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【ラムネ炭酸寝顔】#毎週ショートショートnote

『夏ラムネ 炭酸寝顔 淡く消ゆ』

「ラムネも炭酸も同じじゃん」
「炭酸は酒。ビール、酎ハイ、ハイボール」
そう答えると君は「ふーん」とストローでアイスティーを吸い上げた。
「じゃあ、寝顔は?」
「君の寝顔だ」
「バッカじゃないのぉ?」
顔を真っ赤にして、ストローでグラスの中の氷を突く。
可愛いなぁ…なんて言ってやらない。
そんなストレートな言葉は君にも僕にも似合わない。
さんざんな夏に出会ったはずの君と僕は、こうして無事にまたふたりで夏を迎えようとしている。
こんな奇跡を信じていいかい?…あぁ、そんな芝居がかった言い方も僕らには似合わない。
「淡く消ゆってちょっと嫌だな」
「え?」
「おしまいっぽくって、なんか嫌だ」
君はテーブルの上の水滴を見て言う。
僕の方は見ようともしない。
あぁ。そうか。永遠を信じていない君でもそう思ってくれるんだ。
僕は嬉しくなった。
「そうだね。君の寝顔はいつでも隣で見ていたい」
思った通り君は真っ赤になって僕を睨んだ。