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百貨店の可能性

column vol.254

朝、電車の中でネットを見ていたら、【80歳カリスマ百貨店員が引退 売り場にファン順番待ち】という記事に目を奪われました。

〈朝日新聞デジタル / 2021年3月30日〉

宮崎市の老舗百貨店「宮崎山形屋」の靴売り場で、アイドル販売員として活躍する畦崎(あぜざき)ヒサ子さん。なんとそのお歳は、80…!

長い間、トップセールスを続けたカリスマ店員さんなのですが、今月いっぱいで退職。長年の得意客らが続々と来店し、列をなして名残を惜しんでいるそうです。

販売の秘訣、それは…

畦崎さんは高校卒業と同時に宮崎山形屋に就職し、靴やバッグの売り場で8年勤め、結婚を機に退職。

20年ほど専業主婦として暮らした後、旦那さんが他界したことをきっかけに売り場に復帰されたそうです。

当然、長年のブランクは大変だったとのことですが、失敗を糧にし、いつしかトップセーラーに輝きました。

販売の秘訣、それは「真心」とのことです。

「売ろう売ろうとせず、相手が何を求めているのか、無心でじっくりと話を聞くことです」

とてもシンプルなお言葉ですが、簡単なことではありません。

実際、畦崎さんの真心により、靴の好みはもちろん、家庭や健康のことも打ち明けるお客さまもいらっしゃるようです。

マイボイスコムの調査によると、「百貨店に行くのは、半年に1回以上」と答えたのは45.4%で、2年前に行った調査と比べ10.1ポイント減少

「ほとんど行かない」と答えたのは46.1%「利用したことがない」8.6%。いずれも2年前の調査結果と比べ、増加しています。

モノが溢れる時代において「百貨」であることは残念ながら価値になりません。

だからこそ店員の魅力、「人財力」を磨くことが付加価値になる。各社それを理解しつつも、接客研修が少しテクニカルなノウハウになりがちになっているように思われます。

それよりも、心と心の対話を重視する。

ちなみに、畦崎さんは営業時間外にも努力を続け、300人を超す常連客手書きのはがきを季節ごとに送ったそうです。本当に頭が下がります。

百貨店は決して「オワコン」ではない

昨年12月、「百八貨店」を名乗る店が現れました。東京湾岸エリアに誕生した「無印良品 東京有明」です。

〈アーバンライフメトロ / 2021年3月26日〉

百貨店の100に、【暮らしのサポート】【家づくり】【街づくり】の3つをテーマにおいた8つの新商品・サービスを加えた新しいカタチ。

【暮らしのサポート】は、お片付けサポートや観葉植物の月額定額サービスなど、一人ひとりの困りごとに寄り添い暮らしを整える様々なサービスを新たに展開。

【家づくり】はニューノーマルに対応し、自分にとっての心地よさや個性を生かした居住空間を築くためのリフォーム&全面リノベーション

【街づくり】は、街全体を“自分たちの住まう空間”と捉えて「家」「オフィス」「商業施設」「公共」の4つの分野において、企画から考える空間づくりのサービス。

小売業も、時代に合わせて、その時々の暮らしをサポートする。その形は一定のものではなく、変化することが求められます。

つまり、百貨ではなく「百化」

モノ(貝)を売るという考えから脱却し、暮らしをデザインするための売り場づくりをすることが、ますます重要になっていくでしょう。

百貨店も「サブスク」に

大丸松坂屋百貨店は、婦人衣料品レンタルのサブスクリプションサービス「アナザーアドレス(ANOTHERADDRESS)」をスタート。公式ウェブサイトを公開しました。

〈WWD JAPAN / 2021年3月12日〉

スタート時点では「MAISON MARGIELA」「JILL STUART」など50ブランドが参加。

サイズもS・M・Lを用意し、価格は月額1万1880円(税込)、1ヵ月あたり3着までのレンタルが可能です。

さらに、納品・返却における送料やクリーニング費用も含まれ、気に入らなかった場合は返品交換もできます。

ファッション業界が低迷する中、まずはお客さまとのタッチポイントを増やし、気軽にレンタルしてもらうことで、その後の購買に繋げる狙いです。

モノはファッションに限らず所有から「使用価値」へと移動しています。

これも生活者のニーズを捉えて変化した「百化店」の新しい売り出し。小売業は固定概念を捨て、新しい発想で再構築することが求められています。

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