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時代は「幸福経済」へ

column vol.258

前回は「会社」というミクロな視点で語りましたが、今回は経済全体の大きな潮流についてお話ししたいと思います。

キーワードは「グレートリセット」です。

世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」の2021年テーマになりましたね。

〈プレジデントオンライン / 2021年2月27日〉

ご存知の方も多いかと思いますが、まずは改めてグレートリセットについて触れさせていただきます。

「グレートリセット」とは?

世界経済フォーラムがグレートリセットの必要性を訴える理由としては、パンデミック経済成長、公的債務、雇用、人間の幸福に深刻な影響を及ぼしていること、そして気候変動格差の拡大といった社会問題が危機的状況にあることが挙げられます。

もともと今の経済システムは、第二次世界大戦後に構築されたものが多いのですが、その不完全さが21世紀の社会で多く指摘されていました。

しかし、人間は慣習に縛られる生き物。なかなか既存の概念やシステムを切り替えることが難しいものです。

そんな中、迎えたコロナ感染によって、もはや誤魔化せない状況になってきました。その場しのぎの措置ではなく、全く新しい経済社会システムを構築しなければならないという考えを表明したのがグレートリセットです。

20世紀型経済は大量生産・大量消費が繰り返され、富を求めた世界激しい競争を生み出し、その軋轢として格差や自然破壊などが拡大してきました。

一方、新しい経済は皆が協調し、人々が安心して心豊かに生きられる「幸福」を基盤にした経済です。

有形経済から「無形経済」へ。

一番分かりやすい例が「SDGs」「ESG」です。よく事例として引用しますが、ユニクロの柳井社長「持続可能な社会を事業化する」と発言したことが話題になりましたが、まさに新しい経済を印象づけるお言葉です。

新しい枠組み「ドーナッツ」経済

かつてコラムの中で、オックスフォード大学の経済学者ケイト・ラワースさんが提唱した持続可能な社会を築くための枠組み「ドーナッツ経済」についてご紹介しました。

アムステルダム市では、この考え方をベースに都市の繁栄を議論しています。

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内側の輪は水や食料、教育、平和・正義など私たちが幸せに暮らすために最低限必要なものを表しています。

外側の輪は、地球環境に悪影響を及ぼさないための人間が越えてはならない生態学的境界を表しています。

この二つの輪の間にあるのがスイートスポット(ドーナツの中身の部分)で、人間が必要とするものをこの惑星が受け入れられる範囲を示しているというわけです。

他の例で言えば、「ゼブラ企業」です。

新しいスタートアップ企業のあり方として言及されている言葉なのですが、白黒がストライプ状に入り混じるシマウマのように「持続可能な社会」と「会社の利益」を共存させることが全ての企業に求められているのです。

今後の成長分野

そうなると自ずとグリーンエネルギーエコツーリズム循環経済の構築など、地球を守るビジネスや、教育看護・介護など格差の是正人を守る分野にスポットが当たるでしょう。

つまり、社会(地球)貢献できる企業が輝き、生き残っていく。

今後は、生活を維持するのに必要なエッセンシャルワーカーの賃金アップなども果たすべき目標になるでしょう。

当社でも、マーケティングコンサルタント企業として、クライアント企業に対し新しい経済への移行をサポートすることはもちろん、現在、新しい経済の主軸になり得る企業や団体への働きかけをしていきたいと考えています。

当社の中での知見を高め、今までのノウハウを活かして社会に貢献していく。それが私の一つの目標です。

47都道府県幸福度ランキング1位は?

最後に日本の事例を1つ紹介したいと思います。

2012年から、2014、2016、2018年と2年ごとに(一財)日本総合研究所が発表している「都道府県幸福度ランキング」ですが、昨年1位に輝いたのは「福井県」

しかも、4回連続の1位です。

今、新しい指標は「GDP」から「GDW」に移行しています。

〈福井新聞 / 2021年3月20日〉

GDWの「W」は「Well-being(ウェルビーング)」のW。「国内総充実」とも呼ばれています。かつて、ブータンGNH(Gross National Happiness:国民総幸福量)が注目されましたが、近しいものがあります。

GDWは自民党の下村博文政調会長が2月の衆院予算委員会で、ウェルビーイング重視の政策の必要性を訴える中で言及し、菅義偉首相に採用を提言したことでも有名になりました。

福井県立大地域経済研究所の高野翔准教授は、世界幸福度調査など従来の測定方法に対し「西洋の価値観に基づく測定に止まらず、日本を含めたその他多くの地域で真に適用できる方法が必要」と言及。

時代は人間の本質的な幸福を探求し、社会や経済に昇華させようとしています。その速度はコロナによって急速に変化し、加速しています。

ここを見逃すと、一気に時流に取り残されて、企業としての価値を失う可能性があります。

新しい世界を自分自身の中でも夢想し、社会から必要とされる会社、個人を築いていくことが求められますね。

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