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【モカ入り卒業式】#毎週ショートショートnote

中学の卒業アルバムは担任のお手製だった。
「何?これ?」
彼女がページを捲って目を丸くする。
そりゃそうだ。
学生服の僕の肩に烏が止まっているのだから。
「在校生のモカだよ」

中学を卒業して5年。モカはまだ仲間と一緒に学校に通っているという。
僕が中3の時、僕の学年がひとりで、中2、中1、小6がゼロだったけど、小5から3人、4人と少しずつ人数が増えていた。今年小学校の新入生は5人と聞く。
一度避難した人たちが少しずつ戻ってきているのだ。
烏のモカは僕の2つ先輩に当たるがずっと留年中だ。
中学生の教室にいつもやってくる。
授業中は割と大人しくしているが、音楽の時間だけは僕と一緒に歌ってくれた。
卒業式や入学式はいつも中が覗ける枝に止まって様子を見ているのだが、僕ひとりだけの卒業式は同じ中学生の在校生もいなくて寂しく思ってくれたのか中に入ってきた。
モカ入りの卒業式は僕の時だけだったので、先輩や後輩たちはとても羨ましがった。

「…という話」