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小売業の「勝ち筋」を読む

column vol.181

ユニクロなどを運営するファーストリテイリング2020年9~11月期決算(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前年同期比0.6%減の6197億円となったものの、営業利益同23.3%増の1130億円と大幅な増益となりました。

〈WWD JAPAN / 2021年1月14日〉

コロナ禍においても、巣ごもり需要を捉え、ルームウエアヒートテック毛布スマートアンクルパンツなどが売れ筋に。

2021年8月期は、コロナ前の19年8月期並みの過去最高業績の売上収益2兆2000億円営業利益2450億円を目指しています。

巣篭もり需要への対応、ECでの成功など、時流を捉えた小売のカタチを顧客に提供していることはもちろんのこと、同社の本質を追求した企業哲学に根本的な強みがありそうです。

同社代表取締役会長兼社長の柳井正さんの真骨頂は、失敗を恐れずに挑戦し、失敗を素直に認め、次につなげられる力

最近では、サステナブルを軸にした「正しい経営」を標榜され、「ごまかさない」を合言葉に日々取り組まれており、時流を掴むという表層的な成功談にはならない企業としての強さを生み出しているのだと思います。

「守る・攻める・変える」

ライフコーポレーション岩崎高治社長が掲げる「2021年の展望」にも注目してみました。

〈流通ニュース / 2020年12月25日〉

「守る・攻める・変える」3つの戦略。

守る戦略「徹底的な感染対策」

そして、攻める戦略の筆頭が「アマゾン」とのコラボレーションです。

アマゾンと協力し、ライフで取り扱っている生鮮食品や惣菜のオンライン販売・配送サービスを2019年9月に開始。

2020年10月、Amazon.co.jp上にライフのストアをオープンし、現在では、アマゾンのサイトから購入できるので、顧客との接点が広がっています。

さらに、オリジナル電子マネー「LaCuCa」は、スマートフォンのアプリで決済できるようになりました。

現在は店舗での使用のみですが、近いうちに、ネットスーパーでの決済も対応するとのことで、スマホ1台ですべて買物が解決できるようになります。

変える戦略では、働き方改革にもつながるDXを推進。まず、全店でのAI発注導入を目指しているそうです。

さらに、月一回の店長会を動画配信にしたり、在宅勤務を取り入れたりなど、さまざまなトライアルをされています。

ちなみに個人的には、大阪で運営している新業態「ビオラル」の今後の展開が気になっています。

オーガニック、ローカル、ヘルシーな商品を集めた店舗ですが、ライフの販売網を使うことで、これらの商品の日本国内でのデフォルト化が実現するのか注視したいところです。

「移動スーパー」に益々注目

コロナ禍で高齢者の外出自粛が続く中、一方で商品を見て買いたいとの要望も多く、ネットの弱点を補う販売手段として「移動スーパー」に取り組む小売業が増加。

イトーヨーカ堂は2022年度をめどに車に商品を積んだ移動スーパーを全国展開。100店舗に利用者の自宅を回る専用トラックを置くそうです。

「来ていただけないなら、出向けば良い」

小売業は今後、来店から「向店(こうてん)」に?

変な造語を勝手に作ってしまいましたが…、この向店が小売の「好転」に繋がるとよいですね。

さらに、「配送」についてもウォルマートが新しい展開を見せています。

無人で運行する自動運転配送車をアーカンソー州で実証実験しているそうです。

〈DCSオンライン / 2020年12月17日〉

同店では、スタートアップ企業のガティックと共同で自動運転車を開発。

ダークストア(ネット通販商品の保管・出荷に特化した店舗)から約2マイル(約3.2km)離れた食品スーパー「ネイバーフッド・マーケット」まで、店頭引き渡しサービス「グロサリー・ピックアップ」用の商品を配送する実験していました。

この実験で延べ7万マイルを超える距離を安全に配送する実績を上げたことから、無人での完全自動運転に切り換えることにしたとのこと。

配送に使うトラックは3温度帯に対応しており、常温商品だけでなく冷蔵冷凍商品も運ぶことができるそうです。

今後、小売業は「移動」が1つのキーワードになりそうです。

「レジ無し店舗」増加中

アマゾンゴーや高輪ゲートウェイ駅の「TOUCH TO GO」など、今までもnoteでレジ無し店舗の紹介はしてきましたが、日経新聞を読むと、イオンが今年から、傘下のスーパー1,000店に順次導入していくと書いてありました。

当面、コロナ禍では「非接触」ニーズへの対応となりますが、コロナ後も消費者の時短ニーズ店舗側の効率化はトレンドとして続くと見られており、レジ無しは広く拡大していくでしょう。

さらには、我がホームタウン横浜でもレジ無し店舗の実証実験が始まるそうです。

病院や介護施設向けのコンビニを展開する光洋ショップ-プラスが協力し、同社が運営する「グリーンリーブスプラス 横浜テクノタワーホテル店」が実験会場に。

24年までに病院職員向け店舗など30店舗以上に拡大する計画とのことです。

無人化が1つのキーワードになる中、一方でリアル店舗の一番の強みである人(店員)の価値をどのように進化させていくのか?

百貨店やスーパーなどでは、「コンシェルジュ」「ストーリーテーラー」といった商品を売る人から、商品の価値を伝える人(ニーズを読み解く人)への転換が加速すると思われ、ショッピングセンターではショップスタッフを教育、サポートする営業推進の分野に光が当たりそうです。

小売のどの分野でも、SX(ストア・トランスフォーメーション)が進んでいくことになりますので、いかに先読みして、クライアント企業を支えていくかが、私たちマーケティングコンサルタントに求められると改めて感じています。

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