思い返すと、だいたい夏。 #旅する日本語
追懐。
なんだか女々しい言葉だ。
それでいて、情緒的で美しい。
「最後の花火に、今年もなったね。」
大好きな唄の歌詞と同じ言葉にざわついてしまうのだ。
夏の終わりはなんとなく物憂げ。
その瞬間をそのまま引き伸ばしたくなってしまう。
花火の閃光の残像。
行ってもいない海の色。
涼し気だけど効果のない風鈴。
「来年も、またこよう。」と
未来を語る過去の言葉はその瞬間に閉じ込められたまま。
あれから何度目の夏になるだろう。
いつかの夏。
隣のかたわれを目を閉じて探す旅。
過ぎた時間は都合よくトリムされ、美しく保存されているのです。
意気地のない我が心。
新たな始まりを拒絶して。
そろそろやめにしないかい?
目を見開いて現実を歩くのだ。
思い返すと、だいたい夏。
そうやって、今年の夏も過ぎていく。
2019年9月7日
写真とテキスト:たつみかずき
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