見出し画像

お肉仮面文芸祭応募作『ハンティング』 思考メモ

本記事は、お肉仮面文芸祭応募作品「ハンティング」の制作メモです。
執筆時に書いたものなので、実際に出来上がったものとそこそこの乖離があったりします。ごりょうしょうください。

2020/12/01

 パルプアドカレの自分の担当日を無事に超え、お肉仮面文芸祭の執筆に取り掛かることにした。

 逆噴射小説大賞のときと同じく、ここに制作日記的なメモを残していこうと思う。

 この街に慣れてない奴は一発でわかる。電車の中で騒がしいからだ。

 この一言を活かしつつ、お肉仮面さんを主眼に据えたヒーロー小説を書きたい。

 以上が、本件における初期衝動だ。

 お肉仮面さんはかなり都市伝説的な文脈が強いと思っていて、実際に先んじて投稿された
十二月三十一日 十三さんの「光の中を一人で歩むよりも、闇の中を友人と共に歩むほうが良い。」は完全に都市伝説の文脈だった。おそらく、お肉仮面さんの佇まいがそういう方面の畏怖を想起するのだと思う。

 都市伝説。謎の存在が、我々の生活を、日常を、平和を脅かす。恐怖と畏怖と好奇が混ざった存在。お肉仮面さんの写真にはそういう雰囲気があるのは間違いない。

 そんな都市伝説的なお肉仮面さんでヒーロー物を書こうという試みにおいて、「これだ!!!!」となったのがこの写真だ。

画像1

 猥雑な路地の奥に現れ、今すぐに踏み出しそうなその佇まい。無造作ですらあるその佇まいには、それでも次の瞬間には眼前に出現しそうな迫力がある。

 路地裏で、怪人に襲われた人の元にふいと助けに現れるヒーロー。都市伝説を斃す都市伝説。"何者か"の肉を貌に貼り付けた男……おお。カッコいいな。

2020/12/03

 出張で青森にきて、入った居酒屋のママと仲良くなってそこそこ飲んだあと、今バーでこれを書いている。イチローズモルト美味しい。

 さて、先日の検討の続きだ。都市伝説を斃す都市伝説ヒーロー、お肉仮面!

 変身シーケンスはむしろ無粋かもしれない。お肉仮面さんはお肉仮面さんとして出現し、お肉仮面さんとして去っていくのがカッコイイ。

 あとお肉仮面さん、喋るのもなんか違う気がする。身振り手振りもそう大きくないと思う。ちょっとした所作、例えば首を傾げるとか、重心を前に動かすとか、手をグーパーするとかで感情を表す……というか、周囲が勝手にその感情を想像する、そんな存在がクール。

 漫画だと想像がつきやすいのだけど、果たしてこれを小説でやれるだろうか。チャレンジングである。

・都市伝説に襲われて逃げるA氏
・路地裏で転び、追い詰められる
・あわや!というところで、***を経て都市伝説が動きを止める
・路地の奥に佇むお肉仮面さんの姿が!
・都市伝説の問いかけにも応えることなくただただ戦闘をはじめるお肉仮面
・「お肉仮面はなにも語らない」

2020/12/09

 しばし間が空いてしまった。あれから色々と考えたことをまとめてみる。

「都市伝説を斃す都市伝説」にするとして、演出は結構ちゃんと考えないとマズイ。「お肉仮面」のタイトルで、例えばいきなり口裂け女が出てきたら、と想像すると「ああ、この口裂け女はお肉仮面にやられるんだな」と思うだろう。なんせ普段ヒーローものを書いている男がこれを書くのだ。わかりやすい怪異が出てきたらそこまで勘付かれる可能性は高い。

 そう思うと、ミスリードを誘う必要がある。

 一人称視点が良いかな。「俺」は仮面を被って、人を襲う。そんなコンセプトでどうだろうか。仮面、としてしまうと露骨が過ぎるから、マスクにしてしまうのも手かも。やっぱり口裂け女では???

2020/12/13

「語り部=お肉仮面さん」というミスリードを誘うような怪異を考えてみよう。

 お肉仮面さんの怖いところは、そのお肉が何者の肉であるかがわからない点だ。シンプルに怖いのはそれが人の肉である時だろう。「お肉仮面につかまった者は、生きたまま肉を剥がれ、仮面にされてしまう」とか。被害者の肉を「食う」とかでなく、被害者の肉を仮面にする猟奇殺人めいた怪異。

 そうすると語り部は「マスクを被った、人の皮と肉を剥ぐ怪異」となるか。マスクを被った怪異でいうとやっぱ口裂け女。人の皮を剥ぐとなるとノッペラボウ? ……ノッペラボウってマスクすんのかなあれ?

 それにしても口裂け女、ミームとして「私、綺麗?」という言葉で一気に種明かしができるのは強いよな。そこまではお肉仮面さんだと思わせておいて、その一言で「えーっ!?」て思わせることができる。3,000文字の作品として、大体1,500〜2,000文字くらいでその言葉が出てくるのが良いかな。

 口裂け女にフォーカスを合わせるなら、「皮/肉を剥ぐ」という直接の表現は避ける必要があるか。口裂け女は捕まえて口を切り裂くものだし、「ハサミを入れる」くらいの方が良いかな。

「マスクをする」「ハサミを入れる」

2020/12/20

 いつものことだが、ある程度方向性が定まってからのこの悶々とした感じはなんとも言語化しづらい。日記にも残らない工程なのでどうしても日がぽかんと空いてしまう。

 ワイフと「乾いたミカンは剥きづらい」と言う話をしたのをきっかけに、本作の書き出しが定まった。人も果物も、乾いていると剥きづらいのだ。サイコ野郎感出ててお気に入り。

・語り部は口裂け女
・「乾いたミカンは剥きづらい」
・人けのない町を歩くA氏
・口裂け女がA氏を襲う
・「私、綺麗?」
・あわやのところでお肉仮面登場

 ミスリードを誘うためにも、A氏が襲われるまで少し間をもたす必要があるなーと思っていて、その辺りの表現で苦労している。

2020/12/24

 書き上がった!

 ミスリードへの誘導を強めるべく、冒頭にお肉仮面のビジュアルイメージも付与することにした。プロローグというか、OP前のショートショート的な。ちなみにカズヤは同僚の名前。

 結果として、冒頭で書いた「この街に慣れてない奴は一発でわかる。電車の中で騒がしいからだ。」からはじめようという初期衝動については、結果としてなかったことになった。まぁそんなこともある。

 カズヤくんが最後どうなるかについては悩んでいたけれど、お肉仮面さんのお茶目(?)な一面を見せようということで記念撮影することに。

「怪異を殺して面を作り、記念撮影をする」

 字面だけ見るとめちゃめちゃやばい人になった。いやまぁ、字面だけでなくてもやばい人だけども。

 それにしても、タイトルどうしよう。大体いつもは書いてる最中に決まるんだけど、珍しく最後まで決まらなかった。

 こういうとき、ついつい「お肉仮面vs口裂け女」みたいなIQ5のタイトルにしがちだけど、たまにはちょっと考えよう。

 ミスリード誘うにはタイトルと口裂け女で齟齬がないようにしないとならない。でもお肉仮面さんの行動とも差がでないようにするのが必要かな。

 両者の行動に共通してる行動から取るのが良いか? 狩りとか。ハンティング?


◆いじょうです◆


🍑いただいたドネートはたぶん日本酒に化けます 🍑感想等はお気軽に質問箱にどうぞ!   https://peing.net/ja/tate_ala_arc 🍑なお現物支給も受け付けています。   http://amzn.asia/f1QZoXz