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【命乞いする蜘蛛】蜘蛛編#毎週ショートショートnote

↑とほとんど一緒の虫編です。


「助けてくれ」
「俺たちを食い物にしてきたおまえが言うのか?」
目の前の烏揚羽が言う。
「哀れなものだな。命乞いする蜘蛛は。自分の作った巣に捕まった気分はどうだ?居心地はいいか?」
背後で言うのは鬼蜻蜓。
少し前に強烈な体当たりをしてきた。食われるのかと身を縮めたところを地面に落とされた。
そして、気がついたら自分の巣に張り付けられている。
「いいザマだ」
逆光の烏揚羽の表情は見えない。
こんな目に遭う覚えはない。とは言わない。だが、弱肉強食、自然界の食物連鎖の中で、自分たちが行っているのは当然の理だ。
背後にいる蜻蜓だって、虫を食っているじゃないか。
「その巣に捕まり、次第に体力が奪われて絶望していく仲間を自分たちは救ってやることもできなかった」
影でしかない烏揚羽が言う。もっともその顔が見えたところで表情はわからないだろう。
視界がぼやけ意識が朦朧としてきた。
自分はここで死ぬのか?
「安心しろ。俺が食ってやる」
背後の蜻蜓の声がした。