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モーテル

ゆっくり休んで
どうすんだい?

そんな
急き立てられた
言葉に
煙草の煙が
立ち上る間もなく
霧散して
乾いた青の空に消えた

ゆっくりさせては
くれない
有象無象の
見えないナイフが
奥の方に
無数に突き刺さる
忙しさの
副産物のように……

錆びれたレールから
飛び降りて
砂利で傷ついた
足を引きずりながら
遠くへ
走り去った
列車を見ていた

辿り着いたモーテルの
軒先で
中年の女が
そんな風に言っても
俺は俺のやり方で
この先も
生きていくしかないんだから
ほっといてくれよ

そう言いたかったが
女は忙しそうに
次の街へ
車を走らせていった

ゆっくり
出来ないのは
みんな同じ
レールから出られた分
世界は彩りを
儚いモーテルで
取り戻しては
また
次の客がやって来て
俺は追い出される

ゆっくりしたけりゃ
成功することだな

カウンターを出る間際
マスターが後ろから
そう声をかけて
ドアを閉めた

太陽が真上に昇る
乾いた風は
相変わらずで
砂漠は続いているが
俺には
道は見えている

飲みかけのバーボンを
空に投げて
俺はモーテルを後にした

戻ってこないで
済むように
今度こそ
成功してやるよ

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