドバイスは2つです。常に緊張感を持って行動すること。それと有備無憂です。

当然ですがパスポートを持参します。
自分は、研究で行くのか?どこに行くのか?何年か?程度の質問で終了しましたが、周りを見ていると揉めてる人もいました。揉めている人たちは決して有備ではないように思えました。例えば受け入れ機関を知らないとか。あってはならないことですね。そういうのはやめましょう。

全て順調に行くと、パスポート預かりになります。一抹の不安を覚えますが気にしないことです。

7. VISAが貼り付けられたパスポートが手元に届く
 人によって様々と思いますが、当時自分は大学に所属していたので、大学に送ってもらうように頼みました(申請時に返送先の住所指定がある)。自分にとって一番安心できる場所を指定しましょう。職場はどうしてもダメな場合もあると思うのでそこは自由です。ちなみに3日くらいで届きました。

8. 注意点
 VISAはDS2019の契約開始日に合わせて発行されます。もしDS2019発行後にその時点での大学等所属機関の都合で所属延長が発生し、DS2019の契約開始日より1ヶ月以上遅くなることがわかった場合は、DS2019の再発行とVISAの再発行が必要になります。
実は自分は20日遅れて行った人です。学会等があってどうしようもなかったのですが、非常にギリギリで、こんなことをする人もそういなかったのではないかと思います。あまりお勧めはしません。もし再発行が必要になったらすぐに受け入れ機関に連絡してください。

最後に

今はアカデミアにおいても微妙な時期ですが、こうして見ると分かるとおり、VISA < 公的契約文書(J1 VISA < DS2019)です。なので、一つの可能性としては、まずは受け入れ機関(実際には研究室)との交渉が大事であるということです。この時期、世界中がこの新型ウイルス関連研究に余分に資金提供しています。実際にウイルスそのものを扱っていなくても、自分のラボ然り、合併症も視野に入れて関連研究対象であると言ってしまったもの勝ちであるという現実が存在します。予算を提供する側もそのための枠を多めに設定しています。一応、アメリカの大学で新規雇用の一時中断を掲げているところは多いのですが、任期等で人が減れば、新規雇用どころの話ではありません。プロジェクトの停滞、ボスが若手ならテニュアへの移行失敗等もありうるでしょう。そこで、その行きたいと思った研究室で誰かが関連研究をしていれば、それを大義名分として用いることができるかもしれません。

とにかく、ああ無理なんだなと諦めてしまえば、そこでお終いです。もちろん終わらせて安易な道に進むのもありでしょう。しかし実は日本でのアカデミア就職の方が「特に最初は」難しいのではないか?と思います。日本はこういう事態になっても研究費の増額(というか元の額に戻す)、交付金の増額(これも元の額に戻す)すらしません。これでは働き口が見つからない人たちが路頭に迷うだけです。特にアカデミアの場合は誰も助けてはくれません。国も国民も手を差し伸べてはくれないでしょう。特に日本人が博士号取得者に向ける視線は冷たいものばかりです。四苦八苦働いてる横で安穏と学生生活を送ってきた社会貢献度0の特殊業務従事者としか見られないからです。

とにかく足を一歩前に出すことが重要です。次の人生を決めるのは常に自分自身です。これから始まる研究生活を是非楽しんでください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?