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胡蝶の夢 -The Dream of Butterfly-

新作短編『胡蝶の夢 -The Dream of Butterfly-』をYouTubeにて公開しました。


本作はタイトルからも分かる通り、荘子の説話「胡蝶の夢」からインスピレーションを受けています。
"現実"と"夢"の区別がつかない状況を見事に表現した荘子の「胡蝶の夢」からは、これまでとても大きな影響を受けてきました。

最初に「胡蝶の夢」という作品に触れたのは、約10年ほど前。
特撮ドラマ『ウルトラマンマックス』のあるエピソードで「胡蝶の夢」というものがあり、それを観たことがきっかけでした。
実相寺昭雄監督の手により、シリーズ屈指の異彩を放っている同エピソードは、脚本、演出、カメラワーク、俳優の演技、どれをとっても超一級品。10代の未熟なガキだった私にいささかの衝撃を与えました。

物語はTVドラマ『ウルトラマンマックス』の脚本家である蓮沼という男が、物語の主人公であるトウマカイトになる夢を観たことから始まります。
その夢の中で怪獣を作る不気味な女と出会い、"デウスエクスマキナ"という言葉をキーワードに形を持たない怪獣マデウスと対峙することになっていく…。
本来の「胡蝶の夢」が持つどちらが'"夢"で、どちらが"現実"かというテーマのもと、『ウルトラマンマックス』が創作として扱われる本編とは異なる世界線で物語が展開され、さらにその物語を生み出す脚本家を主人公に据えるという大胆なアプローチ、Deus Ex Machina=機械仕掛けの神という演劇用語をキーワードとするセンスなど、それらが見事に組み合わさったエピソードと言えるでしょう。

同エピソードを観て以来、私の頭の中には常に「胡蝶の夢」が存在し、いつかは「胡蝶の夢」をテーマにした作品を作りたいという思いがあったのです。
今回ようやく念願叶い、短編作品として世に送り出す運びとなりましたが、ロケーションに非常に恵まれたのは言うまでもありません。
たまたま通りかかった普段は通らない道で、緑に包まれたトンネルのような場所を発見。
宮崎駿作品を彷彿させるなんだか異世界へと続いていそうなその場所で、様々なアイデアを想い付き、すぐさま脚本執筆に取り掛かりました。
もともと荘子の「胡蝶の夢」を下敷きにしようとは考えていたため、"夢"と"現実"の境界線を描くことを念頭に肉付けしていった形です。

主人公は「胡蝶の夢」という本を読んでおり、その最中にウトウトと寝落ちしてしまいます。
そうして観た夢の中では、自由に外を歩きまわり、思い描いたどんなところにも行くことができ、何事にも縛られることのない解放感を感じている…そういった感情を表現しようと、景観を主に切り取るような形にし、主人公が夢の中で何かを感じ取るポジティブな着地点を目指しました。
本音を言うと、外を闊歩する主人公の姿も映し出したかったのですが、なかなか天候やスケジュール上の調整が難しく断念。
しかしながら、風景に踏切の音や蝉の鳴き声を掛け合わせたことが功を奏して、より恍惚感を出すことに成功したように思います。

私なりの解釈で描いた『胡蝶の夢 -The Dream of Butterfly-』を楽しんでいただけたら幸いです。

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