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【命乞いする蜘蛛】#毎週ショートショートnote

「助けてくれ」
「さんざん人を食い物にしてきた口でそう言うのか?」
口元に笑みを浮かべた男が銃の安全装置を外す。
「哀れだな。命乞いする蜘蛛のようだ。自分の作った巣に捕まった気分はどうだ?居心地はいいか?」
もうひとり。オレを縛り上げた男はどこだ?姿はおろか気配すら感じない。
「どうして口を塞いでいないか?わかるか?」
あの男だ。冷たい目の男。
「命乞いする相手を殺してきたおまえにも同じ思いを味わってほしくてね」
こんな目に遭う覚えはない。とは言わない。
だが、何故?こうなった?組織はオレを見捨てたのか?
それとも、誰もこの状況を知らずにいるのか?
「ドラマのセリフを借りるとするなら、『命によっておまえを排除する』ってとこかな?」
にこりと笑った男が小首を傾げて銃を向ける。
命によって?誰かが俺を殺すように差し向けたということか?
それは誰だ?敵か?味方か?
困惑と絶望が同時に打ち寄せる。
「誰か来た」
その声に顔を上げた瞬間、銃声が響いた。