Tatsuya_CA

医師、生命科学研究者。主に免疫学と細菌学を専門としています。 細菌の多様性とヒトの健康…

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医師、生命科学研究者。主に免疫学と細菌学を専門としています。 細菌の多様性とヒトの健康がどのように影響しあっているのかを解明し、アレルギー疾患などの治療法を発見するために研究しています。

最近の記事

ニキビを防ぐ新たな可能性

皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 ここのところ細菌叢と脳の機能の関連についての論文が続いていましたが、今回はもう少し身近なニキビの原因、アクネ菌についての新しい発見が報告されていたのでご紹介します。 この論文は2022年のScience translational medicineに掲載された"Antimicrobial production by perifollicular dermal preadipocytes is essential to

    • 肺細菌叢が中枢神経の病気を治すかも

      皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 前回は腸内細菌が脳の扁桃体の機能をコントロールしているという論文を紹介しましたが、(https://note.com/tatsuya_ca/n/n02d9b8fec33c)丁度このタイミングで世界で初めての、肺の細菌叢が脳の免疫機能をコントロールしているという論文が発表されていたので、今回はそれを紹介します。 この論文は2022年のNatureに掲載された"The lung microbiome regulates

      • 扁桃体がモチベーションをコントロールするメカニズム

        皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 今回は脳科学の論文で、”自発的な行動とは、脳からどのような信号によってコントロールされているのか?”ということについての論文です。 今回は2022年のScienceに掲載された"A neuronal mechanism for motivational control of behavior"という、スイスの研究グループからの論文を紹介します。 概要目標達成の為に行動するときには動機が重要ですが、その強さは特定の目標

        • 腸内細菌が産生する物質が感情をコントロールする?

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 今回は腸内で産生された物質がどうやって脳の活動と行動に影響するのか、新たな論文が出ていたので、ご紹介します。 Nature 2022年2月に掲載された論文で"A gut-derived metabolite alters brain activity and anxiety behaviour in mice"というカリフォルニア工科大学の研究グループからの報告です。 概要 腸内細菌叢がマウスの行動や脳の発達に影響

        ニキビを防ぐ新たな可能性

          腸内細菌叢を移植すると

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 前回細菌叢についてはここまでにしようと思いましたが、大事なことを忘れていたのでもう一回延長です。 これまでいくつか細菌叢が変化する要因について解説しましたが、今回は細菌叢移植についてです。移植というと、すごい治療のように聞こえますが、今回はその方法や治療成績についての報告がありましたので、ご紹介します。 今回は2020年のGastroentelorogyに掲載された"Fecal Microbiota Transpla

          腸内細菌叢を移植すると

          気道の細菌叢と喘息はどんな関係?

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 腸内、皮膚に引き続き、今回は気道の細菌叢の働きをご紹介します。 前回は皮膚のアトピーと皮膚の細菌叢の変化の相互関係についての論文でしたが、今回は喘息と気道の細菌叢の変化という同じ慢性アレルギー疾患と細菌叢の相互関係についての論文です。 今回の論文は2019年のNature communicationsに掲載された"The upper-airway microbiota and loss of asthma contro

          気道の細菌叢と喘息はどんな関係?

          皮膚細菌叢とアトピー

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 これまでは腸の中の細菌叢について紹介してきました。ところが実は腸管だけでなくヒトの皮膚にも多くの常在菌がいて、皮膚細菌叢を作っています。さらに皮膚細菌叢もアトピーなどの皮膚の病気と関連があるという論文を紹介したいと思います。 今回の論文は少し前のものになりますが、2019年のNature communicationsに掲載された"Microbe-host interplay in atopic dermatitis a

          皮膚細菌叢とアトピー

          腸内細菌叢とメンタルヘルスは本当に関係があるのか

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 ここ2回に渡りちょっとデータ量多めの論文で実験結果はサラッと紹介していたので、今回は結果をもう少し詳しく紹介したいと思います。 今回は2019年のNature microbiologyに掲載された"The neuroactive potential of the human gut microbiota in quality of life and depression"というベルギーの研究グループからの研究を紹介しま

          腸内細菌叢とメンタルヘルスは本当に関係があるのか

          食物繊維が体重減少を促すメカニズムを科学的に検証する

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 前回は最新技術を使った腸内細菌叢の解析法について紹介しましたが、ちょっとマニアックな内容だったので、今回はそういった研究所での発見が、どのように私たちの生活に役立つようになるのかを見ていきたいと思います。 今日の論文は、2021年のNature に掲載された" Evaluating microbiome-directed fibre snacks in gnotobiotic mice and humans"という、

          食物繊維が体重減少を促すメカニズムを科学的に検証する

          細菌叢解析の最前線

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 前回はディスバイオーシス(細菌叢のバランスが崩れる)ってどういうこと?について書きましたが、今回はもう少し踏み込んで、腸内細菌の解析の最前線ではどんなことが解析され、そこからどんな事がわかるようになってきているのかを紹介したいと思います。 今日の論文は2019年のNature microbiologyに掲載された"Gut microbiome structure and metabolic activity in in

          細菌叢解析の最前線

          善玉菌? 悪玉菌? 細菌叢?

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 前回は腸内細菌叢って何かということについて書きましたが、腸内細菌の事を書き始めると、思ったより言いたいことが沢山ある事に気づいたので、腸内細菌シリーズとしてもう少し深掘りしたいと思います。 今回は2021年12月にNatureに掲載された、イスラエルのグループによる腸内細菌叢と健康にまつわる研究を通して、善玉菌とか悪玉菌とかの先にあるバクテリアの集合体(細菌叢)という捉え方を紹介したいと思います。 概要 タバコによる

          善玉菌? 悪玉菌? 細菌叢?

          過剰なカロリー制限は、腸内の悪玉菌の増加と栄養吸収の低下を引き起こす?

          皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。 初回の論文紹介は2021年6月にNatureに掲載された、ドイツとアメリカのグループによる腸内細菌叢と健康にまつわる研究を紹介したいと思います。 科学論文の基本的な形式は、なぜその研究が重要なのか、実験結果、結果から導かれる結論。という構成になっています。 この紹介では"概要"で論文の内容を簡単にまとめた後、"今回のポイント"として、一般人の僕の母が聞いてきそうなことについてコメントしたいと思います。 概要 食事は

          過剰なカロリー制限は、腸内の悪玉菌の増加と栄養吸収の低下を引き起こす?

          生命科学を日常に

          みなさま初めまして 生命科学研究者のTatsuya です。 なぜ note を始めようと思ったのか 臨床試験、薬剤開発、再生医療といった新規治療法から、遺伝子解析、マイクロバイオーム(細菌叢)解析という最先端の研究、さらにはヘルスケア、スキンケアなど、ごくごく身近な健康にまつわる話など、みなさんがどこかで聞いたことがあるけど、全部理解するのは難しいし、日常にどうやって生かしていったらいいんだろうって事って沢山あると思います。 生命科学の研究には、驚くべき発見や夢のような

          生命科学を日常に