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過剰なカロリー制限は、腸内の悪玉菌の増加と栄養吸収の低下を引き起こす?

皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。
初回の論文紹介は2021年6月にNatureに掲載された、ドイツとアメリカのグループによる腸内細菌叢と健康にまつわる研究を紹介したいと思います。

科学論文の基本的な形式は、なぜその研究が重要なのか、実験結果、結果から導かれる結論。という構成になっています。
この紹介では"概要"で論文の内容を簡単にまとめた後、"今回のポイント"として、一般人の僕の母が聞いてきそうなことについてコメントしたいと思います。

概要

食事は腸内細菌叢の形成に重要な要素ですが、食事の変化によって起きる腸内細菌叢の変化が人の健康にどんな影響を及ぼすのかはこれまでよくわかっていませんでした。この研究では
1:1日800kcal以下の極端なカロリー制限をすると、腸内細菌叢のバランスが崩れ悪玉菌が増える
2:その細菌叢をマウスに移植すると、腸管での栄養吸収力が低下し、胆汁酸の酸性が減り、悪玉菌(特にクロストリジウムディフィシル)が増えやすくなるという影響が出る
という事を発見しました。このことから、筆者らは腸内細菌叢の変化が健康に及ぼす影響とそのメカニズムの一つを解明した訳です。

さて、皆さんこう言われてどう思いますか?
聞いたことある事色々ある気がするんだけど、どうもはっきりしないことが多くて、なかなか自分の日常に関係すると思えないですよね。

今回のポイント

という訳で、今回のポイントはこれ!(腸内細菌の研究を見るときに知っていると便利!)

腸内細菌叢(さいきんそう)とは?

腸内には細菌をはじめ、ウイルスや真菌、場合によっては原虫や寄生虫が住んでいます。これらをまとめて腸内フローラや細菌叢と呼びます。人の大腸には1000種類以上の細菌が住んでいると言われており、今もまだその全容は解明されておりません。

腸内細菌叢解析

"えー!1000種類も!”って思ってくれた方、ありがとうございます。
バクテリアは1800年頃には発見されていましたが、それから訳200年間、顕微鏡で観察するなど地道な方法での研究でしたので、1000種類を見分けるのはちょっと無理。しかも沢山のサンプルは解析するのも大変!

ところが、2005年以後に次世代シークエンサー(NGS)という遺伝子配列の解析機器が登場して以来、バクテリアの遺伝子(DNA)をこれまでの何百倍もの速さで解析することができるようになり、腸内に"どんなバクテリアが"、"どのくらいの割合で"存在するのか?ということが

こんな感じで一気にわかるようになりました! (これは数十人分の腸内細菌を解析したもので、それぞれの人に色分けされた種類の菌を、どのくらいの割合で存在するのかを一目でわかるようにした図です。)
さらに現在では、DNA情報から、菌がもつ機能なども推測できたり、一般の方向けの腸内細菌叢解析サービスもでできており、腸内細菌叢の解析がまさに身近に迫っているところです。

という訳で、今回は
1、腸内細菌叢って?
2、細菌の遺伝子情報解析でどんなことがわかるの?
3、極端なカロリー制限ダイエットは、腸内細菌叢の悪化を引き起こし、腸の機能低下を起こす可能性があるよ

ということを紹介しました。皆さんいかがでしたでしょうか?
ご質問、ご感想などコメントいただけると嬉しいです。
それでは!

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