見出し画像

【花冷え全員集合】#毎週ショートショートnote

北国の春はのんびりと訪れる。
関東で花見が終わった頃、梅・桃・桜の三春どころか、木蓮や蓮行、雪柳と木々が一斉に花をつける。
贅沢な花見だ。
「だがこの花冷えである」
場所取りをしていた本郷は震えていた。
酒も入り、みんなとドンチャンしているとこのくらいの気温の低さは気にならない。だが、ひとりブルーシートの上で待つ身には寒さが身に染みる。
見上げる桜は美しいが、体を温めてはくれない。
皆が来る前からひとり呑むわけにもいかない。
せめてポットに熱いコーヒーでも入れてくればよかっただろうか?
「そもそも場所取りなんて時代錯誤か?」本郷は思った。
言い出したのは自分である。
支社長名目とはいえ地方支社に飛ばされたのだ。
本社では堪能できない花見を楽しむのもいいだろうと思った。
支社(といっても全員で20人もいない)
一番上の自分が場所取りをするのだ。文句はないだろう。
が、しかしだ。
「あ、支社長からだ」
メッセージにはこうあった。
「花冷え全員集合」